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第十章
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耳元で何かを囁かれた迅鵺は、思わず咄嗟に耳を抑えて顔を真っ赤にさせた。
そんな様子の迅鵺を、ニヤニヤと愉しそうに表情を緩める響弥。
「そろそろ、出るか。」
少しテンパっている迅鵺を横目に、支払い伝票を手に持つと、さっさとレジへと向かってしまう。
“お前、トイレでやらしいコトしてただろ?”
迅鵺は暫くボケーっとしていたが、既にレジを済ませている響弥に気付き、あたふたしながらもスマホと財布を確認してから響弥の後を着いていく。
「────すっ、すいませんっ、いくらっすか?」
ファミリーレストランから出た迅鵺は、財布を手にしながら響弥に自分の分を払おうとするが、響弥に断られてしまう。
「そんな事よりよ、お前その真っ赤っかなエロ可愛い顔、晒してていいのか?」
こういう時の響弥は、かなり意地悪な顔をする。片方の口角をニヤリと上げて、人の反応を弄ぶ目付き。
「かっ、からかわないで下さいよっ!」
冷める気配のない迅鵺の赤くなった顔を見ながら、喉をクックッと鳴らして笑っている響弥。
ふと、何かに気付いたような目線を送る響弥だが、なんでもなかったかのように直ぐに目線を迅鵺に戻した。
「なあ迅鵺、お詫びなら今ここで貰うわ。」
「────はっ・・?」
迅鵺をからかっていたかと思うと、急に真剣な目付きになった響弥に迅鵺は切り替われないようで、気付くと響弥に抱き寄せらていた。
「ちょっ──・・響弥さんっ?」
次の瞬間、迅鵺の右頬に響弥の唇の感触がして、耳元で何か囁くと、迅鵺の肩をポンと叩き“じゃあな”と言って帰っていった。
“ちゃんと大事にしてもらえよ”
その場に取り残された迅鵺は、響弥の言葉でからかわれた事なんてどうでも良くなったように、笑顔を綻ばせると感謝の気持ちで一杯になっていた。
この日はこのままマンションに帰ると、やっと悠叶にLINEを送る事が出来た。
“明日、店の大掃除が終わった後アパートに行きます。”
短い文だけれど、迅鵺は少し緊張している様子。
ちゃんと気持ちを伝えて、悠叶と恋人として向き合うと決めたからだ。
甘い言葉は、腐る程に囁いてきた。
どんなに極上な価値のある囁きも、迅鵺にとっては、それがセオリー。
緊張するだなんて、そんな風になった事なんてなかった。
迅鵺は、そんな自分の気持ちに、なんだか可笑しくなってきて、ハハッと短い笑い声が出る。
「────本当、なんなんすか、あんた・・・」
悠叶の“好きです”という言葉が、悠叶の姿と共に脳裏に浮かんだ迅鵺は、誰も居ない自分のマンションのリビングで、心臓の鼓動を少し速まらせて頬を赤らめた。
そんな自分の姿が、バルコニーの窓に映っているのに気付いて慌ててカーテンを締める。
「────俺、キモいだろっ・・・」
この日の迅鵺は、ドキドキしてなかなか眠れない夜を過ごす事となった。
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