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帰る方法 2
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そんな重苦しくなるような空気の中、冬季がポツリと呟いた。
「……荒玖達は俺がなんでそのことについて話さずに、あれこれこの世界について説明してきたか、わかっていて聞いてこないのだと思ってた」
「……わかって、て……そんなわけないじゃないか。俺と渚は今もこの世界から元の世界へ帰る気でいる」
冬季の言葉に少し語気が荒くなるのを自分で自覚しながら、なんとかいつもの無表情でそう言い返す。
「それに冬季は最初に戻ることを拒否したって言ってたよな? それって戻れないことはないってことだろ?」
「……そうだな」
「だったら、戻る方法を教えてくれ」
俺の言葉に、冬季は顎に手を当て暫く考え込んでから椅子の背もたれに寄りかかった。
そんな冬季をレオはただ不安げに見つめていた。
「戻れなくはない。でも、そんな簡単な話じゃないってことだけはわかってほしい」
「……どういう意味だよ」
何が言いたいのか全く理解できず困惑する俺に、隣にいた渚がくいくいと袖を引っ張ってくる。
「荒玖、冬季が困ってる」
「でも……渚だって帰りたいって思うだろ?」
「……それは……え、と……」
なんだ?
なんでそんな困った顔するんだよ?
「いや、渚、いい。ちゃんと説明はする。その前にこの通帳を受け取ってくれないか? 後、リルから先に話を聞いてからでも遅くはないはずだ。どのみちすぐには帰れないし、荒玖が望むような円満な帰り方は、ない」
そう告げる冬季の言葉には威圧感があった。
そのなんとも言えない圧についたじろいでしまう。
仕方なく冬季から渡された通帳を受け取り、ページを開いて中を確認した。
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