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君への思い 3
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その優しさが嬉しくて、声をかけられた時に人目も気にせずに泣き出してしまった俺に、渚はただ黙ってそばにいてくれて、持っていた傘を渡してくれた。
たったそれだけのことで俺は、もう少し頑張って生きてみようと思えるようになった。
その出来事から一年後。
空海学園の音楽室で一人ヴァイオリンを奏でる渚と再会した。
でも、俺を救ってくれたその人はあの時のことを覚えてはいなかった。
渚にとってあの出来事は日常の一ページ程度のことだったのだろう。
それでも――。
それでも、良かった。
俺を救ってくれたその人のそばにいられるのなら、忘れていても一から関係を作り直していけばいいのだから。
そういう思いで渚にヴァイオリンの弾き方を教えてくれるように頼み込んで、二人の時間を重ねていくうちに今の関係になっていた。
あの雨の日から俺はきっと、少しずつ渚のことを好きになっていって。
きっかけはとてつもなく恥ずかしい思い出なのに、あの出来事がなければきっと俺たちは関わることもなかったのだろう。
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