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明るい異世界人
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冬季から紹介された寮につくと、ポケットから鍵を取り出す。
それを鍵穴に差し込もうした時に、元気のいい声に呼び止められた。
「荒玖、渚! 今帰ったのか?」
「あ、美晴(みはる)! こんばんは〜」
渚が声の主、東雲(しののめ)美晴に手を振った。
美晴はこの異世界人用の寮に唯一、一人だけ住んでいる十七歳の少年で、三年前くらいにフィーネに飛ばされてきたらしい。
金色の髪に深い緑の瞳が不良っぽく見えるが、どちらかというと元気すぎて煩い脳筋タイプの男だった。
俺と渚がここに来た当初、隣人ということで挨拶に行った際に知り合いになり、それから仲良くしてもらっている異世界人の一人だ。
俺は苦手なタイプだが、渚は馬が合うようで外で会うといつも楽しそうに二人で談笑に花を咲かせている。
正直、渚と仲良くしないでほしいのだが、そんなことを言えるわけもなくモヤモヤする気持ちを毎回抱える相手でもあった。
「なんだ、買い出し行ってたのか。相変わらず手料理してんだなぁ。俺は料理出来ないし、LP使うのも勿体ないからいつも外食だよ」
「料理作るの好きだからな」
「渚の作る手料理、美味いもんなぁ。俺もまた食べたいし作ってくれよ」
「あは、機会があったらってことで」
楽しそうに話す二人を無言のまま見つめる。
二人だけの世界に入りやがって……渚といちゃいちゃしていいのは俺だけなのに。
「俺も頑張って覚えて料理作ろうかな? でも、LP使うのも嫌だしなぁ」
「オール電化のキッチンでもあるとこに引っ越せばいいじゃないか」
美晴のその言い分に、俺は極力感情が出ないように冷たく言葉を返してやる。
そう。一応この世界にも電気タイプのキッチンは存在していたりするのだ。
しかし、そういうものが搭載されている場所は基本的に家賃が割高になっていたり、キッチン自体が高額だったりする。
「お前、わかってて言ってんな……」
俺たちのような異世界人がそういう割高のところに引っ越すのはデメリットしかない。
そんなものに頼るくらいなら、この寮にいて外食した方が断然安く済む。
(むしろ、いなくなってほしいんだけどな、なんて言ったら怒られそうだ)
同じ境遇とはいえ、渚と馬が合うせいであまり好きになれない美晴の存在にいつもヤキモキしていた。
「美晴はこれから外食か?」
話の雲行きが怪しくなったのに気づいたのか、渚が俺と美晴の間に割り込んできて話を逸らそうとする。
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