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揺れる気持ち
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小さく息を吐き出してから軽く頬を叩くと、さっさと頭と体を洗って湯船に浸かる。
ただでさえ色々な意味で熱いのに、温かいお湯のせいで更に熱が増して長くは浸かっていられなかった。
風呂から上がりバスタオルで体を拭いてから居間へ入った途端、食欲を誘ういい匂いが鼻に届く。
「あ、荒玖。おかえり。丁度作り終わったところなんだ。そういえばシーツ替えてくれたんだな。机拭いてコップ用意してくれてたのも助かった。ありがとう」
ちょうど手を洗っていたのか、渚は蛇口を止め俺の傍までとてとてと近寄ってきて、嬉しそうに微笑むとお礼を伝えてくる。
その笑顔に心臓がドキリと跳ね、慌てて顔を逸らした。
「それは、俺がやりたかっただけで……」
「それでも荒玖のそういう優しさが凄く嬉しい」
こんなに喜んでくれるならやっておいて良かったかもしれない。
助けになればと思ったが、渚からの笑顔だけでむしろお釣りが出るくらいに幸せだった。
幸せすぎて顔がにやけてしまわないよう、必死に平静を装いながらなんとか無表情を繕う。
しかし笑顔だった渚の顔が不思議そうな表情に変わり、すっと手を伸ばして俺の額に触れてきた。
「??!?!」
「荒玖、顔赤いけど大丈夫か? しんどくない?」
無表情は出来ていたみたいだが、頬の赤みまでは消せていなかったらしい。
心配そうな顔をする渚の手から逃げるように一歩下がって距離を空けると、なるべくいつも通りに言い訳を並べた。
「大丈夫。風呂上がりだから赤くなってるだけだ」
「そっか。ならいいけど。あんまり熱いお湯に入るとのぼせるから、気をつけろよ?」
とくにそれ以上は疑われることもなく、渚は台所に戻っていってお皿に料理を盛り始めた。
そんな渚の顔を盗み見ながらほっと胸を撫で下ろした。
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