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俺のこと、荒玖のこと。(渚Side)
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空海島での俺の家庭は、それなりに複雑な立場にいた。
“呪術士”と呼ばれる魔法を管理している種族で、殆どの呪術士は長命の恩恵を受けており、基本的には長く生きられる体だった。
そんな呪術士を危険な存在として排除しようとしている呪術士狩りと呼ばれる組織があり、俺の両親はその組織から身を隠すように人間に紛れて生活をしていた。
呪術士というしがらみのせいで平穏に生きていきたい二人は日々苦労を強いられていたが、それでも有名なヴァイオリニストになれるくらいには普通の生活が出来ていた。
そんなある日。
どこから情報が漏れたのか、居場所を特定されてしまって、両親は呪術士狩りの手にかかり亡き人たちになった。
たまたま出かけていた俺は一人生き残り、血溜まりの中で息絶えた二人を見つけて……。
その凄惨な光景を、今でも鮮明に覚えている。
そんな二人を見つけて、放心していた俺を支えてくれたのが荒玖だった。
あの頃を境に俺はきっと荒玖に依存している。
荒玖になら甘えることが出来た。
どんな俺も受け入れてくれて、どんなにワガママを言っても、呆れながらも傍にいてくれた。
それを嬉しくも思っていたけれど、同時に荒玖にとって俺の存在は重荷になっているという自覚もあった。
だけど――。
自覚はあっても、離れることが出来なかった。
離れられなくなったのは、俺が荒玖を少しずつ意識し始めたからだ。
傍にいるだけで安心して、気持ちが落ち着いた。
ずっと、一緒にいたくて。
俺に向けてくれる優しさが嬉しくて。
たとえ、その優しさが“親友”だからだとしても。
ただ、荒玖の隣でその温もりに触れていたかった。
この気持ちの名前を、この時の俺はまだ知らない。
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