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俺のこと、荒玖のこと。(渚Side)2
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俺と荒玖は買い出しを済ませて、寮への道を二人で無言で歩いていた。
肩が触れるか触れないかの距離を保ちながら、隣を無表情で歩いている親友を時折チラリと盗み見てから、なんとなく恥ずかしくなって視線を逸らす。
(なんかこういう普通の日常が、凄く幸せ……)
空海島では呪術士というだけで命を狙われる危険があり、気の休まる時なんてあまりなかったので、この世界で荒玖とこうして何も気にせずに一緒にいられることはとても幸せだった。
それもあって冬季と元の世界へ帰るという話をしたときに、帰りたい、という荒玖の一言に、即答できなかったのだ。
帰れば、待っているのは心の休まらない日々なのではないか。
荒玖の隣にいる資格のない呪術士の俺なんじゃないか。
同性を好きになることを許されない世界なら、二人でこの世界にいた方が幸せなのではないか。
そんな考えが頭の中をずっと支配していた。
「渚、飯作るの嫌だったら代わるから、いつでも言ってくれていいぞ?」
俯いて考え事に浸っている俺を見て何を勘違いしたのか、荒玖がそんなことを言い出す。
「うん? 全然嫌じゃないぞ? 俺、料理するの好きだしな。それを美味しいって食べてくれる荒玖を見るのも、好き」
なるべく自然に見えるようにいつも通りの笑顔でそう返すと、俺の言葉に荒玖の頬が少し赤く染まる。
無表情なのにそんなところだけは隠せないその不器用さが、凄く可愛くて愛おしかった。
「そう、か……とにかく、作りたくないときは言ってくれたら俺が作るから。料理、出来ないわけじゃないし」
「ん、ありがとう」
そんな会話をしながら歩く道のりはなんだか少しだけ短く感じた。
もう少しだけ、こうして二人で話をしていたいな、なんて思ったのはいつ以来だろうか。
寮に到着して自分達の部屋の前まで来ると、タイミング良く隣の玄関扉が開き少年が一人顔を出す。
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