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運命なんか、信じない
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ユキに視線を移さずに、千歳を鋭い眼光で射抜く。
問われ、千歳はやや遅れて「ありがとうございます」と額をつけた。
「ユキ……ちゃん? も、僕を助けてくれてありがとう」
「……う、えっと。どういたちて……?」
恐らく、「どういたしまして」と言いたかったのだろう。
本人も何かが違うと思ったらしく、困ったように首を捻っている。
あまりの愛らしさに、思わず撫でたくなってしまい手を伸ばしかけた……が、後ろにいる男が目を光らせているため、諦めた。
リビングの壁際のデスクへ向かう男の背へ、千歳は何とか立ち上がり、深々と頭を下げた。
千歳に辛辣な理由は分からないが、命の恩人には変わりない。
「本当にありがとうございます。えっと、レグ……さん、とお呼びしても」
「礼ならユキにでも言えばいい。ユキがいつまでも泣き止まないから、仕方なく運んできてやっただけだ」
「……はい。あの、レグさんは」
舌をもつれさせながらたらたらと話す千歳に、男は不愉快そうに両目を眇めた。
視線が絡んだのは、それきりだ。
キーボードを鳴らしながら、「レグルシュだ」と素っ気なく言われた。
千歳は恩人の名を、心に刻む。
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