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運命なんか、信じない
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「レグルシュ、さんですね。僕は和泉 千歳といいます」
「ああ、言われなくても知っている」
──知っている?
疑問を浮かべる千歳の顔へ、レグルシュは保険証と運転免許証を突きつけた。
二つとも千歳の持ち物で、財布に入れていたものだ。それが今、レグルシュの手元にある。
「身元の分からないやつを、家に入れる訳にはいかないからな」
「それは……そうですね」
意識のないうちに荷物を漁ったのか、とレグルシュの行動を不審に思った。
千歳は一瞬顔をしかめたが、レグルシュはさも気にしていない様子で、それらを返してくれた。
あの夜、外で倒れたままだったら、荷物は全て盗られていたかもしれない。
「まだ何か?」
「ええ、と。お水をいただけないでしょうか。一日くらい、何も口にしてなくて」
食べ物のほうは、もう数日口にしていない。
しかし、嫌悪感をありありとぶつけてくるレグルシュには、言えなかった。
「勝手にすればいい」
「ありがとうございます」
ダイニングキッチンへ移動し、千歳は鳴き声を上げる胃に、水道水を何杯も流し込んだ。
何度か吐き気を覚えたが、千歳はその度に自分の舌を噛んで堪えた。
ふと、後ろに気配を感じて、千歳はゆっくりと振り返る。
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