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運命なんか、信じない
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キッチンの影のところで、ミルクティー色をしたくるくるの巻き毛が、時々現れたり消えたりしている。
「ユキちゃん」
千歳は近付いたりせず、その場で同じ目線へしゃがみ名前を呼んだ。
「いきなりお邪魔してごめんね。びっくりしたよね。レグルシュさんやユキちゃんに、迷惑をかけてごめんなさい」
巻き毛が左右にふるふると揺れる。
「ユキちゃんが最初に、僕に声をかけてくれたんだよね? 本当にありがとう。あともうちょっと元気になったら出ていくから……それまで、ここにいさせてね」
──そうだ、元気にならないと。
まずは体力を取り戻して新しい仕事を見つけて。拓海とのことは、それから考えよう。
話し合いに応じて欲しいという旨のメッセージには、いまだ返信がない。
時間をおけば、何か変わるかもしれない。
付き合っていた頃にも、些細な喧嘩でふてくされたことはあっても、時間が経てば千歳も拓海も普通の態度に戻っていた。
お互いに傷を積み重ねてきた日々を思い出すと、鼻の奥がつんと痛む。
千歳が移動すると、ユキも一定の距離を保ちながらついてくる。
奥を見やると、レグルシュはずっとデスクに張り付いている。
仕事の邪魔にならないように、千歳は彼の視界に入らないところへ座った。
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