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マヌルネコ
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千歳の名前も顔も覚えていないかもしれない。
たとえユキに忘れられたとしても、この思い出はずっと持っておこうと思った。
……────。
午後になっても、三人の間はぎすぎすしていた。
夕食時、ユキが喋らなければ、千歳もレグルシュも会話を交わすことはない。
──本当に、これでお別れでいいのかな。
天井を見上げながら、もうかれこれ二時間は寝つけないでいた。
明日発つために早く就寝しようと思うのに、二人の顔が脳裏に浮かび眠れない。
スマホを照らして確かめると、もう時刻は一時過ぎだった。
「やあぁだあぁーっ!」
ユキの泣き叫ぶ声が聞こえてきて、千歳ははっと目覚めた。
半端に沈んでいた意識が浮上する。
どうしたのだろうか。起き上がり、声がしたほうへ向かう。
「ママ迎えに来てくれるって言ったもん! レグの嘘つき!」
「さっき来られなくなったと言っただろう。我儘を言うな」
座り込んで泣くユキと、それを叱るレグルシュ。
ただの言い合いではないと、千歳は肌で感じた。
「ママに電話してっ! ママと話したい!」
うわあああん、と声を上げるユキの姿が痛々しい。
レグルシュが宥めても、それよりも大声で泣くものだから、ユキの耳には届いていない。
言い合ううちに、レグルシュの語気は強く荒々しいものに変わっていく。
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