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La・Ruche
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拓海は何度もアイスコーヒーを啜っては、口を湿らせている。
つらつらとあのときのことを語る千歳に、拓海は宥めすかすように言葉を重ねた。
「大袈裟? ああ、そうだよね。もし情報が漏れて、拓海の会社の名前に傷がつくようなことがあったら、困るよね」
「あ……いや。俺は警察に行けとは頼んでないのに……」
目の前の氷水を浴びせてやりたい衝動を抑え、千歳は申し出を断った。
「今は他の仕事をしているから行けない」
「休日なら空いてるだろう? 給料もちゃんと出すよ」
「シッターのアルバイトをしているし、急に頼まれることもあるかもしれないから無理だ」
「アルバイト? それで暮らしてるのか?」
小馬鹿にしたような言い方に、千歳はむっと言い返した。
「住み込みで給料もあなたからもらうよりずっといい。アドルカにいたときより、よくしてもらってる」
千歳は財布から札を抜き、アイスコーヒーのお代を叩きつけるように置いた。
拓海が追いかけてくるようなことはなかった。
……────。
本当に何から何まで失礼な人だ。
あの場にいることが耐えられなくなり、千歳は小走りでホテルを出た。
学生時代にあんな男の存在が輝いて見えた、自分の目がどうかしていた。
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