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La・Ruche
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「暗い顔をしてるだろう。今も」
「……え?」
ぽつりと呟かれた言葉に、千歳は顔を上げた。
レグルシュは蜂蜜がけのブルーチーズを口に運ぶ。
「何か気に病んでいることでもあるのか」
「……どうして、僕に気を遣ってくださるのですか?」
拓海とのことか、それとも、レグルシュのプライベートを盗み見たことか。
昼間の千歳の行動が、全てこの男に見透かされているように思えてならない。
疑問形で返答したことが、少しレグルシュの気に触ったのだろう。
二杯目のワインを注ぐと、レグルシュは腹立たしげに言い放った。
「どうしてか、だと。俺がお前の雇用主だからだ。それ以外に理由があるか? 俺は自分の時間が欲しい。シッターの仕事を辞められたりしたら困るからな」
「アルバイトもシッターのお仕事も、続けたいと思っています」
千歳は膝の上で、ぎゅっと拳をつくった。
レグルシュとの距離感が測れず、言い返すような口調になってしまう。
ユキが望んでいるように母親が帰ってきたら、シッターは必要なくなる。
少し前までは、ユキがママに会えればいい、と千歳は心からそう思っていた。
けれど今日、ユキの母親を遠くから見たときに、この暖かい居場所がなくなってしまうのだと……恐れてしまった。
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