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ユキ
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ユキは必死に男の膝に縋りついている。
「あなたは……」
「ユキくんのシッターをしている和泉 千歳といいます。……ユキくんのお父さんなのですね」
千歳の問いかけに、男は観念したように弱々しく頷く。
四人がけのテーブルへ移動し、千歳はユキを預かることになった経緯を話す。
ユキの父──周防 樹[スオウイツキ]と名乗った男は、溜め息とも相槌ともつかない、か細い声を返事とともに都度漏らしていた。
「……そうですか。レグルシュくんと千歳さんでユキの面倒を見てくださっている……。ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありません」
レグルシュはユキの父が会社の資金を持ち逃げしたと言っていたが、気弱そうなこの男に、そんな度胸が果たしてあるのだろうか。
今問い詰めれば、千歳やユキの前から逃げ出してしまうかもしれない。
「ユキ。寂しい思いをさせてごめんな」
「パパはいつ帰ってくるの?」
「もう少し……あともう少し待ってほしいんだ」
「もう少しってどのくらい?」
閉口する樹に、千歳は微かな怒りを覚えた。
「ユキくんに我慢だけさせて……あまりにもひどいと思います。レグルシュさんだって仕事があるのに、一方的に小さな子を預けて……。ユキくんより大事な用事とは、何なのですか?」
「それは……その。すみません。本当に」
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