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この日、叶弥は授業に集中することが出来なかった。
今朝の氷と炎に見せ付けられたことも、陽楽に色々と聞かれたこと、そして蒼の年齢さえちゃんと把握していない自分に関して、それら全てが大きな衝撃としてのし掛かっていたからだ。
叶弥にとって、1年も経つのに蒼に関しての知識がほとんどないことが何よりもショックだった。
「はあ……」
ようやく昼休みに入ると、叶弥は机に突っ伏した。
色々と考えすぎて頭が疲れてしまった。
「叶弥ぁー飯食おー」
「なぁに疲れた顔してんのさ」
「何か授業が理解出来なかったんだよ……」
そんなことを知ってか知らずか陽楽はのほほんと昼食片手に叶弥の席に来る。
その後ろにはよく陽楽と共に付き合いのある脩人が居た。
脩人がひょこっと陽楽の後ろから顔を出して笑うと、そのまま叶弥の頭に手を乗せた。
「ふぁっ!脩人、手が重いよー」
「元気なさそうな顔してるからさ」
「脩人手ぇ退けろ」
「……はいはい、おーこわ」
叶弥からは陽楽がどんな顔をしているのかは見えなかったが、脩人は確かに見た。
いつもヘラヘラと笑ってる陽楽の顔が、氷の様に冷たくなっていたのを。
陽楽がこんな顔をするのも、怒ったのさえ見たことのない脩人は驚いた。
だが、陽楽が叶弥のことが好きで仕方ないのを薄々気付いていたから、珍しいなと思う程度だった。
「2人は今日のお昼ごはん何?」
叶弥はそんな様子に気付かず、2人に問いかけた。
「俺はぁー貴子せんせーの作ってくれたおべんとー」
「貴子先生のご飯美味しいよねぇ懐かしいなぁ。脩人は?」
「いつものママンの弁当。叶弥は……相変わらずだわ」
叶弥の蓋を開いた弁当を見て、陽楽も脩人も顔をひきつらせて見ている。
氷が叶弥の食事量を踏まえて、栄養バランスと彩りを整えた気合いの入った弁当を作っているからだ。
毎回、学校に持っていく弁当にしては豪華な見た目なのである意味では目立つ。
「もー……普通のでいいって言ってるのに……」
「使用人?だっけ?」
脩人がそう問いかけた時、陽楽はあの忌々しい姿を思い出した。
自分の方を見て笑いながら扉を閉めた2人の男。
思い出すだけで腹の底から今まで感じたことのない感情が沸き上がる。
「よくし過ぎというか……過保護気味によくしてくれるんだよ」
「へぇ、叶弥めっちゃ大切にされてんじゃん」
「叶弥んことなら俺の方が大事に出来るしぃー」
唇を尖らせて、ふんと横を向く陽楽。
それを見て、脩人は苦笑して、叶弥はきょとんとした。
今日の陽楽は何か変だ、叶弥はそんなことを感じていた。
昼休みも過ぎ、午後の授業が終わると予め支度を終えていた鞄を持ってすぐに学校を飛び出した。
蒼とたくさん話したいことも、聞きたいこともある。
1秒でも早く会いたい。帰りたい。
バスに飛び乗って、まだかまだかとそわそわしている。
帰りはいつもこうだ。
着くのがとても長く感じて、焦りさえ覚える。
ようやく到着したバス停に飛び降りて、転びそうになりながら走った。
いつも早く帰りたい、会いたいと思うけれど、今日は一段とその気持ちが強い。
今日は色んなことを考えてしまう日だ。
だから、早く蒼に会って安心したい。
心の何処かに感じた、蒼との日々が壊れるかもしれないという不安。
それも含めて、蒼に安心させてほしかった。
息を切らせながら扉を開ける。
「きょ、叶弥様?如何なさいました?」
「どうしたんですか、そんなに息を切らして」
「はぁっ……はぁっ……何かっ……早く帰り……たくて……」
やっと屋敷に着いた安心感から、急に疲労感が襲い膝がガクガクと笑って崩れ落ちる。
「何をしている」
呆れたような声が上から聞こえて、崩れ落ちかけていた叶弥の身体は後ろから抱き抱えられた。
焦がれて、待っていた声。
たった半日程度しか経っていないのに、やっと聞けたと安心する声。
「蒼……何か早く帰りたかったから……」
「それは可愛らしいが、それでお前に怪我なんてあったら困る」
えへへ……と笑ってから、ちらりと蒼の後ろに目をやった。
見知らぬ紅い髪の男が立っていたからだ。
少し長めのミディアムショートの紅い髪に、髪色よりもう少し暗めの赤い眼鏡の男性。
蒼と並んでも見劣りしないほどに綺麗な顔立ちをしていた。
「えっと……?」
「ああ、紹介していなかったか。同じ吸血鬼で古い知人の紅だ」
「初めまして。紅です」
にこりと笑った紅に叶弥は得体の知れない冷たさと恐怖を感じた。
直感的に分かる、この男は自分に対して好意を抱いていない。
「蒼。この子が君の言っていた"可愛らしい恋人"かい?」
「そうだが?先に言っておくが手出しをするなら例えお前でも容赦はしないからな」
「おやおや、相変わらず怖いな君は。じゃあ私はそろそろ帰るよ。またね、蒼と飼い猫君たち、それと可愛らしい恋人さん」
手をひらひらとさせて紅は出ていった。
その際、ちらりと叶弥を見てニヤリと笑ったのを蒼は見逃さなかった。
「厄介な奴が来たものだ……」
「友達じゃないの?」
「ただの知人だ。腐れ縁というやつだな。叶弥、疲れただろうから居間にでも行くぞ」
「あ、うん」
食堂横にある、無駄に広い絨毯張りのリビングのソファに2人で腰かけた。
すぐに氷が紅茶を、炎が焼き菓子を運んできて一礼だけして出ていった。
「それで?今日はやたら早かったが何かあったのか」
「僕、今朝友達に蒼のこと聞かれたんだけど……蒼のこと何も知らないなって……そうしたら何か悔しいっていうか悲しくなって……」
「そうか、俺は何も話していなかったな。知りたいことがあるなら答えよう」
叶弥の頭を撫で、頬を撫で、顎を撫でた。
くすぐったそうに身体を捩りながら、安心したように叶弥は蒼の肩に寄りかかる。
「蒼っていくつなの?」
「覚えていない。長く生きすぎて数えるのを止めてしまったからな。恐らく500は超しているのだが……人間年齢にすればまだ27か28くらいの若造だ」
数字にピンと来ていなかったが、人間年齢に換算されてからようやくしっくりきた。
「じゃあ、蒼はお兄さんだ」
「そんなところだな」
「蒼は普段何してるの?」
「いつも屋敷に居る。人間の世界に溶け込まなくてはならない世の中になってきてからは、表向きは会社の経営者だ」
「え、そうなの?」
「表向きはな。人間と共存を選んだ他の吸血鬼や眷族の者が働ける場を設けているだけだ」
その時、初めて吸血鬼が共存を選んだという言葉を聞いた。
「じゃあ、共存を選ばない人もいるの?」
「もちろんだ。あくまで人間は食糧、相容れない存在と認識する者もいるし、時代に合わせて共存をするべきだという者も居る。この近辺は俺や共存派の者達が居るから人間が襲われることはない」
「そうなんだ。じゃあ安心だね」
ふふ、と叶弥は屈託なく笑う。
「そう言えば吸血鬼に血を吸われたら吸血鬼になるんじゃないの?」
「そんな迷信があったなそう言えば。血を吸う度に吸血鬼になられたらあっという間に人間が少なくなるだろう」
「あ、それもそっか」
「他に聞きたいことは?」
蒼に聞かれて口を開こうとした叶弥は無意識に発しそうになった言葉を飲み込んだ。
「どうした?好きなことを聞いていい」
「いや……その……」
恥ずかしくなり、顔を蒼の肩に埋めながら何でもないと首を横に振る。
蒼はそれが何かを察して、楽しそうな目付きで叶弥を見つめた。
「言わねば分からないだろう。早く言え」
声は笑いを堪えていて、楽しげなのが伝わってくる。
叶弥は涙目でじとっと蒼を見上げた。
「その顔もそそるな」
「ばかっ……」
「聞きたいことは何だ、言ってみろ叶弥」
ぐいっと吐息がかかる程に顔を叶弥の耳に近付けて、蒼はそう問いかけた。
叶弥は小さく肩を跳ねさせる。
「あ……う……」
「言わねば分からないと言っているだろう」
「息……かけないで……っ」
「話さないお前が悪い。ちゃんと顔を見て話せ」
蒼は肩に顔を埋めている叶弥を半ば強引に自分の足に跨がらせ、向き合う形にさせた。
蒼は叶弥の腰に片手を回し、もう片方の手を叶弥の首に回して逃げられないように捕まえた。
「それで、聞こうとしたことは?」
「それ、は……」
「まだ素直にならないか。それなら素直にさせてやろう」
「んむぅ……っ」
自分の方に叶弥の顔を抱き寄せて、深い口づけをする。
何度も角度を変えて舌を絡め、叶弥の口内を犯した。
たったこれだけで、叶弥の力は抜けてしまう。
腰に力が入らなくなり、なされるがままに口内を犯され、未だ慣れない動きで必死に蒼の舌に自分の舌を絡める。
「お前は何を聞きたい。言え。俺に隠し事なんて許さない」
「蒼……は……俺のどこが好き……?何で好きになってくれたの……?」
「そうだな……好きなところは1つずつ教えてやる」
「んぅ……」
蒼はまた叶弥に舌を絡め、腰に回していた手でゆっくり服を捲り上げる。
「俺がこうしてキスをする度に必死に応えるところが可愛らしくて好きだ」
片手で露になった胸の膨らみをコリコリと摘まんだり、なで回したり、触れていく。
そうしながら、片方の膨らみを舌で刺激した。
「んんっ……やっ……ん……」
刺激されると叶弥は甘い声を出して、肩をビクビクと上下に震わせた。
「こうして胸だけでも可愛い反応をするところも」
舌で膨らみを弄びながら、先程まで触れていた手で今度は叶弥の腰を指で触れるか触れないかでなぞる。
「ひゃ……っ……それ……やだってばぁ……っ」
ビクビクしながら腰を左右にうねらせ、指から逃れようと必死に動かす。
「腰をなぞられただけで感じるところも」
すっと手を腰から叶弥の既に張り詰めている所に移動させ、ズボンの上からゆっくり撫で上げた。
「ん……」
ズボンの生地のせいで焦れったくて、叶弥は淫らに腰を振ってしまっていた。
蒼はそれに気付いて口角を意地悪く上げながら叶弥の反応を楽しんでいる。
「蒼……脱がせて……?」
「そうやって可愛らしくねだるところも堪らない」
叶弥を立たせてやってズボンと下着を脱がせるとまた同じ様に自分の足に座らせた。
ぷるんっと上を向いている叶弥のそれはピクピクとしていて、刺激を求めている。
「叶弥、自分で触ってみろ」
「やっ……やだ……恥ずかしい……」
「良いから触れ……やるんだ叶弥」
「う……ん……」
恐る恐る叶弥は自分のモノに触れ、上下に擦り始めた。
今まで蒼にしか触られたことがなく、自分でも触れたことがない叶弥は不馴れでぎこちない。
「俺に従順なところだって可愛い」
「んっ……ふぁ……っ」
「気持ちいいか」
「蒼の指じゃなきゃ……気持ちよくない……」
甘い吐息を溢しながらら必死に手を動かす。
蒼の視線を感じて、今自分で触っている淫らな姿を見られているのだと思うと、堪らなく恥ずかしくなった。
「そうやってねだるのが上手いところも可愛らしい」
蒼は叶弥の手に自分の手を重ね、一緒に動かした。
自分の意思とは異なるように上下に動かされ、自分で触っているのか、蒼に触られているのか分からなくなってきた。
「あっ……蒼……だめ……っ……だめぇ……」
「イケばいい。我慢は良くない」
「やだ……っ……蒼でイキたい……っ」
「またお前は可愛らしいことを言う。ほら、手を退かせ」
こくんと頷いて叶弥は自分の手を退かす。
蒼の指が自身のソレに絡んで触れ、動かされると先程よりも強い刺激が叶弥を襲った。
「そっ……そぉの手の方が……きもちい……よぉ……っ」
「俺の手で乱れるところなんて愛しい」
「イッ……ちゃ……蒼の手で……イッちゃうよぉ……!」
ビクビクと大きく痙攣して、蒼の手の中に白濁液を吐き出した。
蒼はその白濁液を躊躇うことなく舐める。
その姿に叶弥はまたゾクゾクとして果てたばかりのそれがピクピクと震えた。
震える手で叶弥は蒼のズボンのベルトを外しはじめた。
「……叶弥?」
訝しげな蒼の声を無視して、叶弥は蒼の既に張り詰めたモノを解放する。
そして、蒼の前に跪いてそれを恐る恐る口に含んだ。
「ふっ……」
「んむ……んぐぅ……」
叶弥の口に収まりきらないそれを、ぎこちなく舐めている。
そんな姿の叶弥に蒼は興奮を覚えた。
慣れないながらに必死に奉仕をする姿の愛らしさ。
それはあまりにもそそられる姿だ。
叶弥はいつもこの大きさのモノが自分の中に入っているのだと、口の中で大きさを確認しながら舐め続けた。
いつも蒼にされていることの見様見真似で、少しでも蒼を気持ちよくさせたかった。
懸命に頭を動かして、舌を絡めて。
「お前は……本当に可愛らしい……」
耳に届く蒼の声はいつもより切なげで、自分で感じてくれていることに叶弥は喜びを覚えた。
「叶弥そろそろお前の中に入れさせろ。お前の中でイキたい」
叶弥の涎で十分に濡れているソレを叶弥は蒼に跨がって、自分であてがった。
「ゆっくり腰を落とせ」
「んんっ……」
少しずつ押し広げながら自分の中に蒼が入ってくる。
先程まで口に含んで大きさを確認していたモノ。
それが自分の中に入ってくる。
「お前のこうして俺を受け入れるところも、欲しがるところも全てが愛らしい。それだけじゃない」
「あぁっ……!」
ズン、と急に最奥を押し上げられる。
根本まで入ったと同時に、蒼が突き上げたのだ。
思わず叶弥は背中を仰け反らせた。
「こうして俺で感じているところなんて最高だ」
「蒼の……気持ちいい……から……」
「俺は何よりも、お前がそうして俺へ真っ直ぐな愛を向けてくれるところが好きだ」
「んあぁ……っ!」
また最奥を突かれる。
キュウキュウと蒼のモノを締め付け、蒼のソレを悦んでいる。
「素直で可愛らしくて」
「あん……ぅ!」
「優しくて一途で」
「ひぃぁ……っ!」
「誰よりも俺を見ている」
「んんぁ……っ!」
一言一言口にする度に蒼は叶弥を突き上げた。
まるで叶弥の奥底に想いを叩きつけるように。
「俺でこんなに感じて乱れて……」
「ひぃ……っ!」
「何もかもお前の全てが愛おしい。一挙手一投足、一言一句全て、どんな姿のお前も愛おしい」
蒼はリズミカルに腰を動かしはじめ、最奥を何度も何度も突き上げた。
ガクガクと腰を震わせながら、叶弥もそれに応えて蒼に合わせて腰を動かした。
「淫らに腰が動いているが」
「分かんな……きもち……い……あっ……ねっ……もう……」
「もうイクのか。早いな、どうした?」
「きもち……よすぎて……も……分かな……!」
涙を浮かべ、頬を紅潮させ、自分で腰を振りながら叶弥は果てた。
白濁液が叶弥自身の胸元に飛び散り、蒼の服にもかかる。
秘孔はヒクヒクと痙攣し、身体と叶弥のソレはピクピクと震えている。
「イッたばかりで悪いが俺はまだだからな」
「待っ……今は動いちゃ……!」
お構いなしに蒼は突き上げる。
イッたばかりの叶弥は喘ぎながら蒼にしがみついた。
頭が真っ白で、訳が分からなくなった。
ただ、快楽の波が押し寄せて何度も何度も果てるような、そんな感覚に襲われて、涙と涎でぐちゃぐちゃだった。
「あっ……!あん……っ……うぁ……ひぎぃ……っ!」
「お前の中は最高だ、叶弥」
「ぼく……きもち、い……?」
「ああ、最高に気持ちいい」
「もっ……と……ぼく、で……きもちよく、なって……ぇ……っ」
自分でも何を言っているか分からなくなっていた。
ただひたすらに気持ちよくなりたくて、蒼に気持ちよくなってほしかった。
「イッ……く……蒼の……おち……ん……ちん……で……イッちゃううう……!」
「俺も限界だ。叶弥、出すぞ」
「ひっ……あっ……ああぁぁあっ……!」
今までより大きく仰け反って、叶弥は果てた後に蒼に雪崩落ちた。
肩で大きく息をして、身体全体が大きく痙攣していた。
繋がったままでいると、蒼のソレがまた膨らんでくるのが分かった。
「やっ……蒼……もっ……むりぃ……!」
「今日のお前がいつもより更に可愛らしいのが悪いのだろう?」
繋がったままくるりと叶弥を前に向けて、そのまま立ち上がった。
そして、ソファの方に叶弥を向けて、ソファに手をつかせた。
いわゆる、立ちバックと呼ばれる体勢だ。
「やっ……やぁ……っ!やだ……やぁ……!おかし……くな……うぁ……っ!」
「後ろからになると途端に締め付けが強くなるなお前は」
「ひぃ……っ!もっ……やぁ……っ!おくは……っ……やぁ……っ!」
部屋にグチュグチュという水音と、パンパンと肌のぶつかり合う音が響いた。
その音が耳に届く度に、叶弥はおかしくなりそうで、快楽の海に沈んだまま、ただ与えられる快楽に声を上げた。
蒼に犯されている。それだけで何度も果てられるのではと思うほど、叶弥は蒼から与えられる快楽が好きで堪らない。
「そぉ……ぼくのなかで……っ……イッてぇぇえ……っ……!」
「何処でそんな言葉を……覚えたんだお前は……くっ……」
ドクン、と脈打ち、再度叶弥の中で果てた。
引き抜くと、ゴポォと音がして液体が零れ出てくる。
「はっ……はっ……」
未だ整わない息のまま叶弥は崩れ落ちるが、蒼はそれをしっかりと捕まえて浴室に運んだ。
シャワーで綺麗に洗い流して、中も掻き出して綺麗にしてやった。
その間も叶弥はびくびくと腰を跳ねさせて感じていた。
「変な薬でも飲んだのか」
「飲んでない……」
「何だこの乱れようは」
「蒼に……好きなところ言われてたら……何か……」
言葉が媚薬となっていたらしい。
1つ言われる度に意識してしまって、感度が跳ね上がったようだ。
「大事なことを教えていない」
「んぅ?」
「お前はどこに惚れたかと聞いたな」
「うん」
「あの日、雨に濡れながら俺を不安そうに見上げたお前を見たときに、堪らなく欲しくなった。俺のものにしたいと、捕まえてしまいたいと思った。抱いてしまいたいと思った。どううしようもなく一目惚れだったんだ」
ボッ!と音がして火が出るのではと思うほどに顔が熱くなるのが分かった。
蒼もまた、一目見た時から惹かれていたのだと知って、堪らないほどに幸せだった。
「僕は、蒼にとって魅力的に映ってる?」
「当たり前だ。何よりも魅力的に映っている」
「良かった……嬉しい」
本当は不安だった。
自分の容姿と比べたときに蒼はとても美しい。
先程、紅と並んでいるのを見て、お似合いだと思うほどに紅は綺麗な顔をしていて、自分のような並の容姿の人間が好かれているのか、と。
叶弥は世間で見ればかなり顔立ちは整っているが、本人にその自覚がなかったのだ。
だから、蒼の口から己が魅力的だと言われたことは叶弥にとっては十分な言葉だった。
知りたいことを聞くことが出来た叶弥は、ようやく安心できた気がした。
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