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僕は先輩の...
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中はまだ熱気としているが、外には全く人がいない。
僕はそばに生えている木の陰にそっと座った。
何も考えないで、ただただ風を浴びる。
何度も目にしてきた僕と先輩の差。
同じ高校に通っている同じ高校生。
でも先輩はみんなの人気者で、ファンがたくさんいる。
僕とは全然違って、近づいていいのかわからなくなっていた。
でも僕は...
近くにいたい、そう思ってしまう。
僕は先輩の何になりたい?
部下?ファン?友達?後輩?
どれもぴったり当てはまらなかった。
僕はどうしたい。
どうすればいいんだ。
僕はいつの間にか出てきていた涙を隠すために、体育座りで腕の間に突っ伏した。
「...いた。」
誰かが僕の前に立つのを感じた。
僕はその声にパッと顔をあげる。
「星音、なにやってんだよ、こんなとこで。」
「せ、せんぱ、ファンサービスは...」
「何言ってんだ、星音が来ないって湊のやつが言うから、そんなの後回しで探しに来たにきまってんだろ」
先輩はファンよりも僕を優先した、ってこと?
その事実にもう訳が分からなくなって、また涙がこぼれてしまう。
「ちょ、星音?」
先輩が抱きしめてくれる。
僕はただただその背中にしがみついて
「先輩、先輩...」
ということしかできなかった。
やっと息が落ち着いてきた。
「...すみませんでした。もう大丈夫なので戻りましょう?」
これ以上ファンを待たせるわけにはいかない。
「ん、だけど無理すんなよ?」
朝西先輩のやさしさにまた泣きそうになるのをこらえる。
僕のせいなのに。本当に、ごめんなさい。
二人で控室に戻ると、ファンの人から黄色い悲鳴が上がる。
「おまたせ、ファンサービスするぞ!並べ!」
朝西先輩は僕に先はいっててな、といってからファンサービスを始めた。
僕は控室に入る。
「あ、星音!大丈夫か?」
湊が僕を心配してくれた。
朝西先輩も、湊の話を聞いてきてくれたんだもんね。
「うん、ありがとう。」
そういって僕は椅子に座った。
バンドメンバーはファンサービスで控室の前にいる。
僕らはしばらく二人で話していた。
「なぁ、星音」
湊が何となく話しかけてくる。
「どうしたの?」
僕は答える。
「お前さ、何か悩んでないか?」
…………鋭い。
やっぱり湊にはかなわないな。
「どうして、そう思うの?」
「まるわかりだよ。俺とはなすときも上の空だったり、う~ん、とかいってたり。」
いつの間にそんなことしてたんだ。恥ずかしいな。
「ちょっとね...」
「あんま深くは聞かないけどさ、なんかあれば言えよ?」
「ありがとう」
湊はほんと優しいや。
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