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クッキー
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「ただいまー」
凛音さんが言う。誰かいるのかな?
すると奥から女性が出てきた。
「おかえり、あら、その子は?」
「ああ、こいつは後輩の星音。ちょっと色々あって連れてきた。」
「はじめまして、月宮星音といいます。よろしくお願いします」
誰だろう?
「星音君ね。よろしくね。私は凛音の姉の美鈴よ。こんな奴だけど仲良くしてやってね」
凛音さんにはお姉さんがいたんだ。
「誰がこんな奴だよ!」
「あんたよ、あんた。んじゃ、私今から明後日までいないから。よろしく」
「おう」
二人の会話をぼーっと眺めていると、先輩にたたかれた。
「ほら、奥いくぞ」
「はい」
奥はリビングになっていた。リビングに荷物を降ろして、その時にあることを思い出した。
クッキー……渡してない。
でも……さっきの店員さんも、クッキーとかならあげてそうだな。
僕は初めてだし……いらないって言われないかな……
「なにしてんだよ、とりあえず座れ。」
そう言って凛音さんはソファーに座って、自分の膝を開いて間をトントンとたたいた。
そこに座れってこと?
恥ずかしい……
「そ、そこ、ですか?」
もじもじしていると腕を引っ張られてすとんと着地した。
「さてと。誤解を解かなきゃだったな」
そうだ。誤解って、なんなんだろう。
「さっきの店の店員。日先 茜っていうんだよ。あいつが、誤解を解かなきゃっていうからさ。」
「その、誤解って何ですか?」
「あいつ、おまえが何か誤解してるっていうからさ。何を誤解してるんだ?」
それじゃあわからないよ、もう……
「僕は何も誤解してるつもりはないんです……ただ……」
「ただ?」
凛音さんが怪訝そうな顔で僕をじっと見つめる。
「ただ、凛音さんとさっきの店員さんが、とっても仲良さそうで、うらやましくて……」
「ん?それはさっき言っただろ、家族ぐるみの付き合いだって。」
「そ、それはわかってるんですけど……。お付き合いとか……」
「はあ?するわけねえだろ、あいつなんかと。あいつはただの幼馴染みたいなもんだ。それ以上でもそれ以下でもねえ。」
凛音さんはそう言った。
「そうなんですね!」
僕は内心ほっとした。嫉妬していた自分が恥ずかしいや。
「ってことは、それが誤解だったのかもしれないです」
「お、そうだな!お手柄だぞ!」
凛音さんが僕の背中を叩いた。
「あっ、そうだ!」
僕はまた忘れかけていたことを思い出し、四つん這いでバッグを掴み、中から包装された袋を取り出した。
「凛音さん、これ。今日の料理研究部で作ったんです……よければ」
凛音さんはそれを見て目を輝かせた。
「まじかよ!俺に?ありがとな」
そう言って凛音さんは袋からクッキーを出して食べ始めた。
せっかく選んだ形には目もくれない様子だが、喜んでくれてるからいっか。
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