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BPM120
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ライブが引けた直後の汗臭い身体のまま孝太が俺を求めるようになったのはそれほど昔の話じゃない。興奮覚めやらぬまま、さっきまでピックを咥えていた前歯にコンドームのパッケージなんか咥えて上目遣いに身体弄られて何も感じないほど俺も枯れてはいないので、求められるまま孝太の身体を触ってやって一緒に処理に励むわけだが、奴ほど興奮してるかっていうとこれまた別問題、頭ん中ではBPM120ほどでクリックが鳴っていたりする。それを1つ飛ばしでカウントして60数えれば約1分、300まで数えると5分という計算だ。
このハコでの最終公演が終わって、表じゃバラシが始まりつつある。打ち上げの連絡だって回ってくる。三人しかいない主要メンバー二人が欠けても訝しがられない時間を測る。孝太の前歯からコンドームを奪って開封した。
「何考えてんの、進」
孝太は本名で俺を呼んだ。本名、ススム。芸名、シン。俺だけ本名と芸名で音が違う。ススムって名前がダサいからだろう、社長が勝手に付けた。名前なんて記号以上でも記号以下でもないから俺にとってはどうでもいい。
「時間」
「余裕ダネ?」
「余裕あったら時間数えてねーわ」
「了解、さっさと終わらせます」
「つーか一人でヤれよ、毎回俺巻き込みやがってふざけんな」
「前おっ勃てて言うセリフじゃねえのよ進クン」
「そりゃ触られれば勃つでしょ、触れてもねーのにステージで勃起しながらギター弾いてる変態ギタリストのアナタに言われたかないね」
「うっそ、興奮するじゃん? 今日もサイコーだったじゃん?」
「ハイハイ、サイコーでしたね。あー素敵ステキ」
あんだけ気持ち良さそーに弾いてりゃね。こっちはあいにく弦楽器よりミストーン目立つし、抱えてる機材多いし、実情が演奏自体より打ち込み関係がメインだったりするし、そもそも要塞に囲まれてるし、やること多くて理性ぶっ放してステージングなんてわけにも行かないから、はっきり言ってヒロやコータが「なんかイっちゃってる」顔して演ってんのが理解不能。
孝太ははあはあと息を乱しながら俺を蓋した便器の上に座らせて自分の尻を弄っていた。どうせスタッフしか使わないバックヤードの便所の、なんであるのかわからないオストメイトを占領することには気が引けることもない。気が引けるのは時間だ、時間。
「進、なんでそんな冷めてンの」
「冷めてねーよ興奮してる」
面倒臭くて早く終わらせたくて適当に返し、汗で張り付く孝太のTシャツを捲り上げて胸の突起を指先でぐにぐに弄ってやる。さっきまでコーラス入れてた高めのハスキーヴォイスが甘く声を上げる。興奮する。
ヒロは、――浩弥だったらこんな時どんな声を上げるだろうか、とふと考える。浩弥のキーを探す。Eあたりだろうか?
片足だけパンツ脱いだ孝太が俺の上に跨ったので、俺は慌ててゴムを装着した。
「……挿れていい?」
見上げた先では普段なら若干見下ろす位置にいる筈の孝太が、潤んだ目で俺を覗き込んでいた。
「どーぞ」
「……色気ねー」
悔しそうに孝太は眉を歪めて、それでも腰を落としていく。あたたかな感触に包まれていく。本来入れるべきでない場所は狭くて、俺は息を詰める。孝太は逆に深く息を吐いていた。
「あっ、あ、あ……」
途切れ途切れの喘ぎは慌ただしいスタッフの声に掻き消されてきっと外には届かない。全て収まったところで俺も息を吐いて緩く中を突く。不安定な足の上で孝太が身を捩った。
触れられれば勃つし、突っ込めばそりゃ気持ちいい。
でも、それだけだ。
そんなことは孝太だって分かってる。分かってて俺を利用する。男も女も見境なしで、挿れるのも挿れられんのもお構いなしで、孝太の貞操観念はぶっ壊れてる。俺だって褒められたモンじゃないけど奴ほどじゃない。キチンと割り切って孝太を抱く俺は奴よりマシだと思う。
「あ、あっ、……動けっ……て!」
身悶える孝太の顔を眺め、不健康に細い腰を掴んだ。
カウントを止めて、BPMを上げる。クリックに合わせて下から突き上げると変態ギタリストの身体がしなって掠れた嬌声を上げる。
色素の薄い長い髪が揺れていた。
――まるで女みてぇ。
孝太が腕を俺の首に絡めて、自らも腰を振る。ステージで、ヒロと二人、背中合わせに腰振ってたのを思い出した。仕事中に脳内セックスしてんじゃねーよ、って思う。ああ、そんで、コレはその続きなワケで。
二人の身体の間に手を入れて、孝太の前を握った。オンナみたいとはいえ、孝太は後ろだけでイったりはしない。ぬちゃぬちゃと卑猥な音を奏でる結合部に合わせて擦ってやると、孝太の声はE♭からF♯へと一音上がった。
「あ、あ、ァだめ、イくッ、い……あッ」
孝太が俺の手を振りほどいて自分で扱き始める。締め付けが一層キツくなって俺のもだんだん限界に近付くから、何となく口付けようと孝太を見上げた。目を閉じた孝太が口をはくはくと開閉させ、荒い呼吸の合間に何かを囁く。
――……ヒロ。
わななく唇が、はっきりとボーカルの名前を形作るのを見ながら、俺は薄いゴム越しに精を吐いた。
(進、なんでそんな冷めてンの)
毎回コレ見せ付けられて冷めない方がどうかしてる。
で、毎回コレ見せ付けられてもノっちゃう俺はもっとどうかしてる。
孝太は吐精してしまわないよう自分で戒めていたらしい。俺がイったのを確認してから腰を上げて引き抜くから俺は便器の上から退いた。ついでに便器の蓋も開けてやる。俺ってチョー優しい。
孝太のスペルマは誰にも受け止められることなく便器に吸い込まれていった。
身代わりにしてる孝太より俺の方がマシだ、とそれ見ながら再度思った。
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