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Track 10
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ここで俺の経歴を振り返ってみましょう。
孝太と知り合ったのは高校の文化祭直前のことだった。奴は文化祭のステージでバンド演奏することになっていたのだが、そのバンドが文化祭二週間前で空中分解し、奴はボーカルだけ抱えて右往左往していた。そこに、俺が趣味で打ち込みやってることを嗅ぎつけ、俺にドラムとベースのパートを打ち込ませてなんとか本番を迎えたというのが知り合ったきっかけだった。
その後、特にバンドなんかに興味のない俺はそれなりに名の知れた大学に進学し、有名商社の内定を勝ち取り、もう後は卒業するだけという人生レース勝ち組まっしぐらだったのだが、スタジオミュージシャンなどという浮ついた職業の孝太に再び捕まることになる。
奴は今度は現役音大生のボーカリストを抱え、デビューを控えて右往左往していた。そのボーカリストが浩弥。
所属事務所から何から手を回され、いろいろあって俺は商社の内定を蹴って奴らとバンドを組み現在に至る。最初から事務所イチオシのバンドとしてデビューが決まった状態で加入したわけだから、収入面は確かに普通に就職するより遥かにいいけれども、人生における安定感といったら俺の土台はグラグラのユラユラだ。
それでも浩弥の歌に惚れてしまったのだからそれはもう、どうしようもない。
さて、それとは別に、俺には大学時代から付き合っている彼女がいる。
その彼女が筋金入りの浩弥ファンで、彼女は浩弥の前の前の前の前のバンドから追っかけをしていた。彼女曰く、浩弥イコール、バンドクラッシャー。長続きした試しがないから、バンド結成歴三年、デビュー四年目の俺たちが未だ一緒に音楽やってるのは彼女曰く奇跡らしい。人生の安定を振った俺としては、そうやすやすと浩弥に振られてたまるかと思う。
彼女と知り合ったのは、彼女が某有名動画サイトで「歌ってみた」とかいう活動をするのにミックス師を募集していて、俺は大学入ってバンド自体には興味もなかったが打ち込みだとかミックスだとかでなんとなくダラダラと音楽には関わっていて、彼女の募集に応募したのがきっかけだった。
ミックス師が歌い手に手を出して、って思いましたか皆さん。最低だと思いましたか皆さん。羨ましいと思いましたか皆さん。そうですいわゆるオフパコってやつですそれは否定しない。
その彼女は現在、俺のベッドで裸のままうつ伏せに寝転がり、昨日の戦利品と称した薄い本を読んでいる。紙面では目一杯美形に盛られた俺が、目一杯可愛くデフォルメされた浩弥をアンアン言わせていた。裏表紙には「十八禁」の文字と「公式とは一切関係ございません。本人及び事務所並びに関係者各位への送付等は固く禁止いたします。シン×ヒロ」の文章。同様の薄い本が枕元に積み上げられ、その高さはもはや薄くなどない。
彼女は浩弥を「嫁」と呼ぶ熱烈な浩弥ファンでした。
オフパコからオカズに転落した哀れな彼氏である俺の気持ちを百四十字以内で述べよ。
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