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第十一話
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結斗は身体が子供から大人になるにつれ、誰かとセックスをしたいみたいな欲を持つようになったが、同じような欲求を純が持っているとは想像出来なかった。
純の部屋は、性の匂いがしなかった。同じように成長して大きくなったのに、結斗の中で純は子供の時のまま時間が止まっていた。
地下の部屋は、ピアノと遊びにくる結斗だけで構成されていた。
それに対して、結斗の部屋には、いつだって俗っぽいものが溢れていた。純はそれを目にしても、結斗と同じように、顔を赤くして焦ったりはせずに「ゆいは、こんなのが好きなの?」そういって、綺麗な顔で笑うだけ。エッチな漫画を読んでも、結斗のスマホのヤバ目な検索履歴を目にしても。性的なものに関しては、総じてさらりと流して興味なさげだった。
だから、結斗が当たり前のように持っている、その衝動が同じように純にもあると少しも考えられなかった。
――ピアノの前でオナニーしてる、純を目にするまでは。
正確には、純の地下にある部屋。
プライベートな場所で一人性欲を発散しているくらい、年頃の男なら普通のことで、なんら驚くことでもないし、結斗が純のそれを目にしてしまったのは、ただの事故だった。
その日は、いつもと同じように高校の帰りに純の家に行き、小さな子供みたいに、突然部屋に入って驚かせてやろうと、足音を忍ばせて部屋向かった。すると、純が一人で、下半身を擦っていた。
結斗は、それを目にして「男だし、健康だったら、まぁするよな」と思った。自分だって、同じことをしているのに、あまりにも純のイメージになかったので、驚いてからかうことが出来なかった。普通に、何やってんだよって笑って言えば良かったし、言ったところで、自分たちの関係にヒビが入るとも思えなかった。
なのに、ただひたすらに戸惑っていた。
何を考えて、何を思って、一人で気持ちよくなっているのか、今思えば、そういう純の性欲の対象を知りたくなかったのかもしれない。
声をかけるタイミングを失い、結斗はドアの前で、じっと息を潜めていた。見ている訳にもいかず、かといってその場から立ち去るために、再び階段を上がっても気づかれそうで、壁を背にして目を閉じ隠れていた。
ピアノの前に座り、頬を染め、うっすらと口を開けて己のものを擦っている純の姿は、目を閉じても眼裏から離れなかった。
結局、いつ終わるとも分からないそれを、ドアの前で息を潜めて待っていたら、数分後にしれっとした顔をして、純は部屋から出てきた。
――そんなとこで何してんの、寒くない?
焦って驚く純が見られるかもしれないという結斗の予想は外れた。
――は、走ってきて、疲れたから!
――そう。じゃあお茶、いれてこようか。
結斗の苦し紛れの言い訳にも、いつもと変わらない反応を返されて、その場に一人残された自分は、幻でもみたような気持ちになった。
そんなふうに幻のように思っているのに、結斗は何故か今もあの日の映像を思い出してしまう。そして、その数秒の絵は、折に触れ結斗の股間を誤作動させた。
自分がみたことのあるどのアダルトビデオより刺激的で、心臓に悪い映像。
どこで、間違ってしまったのか、結斗は最近よく考える。
純の自慰を見てしまったことが、きっかけかもしれないと思った事もある。純は綺麗だから、あれが一種の倒錯的な嗜好を自分に植え付けたのだとしてもおかしくはない。ただ同時に男として、生物的に当たり前である純の自慰行為一つを見たくらいで、とも思う。
きっと一緒に過ごした長すぎる時間。
少しずつ、間違えてしまった。
結斗は、時間が原因だと結論づけている。けれど、二人で過ごした時間は、どこを思い出しても、全てが温かくて、幸せで、純がくれたものに間違いなんか見つからなかった。
結局、自分の持っている心だけが、間違っている気がしてならなかった。
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