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二話「水鏡に萌ゆる」
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僕がこの町にやってきたのは小学校低学年の頃。
それまではここより少し栄えた場所で暮らしていたが、僕の受けていたイジメがきっかけでこの田舎町に越してきた。
イジメの原因、それは嫉妬だ。
物心ついた頃にはすでにヴァイオリンを弾きこなしていた僕は、周囲からもてはやされていた。
女の子たちも「すごい」だとか「かっこいい」だとか言って、僕を煽ててはおしゃべりのネタにしていた。
それが気に食わない男連中は、僕に陰湿な嫌がらせをしてきた。
授業中に消しゴムのカスを飛ばしてきたり、上履きに画鋲を入れられたり。
遠足のお弁当に生きた虫が入っていた時もあった。
最初は擁護していた女の子たちだったが、だんだんとイジメグループの方に流されていき。
最終的には、キモいと一蹴して逃げていくようになった。
それに気がついた両親は「そんな貧困な価値観しかない連中と一緒にいる必要はない」と言って、すぐに転校の手続きをしてくれた。
そして、その転校に合わせる形で引越しを検討してくれた両親のおかげで、今の僕がここにいる。
でも、イジメが原因で僕は、ヴァイオリンが嫌いになっていた。
自分を傷つけるものを引き寄せる魔の楽器。
そんなふうに思った時期もあった。
あの時、あの森の洋館であんな演奏を聞くまでは…。
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