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ピンクの花びらが街を華やかに染め上げる。
いきつけだった店の前の道路も例外ではなかった。
7年前もよくこうして学校帰りに寄ったものだ、と久しぶりに訪れたスコアットロの前でそう思った。
店先にはオープンと書かれた小さなサインボードが立てかけてある。
今日も喫茶「スコアットロ」は営業中のようである。
懐かしさを噛み締めながらその扉を開くと、風情あるベルの音が縁を出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ…おや?これはこれは」
「ちぃーす!栗田さん」
「久しぶりだね、君がうちに来るのも。
いつものでいいかい?」
「おー、栗田さん。俺のいつものちゃんと覚えててくれてんの?」
「ふふっ、当たり前じゃないか。
伊達に何年もマスターやってないからね」
冗談めかして微笑むと、マスターはミルに豆を入れて挽き始めた。
「今日は、奥さんと娘さん達は一緒じゃないのかい?」
手を動かしながらカウンター席に座る縁に話しかける。
「和は娘連れて花見に行ってる。上の子のママ友連中で色々やるんだってさ。
一応日本酒持たせたけど、一升瓶のまま返ってきそう」
「おや?彼女、下戸だった?」
「逆っすよ。酒豪だからいつも介抱する側。
子供に加えて、よその母親の面倒見るのはしんどいっしょ?」
マスターは、なるほどと言った様子でかすかに笑うと、挽き終わった豆をペーパーフィルターに移した。
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