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込み上げてくる涙。
それが頬を伝って落ちれば、上擦って苦しくて……引き摺るような浅い息を何度も繰り返す。
……ごめんね……許、して……
ナツネ……
ナツネ……
「……な、つね……」
ギシッと深く沈むベッド。
まだヒリヒリとした皮膚に、熱いモノが充てられる。
「……伊江」
次いで頬に濡れた涙が吸い取られ、閉じた瞼が熱くなる。
「好きだ、伊江……」
手首を掴まれ、ベッドに押し付けられ、喉元に顔を埋められる。
体に重みと人肌を感じ、それが何だか心地好くて……とても安心して……
「……はぁ、……ぅン、」
安堵の溜め息を吐いた瞬間、塞がれた唇。
柔らかな熱い舌肉が滑りこみ、情欲を掻き立てるように僕の咥内を掻き回す。
それになんとか答えようと、舌肉に自身の舌を懸命に絡め、唾液を混ぜ合わせる。……無意識のうちに。
ちゅ、くちゅっ……ん……
「……ふ、……は、ぁ……」
淫靡な水音。
溶け合う、お互いの熱い息。
優しく撫でられる、頬。
「……ナツネ、か。随分と伊江を悲しませる奴なんだな……」
唇を離した先輩は、頭を上げ周りを改めて見回す。
そして目に付いたのは、デスクにある幾つかの紙。
「………これは」
山引の背中から産まれるナツネ。
急速に成長し、ゆりかご地下室へと向かう、大量のナツネ。
クイーンに食われ、引き千切られるナツネ。
笑顔で涙を浮かべる、ナツネ。
ナツネ。ナツネ。ナツネ。
ナツネ。ナツネ。ナツネ。
ナツネ。ナツネ。ナツネ。
ナツネ。………
「………」
ベッドに眠る僕。
頬についた涙の跡を、先輩の親指に拭われる。
そして前髪が搔き上げられ、剥き出しになったそこに、熱い唇を押し当てられた。
……ガチャッ
玄関のドアが閉まる音。
その音に気付き、なんとか重い瞼を開けた。
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