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「ガキの名前はクロードだそうだ。ブリタニア人みたいな名前だな」
ボスにそう命ぜられたはいいものの、ハッシュベルは困惑していた。
命じながらボスが視ているホロムービーは、どう見ても彼の「憎き小僧」だった。ただ、ボスの脳内では別人らしく、
「はあー、クロネちゃん可愛いな」
噛み合っていない。
ボスは菊蛍の寝室をすけべ心で盗撮しただけなので「憎いクソガキ」の乱れた裸体しか知らないのだ。
最近人気のクロネちゃんは小袖袴に三味線の、猫目をしたアジアンビューティーで、睨むような視線が特徴だった。ギタリストのように三味線を構え、ヤマトロックを弾く姿はヤマト人特有のストイックな魅力があり、褥の彼とは重ならない。
それにしたって電脳ワーカーの社員名簿を調べればすぐ分かるだろうに。
まあ……命令を実行すれば、憎い小僧もクロネちゃんも手に入る訳で、ボスにとっては嬉しい結果になるはず。
ハッシュベルは人員を集めて捜査を開始、作戦行動に移った。
***
本物のカジノだ!
不正防止のため、テクスチャやホロの類は使われてない、アナログなスロットやルーレットがあるらしい。
場違いにも程があったし、ギャンブルには興味がなかったけど、とにかく現物を見学したかった。何より赤い絨毯や華やかなシャンデリア、内装が凄くおしゃれでセレブリティでブルジョワで豪華なんだ。
けど、シャツにスラックスの、未成年にも見えるような若いのが来るようなとこじゃないから、
「失礼ですが、身分証を……」
とガードマンに止められた。無法惑星でもこういうのキッチリしてんだな。
ロマだけど、ちゃんと成人もしてるし、会社にだって属してる。止められる理由はドレスコードくらいしかないはずだ。
で、身分証を仮想次元経由で提示したところ、サングラスの兄さんがちょっと驚いた素振りを見せた。
とりあえず通されたんで、完全におのぼりさん状態できょろきょろしながらスロットマシンのところにいく。コインに換金したのはほんの少し、スロット回すための最低限。だからワンラインの最低レートだったけど、
「わあー!」
回転するリール見るのが楽しくて回しちゃう。
「おにいちゃん、カジノ初めて?」
電子パイプ咥えたおっちゃんに話しかけられて、うんうん頷く。
「スロット、まわる! すごい!!」
原始人かってくらい片言で、興奮して捲し立てる。
「おにいちゃん、観光?」
「うん」
「ここ、海賊一杯いるから気をつけてね。ルーレットやカードはカウンティングとかの技術がいるから、遊ぶんならスロットにしときな」
「ありがと。でも、ルーレットが回るとこ見たいんだ」
「……心配だなあ。ついてってやるよ」
おっちゃんがルーレットの席まで連れてってくれた。黒と赤の、緑がふたつあるアメリカンルーレットだ。
アメリカって国は、もうなくなった。というより、アメリカという国がスタンダードになりすぎて、逆に文化として霧散しちゃったんだ。ブリタニアは星系として残ってるから、そっちに吸収されたきらいもある。
でも、やっぱりこういう細かいとこや、ロックとかにアメリカの魂が残ってる。エルビスやポールは数千年経った今でも英雄だ。
逆にヤマトの英雄はノブナガかな。ノブナガ・ダテマサムネ・シンセングミは今でも人気が高い。シンセンって傭軍があるくらい。もちろん忍者や侍も。
さておき。
赤に置いたらダブルになった。でも、別にお金はいらないからまた一枚だけ賭ける。
「負けた時に倍がけしてくのはマーチンゲール法って言う。他にも色々あるが……」
「1ロストした次に2賭けて4倍になれば、1儲かるってことか。でも乱数って偏るよな?」
「そう、無限の資産があれば絶対に勝てるが、現実的じゃない。20連以上外れることもあるのが二分の一確率の恐ろしいところだ。見てな」
おっちゃんは1を赤に賭け、負けた。そんでまた1賭けて、負ける。次に2賭けて買った。これでプラマイゼロ。
似た感じで賭けては負けて取り返して、少しずつ増えてく。
「狡いやり方だし、もちろん負けることもある。コツはバランス感覚」
「色々あるんだな」
「カードも見てくかい?」
「カードはいい、別にどこでも出来るゲームだから。バカラが見たいな」
「お客様、よろしいですか?」
ボーイさんに話しかけられて振り返る。別に悪いことはしてないはずだが……見学だから冷やかしみたいなもんだけど。
「オーナーがVIPルームにご招待したいとのことです。いかがでしょうか」
「ええ、なんだい。にいちゃん、もしかしてお忍びかい?」
お忍びっちゃお忍びだな。たぶん、今ウィッカプールで身バレするのは凄く不味い。でも、そんな人いっぱい居るんじゃないか? もっと身分が高かったり、要人だったり、有名人とかも来るんだろ。
『クロネ様ですね?』
クローズドで確認をとられ、仕方なく頷いた。騒ぎにしてほしくなかったし、VIPルームに興味があった。本物のカジノのVIPルームだぞ? 見てみたい!
おっちゃんと別れて奥まで案内されて、いかにも! な金色のゴージャスな扉の中に入る。凄い。王様の部屋だ。天井いっぱいのシャンデリア、赤い革張りの椅子、アンティークのゲームテーブル。
「ようこそ、クロネ様」
洒落たスーツで、長髪オールバックの人が微笑んだ。
「お呼び立てして申し訳ありません。我々のボスが貴方のファンでして……」
「ボス?」
「ハイドウィッカーという海賊です。ご存知ありませんか」
流石に知ってる。ウィッカプールの元締めとか言われてるハッキング系に強いウィッカーだ。
機械感応でも得意分野は色々で、ソフトアーティファクト(プログラム系)に強い奴や、ハードアティファクト(機器)に強い奴で別れる。俺は後者でハイドウィッカーは前者。そもそも、力の強さが段違いだけどな。
「もしお時間があれば、ぜひ……」
「そういうのは社長に聞かないと分かんないです」
海賊に会うってのも怖いし、きっと蛍も怒る。
「俺、VIPルームの見学がしたかっただけなんで。もう帰っていいですか」
「それは困ります」
困りますって言われても困る。
不穏なものを感じて身を引くと、背後から気配もなく忍び寄った影が俺の口を塞いで、首筋にパッケージポンプが押し当てられた。
「んんっ」
コポ、と中の薬品が体内に広がってく。ふぅっと力が抜けて、意識が薄くなってく。
気を失う前に、蛍に空メールを送るのがやっとだった。
「クロネちゃんじゃん!」
という声で目が覚めた。
手、動かない。後ろ手に拘束されてる。足も。
やけに広くて何もない白い部屋。最高級のリクライニングチェアのほかは、部屋の隅にベッドがぽつん。そこに俺が寝かされてる。
仮想次元のホロなんかを楽しむための部屋ってこういうふうになりがちなんだよな。
「ですから、ボスがお探しの小僧がクロネでありまして……」
「聞いてないよ?」
「何度も申し上げました」
「嘘だろ……」
言い合ってるのは、カジノのオーナーと、モノゴーグルの男。体格と格好はアメコミめいてる。ファイバースーツだけど、軍用の黒や迷彩じゃなくて、ド派手なオーダーメイド品。無駄な装飾も多い。コスプレの領域だな。
モノゴーグル、おそらくハイドウィッカーは、苛々したように部屋を行ったり来たりしてから、腕を組んで踵を返した。
「やっぱり気に食わん!!」
何が?
成り行きを見守ってた俺に、「小僧!」とハイドウィッカーが指をつきつけてくる。
「これはお前に相違ないな!」
と、白い壁一面に蛍に抱かれてあんあん言ってる俺の映像が映し出された。
なんだこれ、盗撮か!
「あんらっ……」
文句言おうとしたが舌がもつれた。
「チクショー、菊蛍とられた事も、クロネちゃんがこいつだったことも、クロネちゃんがもう処女じゃないこともショック過ぎて何を悔しがればいいか分かんねえ!!」
ショックなのはこっちだ、何盗撮してんだよ。なに大映ししてんだよ。長髪の人もいんのに。
「一番イヤなのは、これがクロネちゃんだと思ったら、菊蛍との絡みがちょっと股間にクることなんだよ!!!」
知らねえよ馬鹿か。
くそ、手も足もうまく動かねえ。指先まで痺れてら。
が、よく考えたら喋る必要なかったな。
部屋のホロシステムに干渉して映像を乱れさせた。消すとなるとややこしい操作が必要になるが、信号の不干渉くらいなら簡単だ。
「ん? なんだてめえ、機械感応持ちか。しょっぺえなあ」
前髪を掴んで持ち上げられ、せせら笑われる。そりゃ宇宙の果てまで機器操作できるような奴と誰を比べたって劣るだろうさ。殆ど呪いの領域だよ。
噂によると、宇宙船の管制まるごと遮断できるらしい。同じ機械感応持ちから言わせてもらうと、ほぼ都市伝説級のありえない話。
「おい、どうやって菊蛍を誑かしたんだ、ええ」
『知るか、バカ!』
ホロシステムのスピーカー操作して怒鳴った。部屋中にわんわん俺の合成音声が響く。
『そんなん俺が知りたいわ、誑かしてみてえわ!』
ヤりたくたって、お誘い出来た試しない。していいのか分からない。烏滸がましいような、空気読めてない気がして出来ないんだよ!
「ははあ、気まぐれに遊んで貰ってるってことか」
『そうだよ。俺と蛍は何でも無い。離せ、ばか。痛い。禿げる!』
「お前さあ、映像見る限り、マグロだけど。ちゃんと菊蛍を満足させられてんのか?」
『 』
マグロ…だと……
そういえば俺、蛍に奉仕させてばっかだ。蛍にされるとふにゃふにゃで何も考えられなくなるってのはあるけど……
だから最近ご無沙汰だった? もともと受け専疑惑あるし。それに、俺が男の味覚えちゃったから仕方なく相手にしてくれてただけだし。成り行きって蛍も言ってたし。
「んひ!?」
ショックを受けてる間にハイドウィッカーが俺の耳の縁をベロっと舐めた。熱くて厚くて遠慮がなくて、触れ方も繊細な蛍とは全然違って違和感に震えた。
前髪掴んだまま腰抱き寄せて、耳の下あたりの首筋をじゅうっと吸われる。すげえ乱暴。痛い!
「もう、ほんっと……何に対して腹立つのか分かんねえくらいムカついてっから、男の悦ばせ方教えてやるよ」
『余計なお世話だ!』
「ちょっと黙ってろ」
あ!
マイクロチップ、切断された。脳に入ったマイクロチップは、皇族以上が協議して制御しなきゃ出来ないくらい高度なセキュリティが組まれてる。主に災害時の避難誘導の時とかに使われるんだ。
これがないと仮想次元に接続できずウィッカー能力も発動しない。ウィッカー能力って、仮想次元と脳波と意識体? とかいうのの謎の反応らしいから。
ウィッカーにとっては最強のマウントだ。こいつの機械感応、本当どうかしてるぞ。
押し倒されて耳を舌先でぐちゅぐちゅ犯された。神経集まってるとこだからジンジンして気持ちわるい。
「ひゃめぉ…」
耳の穴舐め回すな! 唾がっ唾が逆流してくる! 耳の奥気持ちわりぃ! ハァハァ言うなあ! ついでのように乳首揉むな! ちょ……っ
感じたくないのに、昔はこんなじゃなかったのに、ちょっと弄られただけで勃ってる。最近シてなかったしなあ。くそっ、情けねえ。誰でもいいのかよ、俺は……
「んゃ、ひゃめ…あっ、ひぁう」
「耳気持ちいいだろ? 耳と乳首だけでイカせてやんよ」
「ひゃらぁ…! ん、んぁ」
耳たぶを歯でやわく食んで、シャツに潜り込んだ指が乳首つまんで引っ張る。
「ふぁぁ……」
耳の裏側の付け根をぞろぉ…と舐めあげられると悲鳴みたいな声が漏れた。
「やら、やめぉ、ひゃめ…」
「何言ってるか分かんねえよ」
「ひゃっ、ああっ、ひんっ」
「はぁ…なんだこれ興奮してきた。クロネちゃん…クロネちゃん可愛いよ……」
こいつん中で俺と「クロネちゃん」が別口になってるらしい。菊蛍を奪った憎い俺と、三味線小僧のクロネちゃん。たぶん別口で知ったんだろうな。そのせいで一致しきれてないと。
「あっ、ひゃ…ら、ひゃめ、あぅ…!」
「イクか? ほれほれ」
「あー!!」
耳舐めしながらコリコリコリと乳首捏ねられて、イった。ふわっとした浮遊感があって……初めて蛍以外の奴にイかされた。
はーはー息しながら涙が出る。喪失感が半端じゃない。
なんでこれ蛍じゃないの、蛍どこ?
よっぽどショックだったのか、情けなく嗚咽を漏らしながら「ほたるぅ…」と名前を呼んだ。
「菊蛍は来ねえよ。宇宙ロマの安全と引き換えに返してやるって言ったからな。
ロマが海賊に襲われず宇宙で生きてけんのは、ウィッカプールとの連携あってこそだ。リアリストの菊蛍が条件呑むと思うか?」
ひっでぇ脅迫。そんなの菊蛍じゃなくたって呑まねえわ。俺一人のために何万人死ぬんだよ。下手したら何十万、何百万殺されたっておかしくねえ。
もし蛍が助けに来てくれたら、嬉しいよ。蛍の気持ちが嬉しい。でもな、助かったって海賊に殺されたロマの話を聞くたび死にたくなる。
だから俺は、蛍に助けを求めるのをやめた。
マイクロチップは作動しなくてウィッカー能力も使えない。手足も薬のせいで満足に動かない。なんにも抵抗できねえ。
弱いな、俺。悔しいな、畜生。
だがなあ、テメー、これで終わると思うなよ。
お前がどんなにすげえウィッカーでも、永遠に制御出来る訳はねえ。マイクロチップの破壊は不可能だ、超AIが別宇宙に旅立つ前に、そういう細工してくれた。人間が不当に人権を奪われないように、優しい彼らが守ってくれてるんだ。
人間に深い憎悪があるほど、超AIは愛を知る。皮肉なことに、人間が悪意に満ちているから彼らは愛を学ぶんだ。反面教師の究極版だな。
薬だってずっと効いてる訳じゃない。ヤク漬けエンドってのもなくはないが……たぶん、こいつはそのうち俺に三味線を弾かせたがる。生で聞く前に潰そうとはしないだろう。どうにか一矢報いてやる、絶対に。
「ん、ん」
シャツを開けられ、スラックスを下までずらした不安定な状態で転がされ、尻だけ高く上げさせられた。
「はぁ…菊蛍だけが知ってるクロネちゃんの……ココ。若いから綺麗な色してんな…はぁはぁ」
やめろぉ。はぁはぁ言いながら尻の穴舐めんなよぉ。気持ち悪ぃよぉ。舌尖らせてうりうりされんの、イヤ!
「うーっ、うううーっ!」
「はは、なんだ怒ってんのか? そんなに怒んなくても、すぐ悦くしてやんよ」
言ってねえし! 死ね、コスプレ野郎!
尻の割れ目の上から潤滑剤と思しき液体垂らされて、尻の間を伝う感覚に震えて耐える。袋の裏まで伝うのが、本当やだ!
「あー、いいアングルいいアングル。あ、フォルダ分けっか」
撮影してやがるぅうー! しかもフォルダ分けしてやがる! ほんっとこいつムカつくし下品だし最低だ!!
「さて、と」
「んっ」
ちゅぷんと指が一本差し入れられた。それ自体は痛くも痒くもないけど、
「ほれ、ここ前立腺」
「んぁあ! ひゃ…あー!!」
物凄く無遠慮にデリケートなとこグリグリ刺激してくる。
「で、ここ会陰部な」
「うあっ!?」
袋と穴の間くらいのところをきゅうっと押されて腰が跳ねる。
こっちの都合無視して悦がれば悦がるだけ調子に乗って弄ってくる。ぎゃあぎゃあ喚かされて三回くらいドライでイカされた。
この時点でぐったりしてたが、太いもんを擦り付けられてゾっとした。ここからヤル気かよ。
ていうか、犯されるのか。まあこの展開なら当たり前だけど……とうとうって言うか、やっぱ、嫌なもんは嫌だ。指はまだ許せるけど、チンコはやっぱ嫌だ。
「うぅ…ん」
ぐうーっと奥まで一気に押し込まれる。負担考えてくれよ、内臓圧迫するんだからよ。
こいつ、蛍にもこんなことしてんのか? 別の意味で腹立ってきた。労れよ! 挿れられるほうは大変なんだよ!
「はぁ、尻小せえな。腰もほっせぇし。ちゃんとメシ食ってるか?」
挿れたまんまケツひっぱたかれる。痛ぇよバカ。死ねバカ。
そんで、こいつ、あろうことかピストン運動始めやがった。
「ん…!? ひあ、あ…いー!!」
「オラオラ、どうだ」
アダルトムービーみたいにパンパン言わせながら腰叩きつけてくる。痛い、痛い! 内臓が引っ張られる!
それでも刺激されるもんは刺激されるから、痛いんだか悦いんだか分からない。
激しくすればイイとでも思ってんのか、ズコズコ出し入れしやがる。俺も蛍とのセックス知るまでは、こういうもんだと思ってた。でも、痛い。アダルト女優はこんな事されてあんあん悦がってたのか? 仕事で演技なのかもしれないけど、可哀想だ。
同時に、てめえ、よくも蛍に、という怒りが膨れ上がって、自分が犯されてることなんかどうでもよくなってきた。
ハイドウィッカーは興奮してんのか、マイクロチップの制御が途切れがちだ。狭間に何か出来る。
とにかく俺はこの馬鹿野郎にひとこと言ってやりたくて、スピーカーを探した。感知できるスピーカーというスピーカーを探した。
結果、
『この、ド下手くそ!』
ウィッカプールに存在するありとあらゆるスピーカーを内蔵した機器から大音量で罵声が発せられたという。
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