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この手の事件は、実はかなりある。
思いつめたファンが、リアルの人間に入れあげた挙げ句、彼らが理想と違う道を辿ったので、相手を呪う。
一般人にもウィッカーが一定数おり、中には強い力を持つ者もいた。
こうした事件が表面化するたび、オタク文化自体を規制する、またはリアルの人間の扱いをやめさせる運動が起きるが、彼らのおかげで業界が潤っているところもあり、また別の業界に比べれば些細な事件しか起きていない。
それに、熱狂的な信者故に害するという事件は、はるか古代、テラ時代からあったのだ。
三味線小僧の台頭によって、あり得るかもしれない程度の可能性で注意を払っていた志摩王子の手腕により、電脳ワーカー社員が呪いから保護された。
ただ、呪った者に関しては守りきれなかった。
「人を呪わば穴二つとは言うが……相手が悪かったとしか言いようがねえな」
婿から齎された末路の情報に、志摩王子は苦笑を禁じ得ない。
ただでさえ、あれはウィッカプールの一件で気が立っていた。ハイドウィッカー暗殺は、彼を収監した今もシヴァロマが苦悩するほど執拗なのだ。
囚人惑星には未だにあれの信奉者が多くいる。看守さえ味方につけて囚人兵時代を謳歌した男。皇軍警察では語り草になっている。
それが世に出て次々と有力者を籠絡し、ついには皇帝までも魅了した。
情報統制のために、表沙汰にはなっていない。知る者は知っている事実。彼らは好んで自らの口を噤む。他者に塞がれたがる者はいない。
ある者は彼を、ロマの王と呼んだ。
***
ロマ若とぉとい……
すっかり志摩王子が好きになった俺は、シヴァロマ皇子と志摩王子のラブロマンスを描いた創作に心奪われていた。正直、蛍黒より好きだ。
「小さいころ海賊にーってエピソード、たくさん出てくるけど」
「ああ、それ事実だから」
マジか。当時、俺は十歳くらいか? そんな大事件、覚えてそうなもんだけどな。まあニュースなんて見るような殊勝なガキではなかったが。
「シヴァロマ殿下に助けられたって、ほんとか」
「そう! 十五歳の婿どの、カッコよかった! 身の丈ほどあるゴツい携行砲担いで、猛獣も海賊もセキュリティもバーン!! ついでに牢も足でドカーン!」
皇族こえぇ……人間じゃない。
「それが馴れ初めで結婚か?」
「や、婿どのは婚約するまで俺のこと忘れてた。俺はずっと憧れてたが。婚約は偶然。創作ではその事件で約束したから結婚、みたいな話多いけど、でも運命的だろ! 俺と婿どの!」
「うんうん」
ここで強姦されたことへのトラウマ話にならないところが、俺と志摩王子らしいというか何というか。それにしたって怖かったと思うんだけどな、海賊にかわるがわるって……
チンコ噛みちぎって回ったって、どんだけ顎強いんだよ。皇族もすごいけど、王族も凄いな? 血のなせる業なのか。
「蛍って、王族の私生児なんだよな。どこの出身か、志摩王子は知ってる?」
「あー、んー」
志摩王子が言いよどんだ。
「そこはなー、最大のトラウマスポットだろうから、俺の口からはちょっとな」
「知らないで地雷踏み抜きたくない」
「お前が知らんふりできるタマか」
それもそうかあ。正直、知りたくはない。蛍も俺に教えたいとは思わないだろうし。でも、知らないでヘマするのも嫌なんだよなあ。
「そういやチャットーキーのログ溜まったな。編集してトーク番組にでも流すか?」
「へ」
「お前の性格が世間に知られてないから変な創作されるんだろ。音声のカット編集はウチのがやるし、アバターや番組は電脳ワーカーがうまくやってくれる。志摩の王子と三味線小僧のトーク番組、俺にも旨味あるから」
正気かよ。
でも、志摩王子経由で社長に話いったら、即ゴーサイン出た。だらだら喋ってた内容の面白いとこ、問題ないとこピックアップするだけなんで、俺は特にすることもなく。
「途中から志摩王子にタメ口きいてるけど大丈夫なのか?」
「それくらい仲いいってことじゃんさあ! なんだよクロート、いつの間に王子とこんなに仲良くなっちゃったんだよお!」
社長に肘でうりうりされながら、ぽわわっとなる。
こういうのって、友達かな。いや、烏滸がましいかな。身分違いも甚だしいよな。志摩王子には親友のクラミツ様とかいるしなあ。
電脳ワーカーに入って、そろそろ一年になる。
にも関わらず、相変わらずろくに溶け込めてない俺。
食堂でもそもそメシ食ってる時に噂話が聞こえてきた。
「そろそろ、アレの時期かあ」
「俺らには関係ないけどな」
アレってなんだろう。
最近変わったことといえば、戦闘訓練が一時休止になったことと、三味線レッスンも同時に休止になったことくらいか? 変だとは思ったけど。
あ、そういや。
合成肉を口に運ぶ箸が止まる。
俺が移民船から救出されたのって、今の時期じゃないか?
「おいサノ。サノ。鮫顔」
食堂から出てくところの鮫顔を呼び止める。舌打ちされた。
「っんだよ! さんを付けろや猫助野郎!」
「もしかして移民船奪取行く?」
「おん。お前も指令下ったか? 初陣じゃねーの」
鮫顔とは仲良くもないが、ライブハウスのデザインの件で丁寧に礼を言ってから、喧嘩腰にならず会話が成立するようになった。
俺はその場で社長にトーキーを繋ぐ。
「社長。移民船奪取、俺も行きたい」
「えっ」
なんだよその「え」って。
「志願は駄目か」
「駄目じゃないけど、まず君のモンペに許可貰ってきてくれない?」
「もんぺ……?」
「蛍さんですよ」
「なんで社長の許可じゃ駄目なんだ。あんたが一番えらいんだろ」
「この船で一番怒ったら怖い人は誰?」
「……蛍」
「分かったら行ってきなさい」
つっても、蛍どこ居んだ? 未だにあいつの生活範囲わからん。営業職で芸人といっても、航行中は別の仕事してるはずだよなあ。蛍がプロジェクトに参加した試しもないし。他の重鎮も何してんのか知らないけど。
仕方ないからトーキーで呼び出す。
「蛍、移民船の奪取、俺も参加したいんだけど、社長が蛍の許可とれって」
「……………悩みどころである」
「なんで?」
「実戦経験を積むには手堅いところではある。ただ、一年の戦闘訓練では正直足手まといだ」
「面倒見てもらう立場で言うのもなんだが、誰でも最初はそうじゃないのか?」
「相変わらず潔いことだ。おいで」
宇宙船の座標位置が送信されてきた。行ったことない区画だなあ。そんなに広い訳でもないんだが、なんだかんだ数十人が生活してる規模だし。
指定された部屋の前に立つと、エア音を発して扉がスライドする。中は無数のホロパネルが浮かぶ、典型的なデータ監視施設だった。リクライニングチェアの上にファイバースーツのみの蛍が、経頭装置の下で作業してた。
「あんた普段なにしてんのかと思ったけど、ファンド?」
「データリンクルームは、別に投資専門ではないぞ。傘下のロマ及び、各星系の主要な動きを見て、場合によっては指示を出す」
「………もしかして、ハイドウィッカーがいたら楽になるたぐいの仕事?」
蛍は少し眉を寄せて、俺を責めるように見た。俺はあいつのこと何とも思ってないけど、蛍は俺があいつの話するの嫌みたいだ。
「俺が手伝えればいいけど。同じ機械感応でも俺のはポンコツだ」
「本当にそう思っているなら、ずいぶん時間を浪費しているな」
蛍らしからぬ厳しい言葉に俺はうっと詰まった。
「ごめん。まだ、各種機器のデータ集めるので手一杯だ。知識の理解まで及んでない。現代工学複雑すぎて、俺の頭じゃ追いつかない」
「そこから始めているのか……それは一朝一夕でどうにかなる問題ではないよ。先に自身の能力を把握したほうがよい」
よくわかんないんだ、ウィッカー能力って。ちゃんとした訓練も受けてねえし。
志摩王子に聞いたけど、それこそ一朝一夕で教えられるもんじゃないから、志摩に何年か来いって言われてる。今はまだやることが一杯あって、途中で投げ出したくない。
「仕事や戦闘訓練と、ウィッカー能力の訓練。どっち優先させたほうがいいか、わかんないんだ」
「志摩に行けば、志摩宙軍でのウィッカー能力を利用した訓練も受けられる。また、お前の安全も保証されるので、俺としても安心である」
今離れたら、蛍の気持ちも離れそうで怖い……なんて言ってられねえよな。蛍を守れるようになりたいって決めたし。
「ただ、志摩王子は中央政府を突貫工事で整備しているところだ。彼がヤマト王をとるのも、この数年となる」
「じゃあ、俺、邪魔じゃん」
「志摩王子じきじきに指導賜る訳ではなかろう。確かに悩ましい。悩ましいことばかりである。早くに習得させたいところでもあり、情勢が不安定であり……」
「他に不安定なことってのは?」
「ウィッカプールの均衡が崩れた。あの馬鹿者のせいでな。おかげで皇軍警察のシヴァロマ皇子が忙しく、愛妻にも会えないので苛ついておられる。彼の不機嫌は規制の厳しさに直結する」
宇宙の規制、志摩王子次第かよ。すっげーな。
そういえば志摩王子が婿どのの機嫌が下降中で大変、とかぼやいてたかも。俺、けっこう重要な話聞いたりしてるんだろうな、気付いてないだけで。
「それと、移民船の奪取が続いた為にヤマト政府が警戒する動きを見せている。次は前回のより厳しい条件になるだろう。それもあってお前を連れてゆきたくない」
「ヤマト政府って、今は薩摩なんだよな。薩摩が拉致同然にロマを攫ってんのか」
「薩摩、というより各自治惑星だ。薩摩は黙認して上前をはねている形である」
「そんなの許せない、早く志摩王子にヤマト王になってほしい」
「我々もそう願っている」
少し疲れた顔で、蛍が微笑む。それから、俺の腕を引っ張って抱き寄せ、向かいわせで膝の上に乗せた。
「電脳ワーカーはヤマト星系のロマ、および各星系のロマと連携をとりながら、ロマの地位向上の為に戦う組織である」
「そうなのか」
「出所し、鷹鶴と出会い、そういう理念で創設した。大した資材も十分な技術者もなく開拓惑星に送り込み、星に眠ったナノ結晶ダイヤモンドなどの資源を掘らせ、それが済めば後は知らんふり……そうして死んでいったロマは、過去数えきれん。
こんな前時代的な惨いことが、今も当たり前に行われている。お前もそうなるところだった……もっと酷かったかもしれんな、奴らはお前を性奴にするつもりだった。己らと移民たちのはけ口として」
物凄い危ないとこだったんか。今更ながらに背筋が冷えた。
俺、ほんとに、蛍に助けられたんだな。命も、心も。
「でも、そういうの知らない社員がほとんどだよな。なんで話さないんだ?」
「我々はPMC(民間軍事会社)でもテロ組織でもない。あくまでベンチャー企業の体裁を保たねばならん。戦闘員は、自衛のための人員でなくてはならん。ゆえに少数精鋭である。
お前は良い兵になる、だが、焦らなくてよい。十年も二十年もかかってよい。だからどうか、功を急いて、つまらないことで命を落とすな。条件づけを強行したのも、そのためである」
蛍は俺の頬を撫で、口づけをした。
「ん……」
舌が絡むと、それこそ条件反射のようにとろんとしてくる。蛍とのキスは気持ちよくて、それ以上に満たされる。愛されてるような錯覚を味わえる。
「この頃は忙しく、さすがに疲れた。癒やしてはくれまいか」
「どうしたらいい? 何をしてほしいんだ」
「いつものように。そのままのお前が可愛い」
いつもどおりって、逆になんだよ。なんかしたっけ?
「今日の蛍、ほんとに疲れてておかしくなってる。弱音も吐くし、こんなに沢山話すのも」
「そうだな。お前に話すには、少々早かったかもしれん」
「蛍ってさ、溜まることないの」
「ん…んん?」
「口でしてあげようか。下手かもだけど」
「………」
蛍はきょとんとしていた。それから、軽やかな笑い声を上げる。
「では、お願いしようか」
なんか本当に珍しいな。憔悴して。いつもの優雅さがない。でも、こんな蛍も人間ぽくて好きだな。
ファイバースーツの前を寛げてモノを取り出し、手で支えながら裏筋に舌を這わせる。
「ん……」
蛍がちょっと感じたような声を聞かせてくれて、嬉しくなる。つうーと舐めあげたり、先端をちゅくちゅくしゃぶったり、鈴口に舌先を差し込んだり。
「……はぁ。何処で覚えたのやら」
勉強した。仮想次元で。
蛍は、あんまり俺にフェラはしない。手コキとか道具を使った尿道攻めはするけど。チンコ含むの嫌いなんじゃねえかなと思う。
志摩王子、トラウマないように見えて未だに棒状のものを口元に持ってこられると噛みちぎるそうだから。
俺さ、思うんだよな。
王族の私生児として育てられたって。それさ、御稚児さんだったんじゃねえかなって。幸せに育てられたんじゃない気がする。志摩王子の口ぶりからしても。
主導権握りたいのは、怖いからじゃないかって。ハイドウィッカーに完全マウント取られた時、俺もやっぱ嫌だったもん。
でも、少なくとも俺には警戒しなくて、怖がらなくていいって主張したい。
口いっぱいに含んで先走りまでじゅーっとすする。たとえ蛍のでも変な味するなあ。そりゃそうか。蛍のなら、果汁みたいな味すんじゃないかって思ってた。
「クロネ。もうよい」
止められて、チンコ握ったまま不服の目を向けた。なんで? 下手だった? 初めてだったから。
そしたらぐいっと引き上げられて、リクライニングチェアに押し付けられた。
「これ以上されては出てしまう。お前を抱きたい……」
ほっぺたをちゅ、ちゅ、と吸いながら、蛍の手がインナーになってるファイバースーツを脱がせてく。喉元から下半身まで黒のスーツが開いて白い肌が覗くの、我ながら卑猥。
「下だけ脱ぐんでもよかったんじゃねえの」
「肌が見たい。感じていたい。俺も脱ぎたいが、二人とも全裸になるのは不用心である」
俺だって蛍の素肌に触れたいけどな。ここじゃ仕方ないか。なにしろ今は、蛍の「癒やしタイム」だし。
蛍は胸にある、普通は弾薬入れるようなポケットからペンのようなものを取り出した。それをアソコに当てて、底を押す。
「ん、ん」
潤滑剤入ってく感触にリクライニングチェアの肘掛けに乗せられた足がピクピクする。
「こんなもんいつも持ってんの」
「何があるか分からんからな」
「誰に使うんだ」
「……大体は、自分に」
蛍の長いまつげが伏せられ、自嘲気味の笑みが浮かぶ。いかん、地雷踏んだ。
もうそろそろ分かってきたけど、蛍は別に枕したい訳じゃない。ハイドウィッカーみたいなド下手くそもいるし。
本当はやめてほしいと思う、でも、それで大きな大きな恩恵があるのもわかってる。皇帝動かせるんだもん。
俺がお願い出来ることでもないしな。恋人でも、なんでもない。それは変わってない。
蛍が少しは俺のこと特別に思ってくれてるのかなって、思えるようになってきた。でも、愛を囁くとか、そういうのはなくて、可愛いと言うだけ。
俺も言えない。好きとか、言った瞬間に終わる気がする。
俺たちの関係は微妙な均衡の上に成り立ってる。突けば溢れる砂の城みたいに。
「ふぁ…ん」
この一年でずいぶん受け入れやすくなったアナルに、無理なく挿入ってくる。蛍の形になってんだろうな。蛍専用でいたい。
「あ、はぁ、う、…ああ、きもち、ほたるぅ」
膝裏を持ってあやすように揺すられるだけで、ナカの質量が快楽を生む。椅子の上でって、初めてか。繋がってるとこ丸見え。すげえ広がるもんだな……驚いた。蛍のぶっといの美味そうに頬張ってる。
「あっおく…おくきもち、い……あ、ん」
揺れて円を描いて、毎度のことながら絶妙。
ふと、濡れた目で蛍の顔を見た。
「ん?」
いつもみたいに優しい顔で微笑む蛍。綺麗な蛍。
一生懸命手を伸ばして、首を寄せた。
「ん…ん、んんん…っ」
キスをしながら腰振って、二人で緩やかな絶頂を迎えた。
「はぁ…ゴムしてた?」
「した」
「注いでほしかった……」
「後が面倒であろうが」
そうだけども。
孕めたらよかったのにな。女に生まれりゃ、なんて思ったこともないけど、蛍の子ならほしい。可愛い子なんだろうな。出来るもんなら一生懸命育てんのに。
一年前なら絶対考えなかった。そういや普通に彼女作って結婚するって漠然と信じてた、あの頃は。
もう、後戻りできる道はどこにもない。
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