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「いつか、貴方を盗みに参りますよ」
それはヤマトの星の奥に隠された至宝。不当に閉じ込められた尊く美しい少年。儚げに微笑みながら、長い睫毛を伏せる。
「気を長くして待つよ」
貴方にはもう、私の助けなど必要ないが。
約束を果たしに参りますよ、愛しい人。
***
かつてテラで、常に最先端の流行を取り入れ、その後は萌文化の聖地と呼ばれた秋葉原。
今はその名を冠した惑星がある。原の字はとれて、秋葉星となっているが。
その星には萌文化専門超大型ロングテールがいくつもある。多様なジャンル、趣味嗜好に合わせたショッピングモールがうんじゃか立ち並ぶ。関連企業もわんさか。
そしてひっきりなしに、様々な種類のコミックフェスティバルが開催されて、各星系から同志が集う。
本日は皇王族系のイベント。当然、俺と蛍の本は出ないが、ロマ若が買えるし、何より……無理やり連れて来られたんで。
メンバーを紹介する。
志摩王子。発起人。
シヴァロマ皇子。志摩王子の付き添い。
俺。無理やり連れて来られた。
菊蛍。なぜかついて来た。
葛王子。志摩王子に行きたいと駄々をこねた。
デオルカン皇子。葛王子の付き添いで来た。
圧倒的皇王族率…! なんてロイヤルストレートフラッシュ。蛍も準王族みたいなもんだし、俺だけ場違い感が酷い。
当然のことながら、皇軍警察の警備が出動。皇宙軍が制宙権確立のため、惑星の外を厳しく取り締まっている。
イベント一般入場前にお邪魔して購入する手筈になってる。これは参加者が拒めば購入できない事になってるけど、この面子見て拒否できる一般人がいるか!
「本日、ビッグゲストが遊びにいらしてます! 志摩王子殿下、コメントお願いいたします!」
「みんな、いつもロマ若描いてくれてありがとーなー。志摩は萌文化を応援してるぞ」
直立不動のシヴァロマ皇子を背景にして、志摩皇子が仮想カメラに手を振ってる。
「少し前にデオルカン皇子殿下と入籍された葛王子殿下もいらしてます。殿下のお好みをお聞きしてもよろしいですか?」
「蛍黒……でも今日は、婿さまの本見に来た」
婿さまの軍用マントに巻かれるようにしてしがみついて、インタビューに答える葛王子。かわいい。
「オトは、身体が小さいので、初夜がまだです。オトと婿さまの本描いてくれる人募集です!」
「可愛らしいですねー。ご覧の皆さん、リクエスト入りましたよ! 腕のみせどころですね。
そして、クロネさん、こんにちは!」
「あ、えと……こんにちは?」
「お身体が誘拐されて人形操作でいらしているとか……ご無事ですか?」
「今のところは。出来るだけメディアに出て自分の安全を確保しています。今回のもその一環です」
「無事に帰ってきてくださることを祈っております。今回のお目当てを聞いてもよろしいですか?」
「ロマ若のファンなので、好きな作家さんの新刊を」
蛍。俺が話してる間、にこにこしながら俺の頭撫でるのやめてくれ。こういうの、あんたの愛人に見せつけていいのか?
「電脳ワーカーの菊蛍さんですね」
「うん」
「伝統的なヤマト芸の達人でいらっしゃるとか。きれいな方で驚きました!」
「ふふ、ありがとう」
「本日はクロネさんの付き添いで?」
「うん。この子はいま、出来る限りメディアに露出せねばならんからな。実のところ、気が気ではない。せっかくの祭事に暗い話を持ち出してすまないが……」
「いいえ! クロネさんが無事に帰って来られるよう、我々も協力を惜しみませんから!」
会場前で取り囲まれ、激写されながらのインタビューが終わった。飛行船からの撮影もあるが、あれ……個人か。すげえな。テロ対策とかで規制されてそうなのに。
会場は前衛的な建物で、城よりでかい。大量のホールに分かれてて、トラベレーターに乗ってく。こういうのなんていうか知ってるよ、ロンダルキアだろ? 乗るとこ間違えると別のホールに出るんだ。
ホールの中は緊張に包まれていた。そりゃあな。ニブルの双子皇子、それも皇軍警察の一番えらい人の前で、その人を題材にした萌本売るなんて怖すぎるにも程がある。
言っても、シヴァロマ皇子は完全に仕事モード。ここが何処であるかなんて、興味もないんだろう。強いて言えば、彼の興味は志摩王子にしかない。
「お? おお、見ろ、兄よ。俺と貴様がまぐわっとるわ」
「俺には見えぬな」
「俺も貴様の尻には興味がねえな」
ニブル双子推しの皆さん、本人らに否定されて可哀想……でもこれがリアルの人間を題材にするところの辛さだな。
俺は仮想次元に広げたパンフレット見て、目当てのスペース探してたんだが……
蛍が立ち止まって袖で口元を覆い、しげしげと何かを見るので覗き込んだら。
んあっ、蛍黒。
変だな! 今日は皇王族イベントだよな。でも、メインに皇王族本置けば、他を置いちゃ駄目ってことはないらしい……
もしかして。
俺はとあるスペースに行った。蛍もついてくる。
あった。一番好きな蛍黒の作家さん……!
けど蛍の前で? 本人がこれ買うのか? で、でも新刊ほしい……! 前後編の後編なんだ。待ってたんだ。
「え、えとぉ……これ、ください」
「ハ、ハイ」
向こうも緊張してる。
「あの、俺が言うのもへん……だけど、ほ、蛍をきれいに描いてくれてありがとうござ、います。貴方の蛍が一番好きです」
「ハイ…ハイ…アリガトウ…アリガトウ……」
壊れかけのロボットみたいになっちゃったよ。
デジットの会計済ませるうちに、蛍が既刊を手に取ってた。
萌本を立ち読み姿さえ絵になるな蛍! 長いまつげを伏せながら、僅かに微笑んで優雅に頁を捲る。
「こういう俺が好みか、クロネ?」
「へぅ」
「帰ったら言ってやろうか」
「…………」
懸命に首を振った。今、俺の生身のほう、真っ赤になってると思う。熱いもん。
周囲から声にならない悲鳴が上がってる。あー。あー!!
もういこう、俺はロマ若を買いにきたんだ!
「クロネちゃん、がんばって!」
「無事を祈ってますー!」
足早に去る俺の背に、そんな言葉がかけられる。
ああ。あんなスキャンダルいっぱいあって、エロコラ流されまくって、エロムービー流出したのに、みんな優しいなあ。陰口叩かれるのには慣れてるけど、優しい言葉には慣れない。
志摩王子のほうは、さくさく買い物済ませて、買ったとこの作家さんと握手してる。悲鳴というか奇声が上がりまくってた。
俺たちは好意で先に購入させてもらった邪魔者に過ぎないんで、買ったら即撤収。その後は、購入物のインタビューされた。これって最高の宣伝だし、名誉だろうな。本人が気に入ってオススメしてくるんだもん。一生の思い出どころの話じゃない。
意外にいわゆる「壁サー」とかじゃないんだよ。女の子の好みと違うんだろうな。
「あ、クロネさんもご自身の御本買われたんですね!」
目敏く見つけられて心の中でギャッ。なんにも言えないでいると、蛍がその本持って、
「こういう俺が好みらしい。かわゆいだろう?」
なんであんたが自慢してんだよ。ひたすら俯いてやり過ごした。
「クロ、見ろ! 早速俺とお前が絡んでる本も出てたぞ! あっはっは!」
「何買ってんだよ……しかも俺が受け側なのか」
「俺はこう見えても攻率高い。どやぁ」
なんで嬉しそうなんだ、メディアの前で俺とあんたのいかがわしい本掲げて。
俺たちにとってはそんなの「いろんな趣味の人がいるなあ」程度の感覚なんだけど、なぜかその本を見て蛍が拗ねた。
「クロネは俺のだろう」
はいそうですね。そうですけど。あんたがそんなやきもち妬いてくれたら、舞い上がっちゃうだろうが!
自分の身体が何処にあるかも分からん、生死のかかった状態なのに、のんきだな。我ながら。
人形を操作して動くのは、けっこう疲れる。
宇宙船(双子皇子のヨルムンガンドで来た)のリクライニンググルームで本を読みながら、蛍に凭れかかってうとうとしていた。人形の姿でも、脳を休ませなきゃいけないんで、眠る。眠っても身体に意識体が戻ったりしないんで大丈夫。
ずっと不安はある。
でも、蛍や志摩王子がいてくれるから……
「……?」
閉じかけたリーフシャッターを開ける。こっちの目を開けたって仕方ないが、反射的にだ。
「どうした、クロネ」
「誰かが俺の身体を触ってる。なんか変な触り方……あっ」
「クロネ!」
蛍は俺を抱え、個室に連れ込んだ。ベッドに下ろされて顔を覗き込まれる。
「ぞわぞわ、する……撫で回されてる」
「危害を加える様子は?」
「そんなの分かんないよ。意識をあっちに戻さないと」
「少し待て、薩摩に連絡する」
たぶん、この感じだと犯されるんだろうなあ……肌が外気に触れる感覚がする、服を脱がされたんだ。
でも、そうじゃない可能性だってある。訳の分からない薬打たれたり、人体実験されたりする予兆かもしれない。だから蛍は焦ってるんだ。
「俺だ。いずれそちらへ赴く旨は伝えたはずだが。なぜ人質に手出しした―――アジャラ殿下? アジャラ殿下がいらしているのか」
オープンで会話している。おそらくは、皇軍警察にハッキングさせるため。誰と話してるかは分からないけど。
首筋が舐められてるのか? ぬめった感触……
「クロネ。お前の身体に触れているのはアジャラ殿下だそうだ。なぜ彼がお前に興味を示したか、薩摩にも分からないと。突然に来て、止めたが聞かなかったと。アジャラ皇子相手では、王族ではどうしようもない。
ひとまず危害を加えないことだけは約束してもらったそうだ。だが……っ」
強姦は止められないらしい。なんだか力が抜けた。諦めが入ったせいだ。とりあえず拷問とかじゃなくてよかったよ。痛いのも嫌だが、蛍が過呼吸で済みそうにないからな。
「アジャラ皇子は……志摩王子に袖にされている。お前は志摩王子に似ているから」
「ナナセ姫にも言われたけど、似てるか? 志摩王子は明るい性格で、俺はこの通りだし、顔も志摩王子は切れ長の目で、俺は猫目だ」
「よく似ている。双子ほどではないが、兄弟ほどには似ている。それに瞳の奥に灯る闘志と、雰囲気がな。これは言うまいと思っていたが、お前の父親は志摩の縁者だ。志摩王子とお前は、親戚なのだ」
俺の父親、調べたのか。俺は知ろうとも思わなかったけど。たぶん末端王族なんだろうな。
「……っ」
何をされているか、蛍に気取られたくないが、フィードバックされてくる感覚でどうしても表情が動く。
下半身を撫でられてる。優しい、愛おしむような手つきだ。感触だけが伝わってくるって、変な感覚すぎる。もっと乱暴にしてくれればいいのに、几帳面なほど丁寧な愛撫だ。
「ここを触られているのか?」
「あやっ、ほ、蛍までさわっ」
袴に手を入れてモノを握られた。うええ、上下に扱かれる感触と、蛍の指が絡む感触が同時にする。
「他の男に触れられるのは、正直我慢ならん。だが、此処からではどうしようもない。だからせめて、上書きしろ」
いつになく蛍が余裕のない顔で俺の、人形の服を脱がす。唇を重ねて舌を絡めながら指は繊細に性器を弄ぶ。二人分の愛撫とキスの心地よさに、生身のほうが過剰反応してる感覚があった。
「やっ、やめ…そんなにし、ぅ、う」
きゅうと蛍の腕に爪を立てる。このままイカされるかと思ったが、蛍の指は前から回ってアナルに触れた。アジャラ皇子はまだ性器を弄ってるから、なんかもう……四本の手が乳首だの性器だのアナルだのに触れてて、これ何プレイって言うの。普通なら3Pなんだろうが、同じ場所に重なって触れてくるんだぞ。
「はぁっ…ぅん、うう」
「クロネ、俺だけを感じろ」
耳たぶの側で唇を触れさせながら囁くのにぞわぞわした。人形の耳センサー、けっこう強め。
アジャラ皇子のほうも何か塗ってアナルを弄り始めた。同時に入り口を解され始めて訳が分からん。蛍は焦ってるみたいで、俺を押し倒してすぐに挿入した。
「んぁっ」
「クロネ…クロネ……」
犯されてる当事者の俺より滅入ってる蛍を抱きしめてやった。
「あっ…そんなに、んっ、怒ってるなら…あ、あっ、資金凍結でも、なんでも、すればっ」
「お前の命を握られている状態で出来るか……! あの皇子は子供っぽい分、何をしでかすかわからん!」
「やあっあ…! 強くしな…ひぃ、んっ!!」
蛍らしくもなく、乱暴に攻め立てられて喘ぐ。
人形のほうには苦痛が備わってないんでいいが、
「ぐっ、う!」
生身のほうは……てかアジャラ皇子のデカ! デケェ! そりゃあの体格だもんなあ! 大して馴らしもせず突っ込んでくれたな。たぶんちょっと裂けた。
「ううぁぅっ、ぐ! あっぎ…うう、ううう!!」
蛍にガンガン突かれながら巨根が押し入ってくるもんで、もう訳わからん。
ただ、幸か不幸かアジャラ皇子はハイドウィッカーほど下手くそじゃなかった。自分の巨根で暴れまくったら相手を傷つけることも、ピストンは悦くないことも分かってるみたいだった。ただ、その腰使いはそこそこ荒い。めちゃめちゃに腰揺すってる。
で、蛍がまた強引なんだ。
「やめぇええ……こわっこわれちゃ、あっああ、あぅあ」
人形と生身をそれぞれ別の人間に別の動きで犯されまくってる。イくにもイけない、イッてんのかもしれないけど、それどこじゃない。快楽は快楽だけど、最早そう呼びたくないような刺激と衝撃の連続。
「あっあー!! ほた、ほたるとまって、ほたるぅううう!! むり、むりだか…うぁあああー!!」
ほんとに、ほんとに頭おかしくなる。イカれる!
ぶつん、と意識が途絶えてそのまま。
気がついたら生身のほうに意識体が戻ってた。
「……?」
ぼや、と目を開けた先にいるのが蛍じゃなくて、野生児っぽい荒削りな美形の大柄な男。メディアで見たことのある、アジャラ皇子の顔だった。
「ははっ、起きたのか」
子供みたいに目をきらきら輝かせて、嬉しそうに笑う。
「やっぱり反応あるほうがいいなあ!」
「ぎゃっ! 待って待って動かさないで!」
巨根入れたまま抱き上げようとするんで、必死で抵抗した。
「この際、お相手はするんでいったん抜いて、治療させて! 殿下のデカすぎて、このままヤったら痛すぎる」
「そっかあ?」
くり、と首を傾げて、アジャラ皇子は指示に従ってくれた。
「ゆっくり、ゆっくりお願いします!」
「こうか」
「くっ……!」
裂けた痛みに耐えながら、とりあえず引き抜いた。いろんな意味でぜぇぜぇ息しながら、ぐったり倒れる。
「大丈夫かあ」
「い…医者……」
そう言うと、本当、素直にアジャラ皇子は医者を呼んでくれて、医療ポッドで治療を受けられた。
数時間後、やっとポッドから出たけどまだ疲労困憊の俺に向かって、
「じゃ、続きしよっか!」
無邪気な笑顔で言われた時は、青ざめた。
「なんで俺? 殿下ならわざわざ俺じゃなくても、他に良い人がいるのでは」
「お前が一番、タカラに似てるんだよ! タカラのことはもうどうしようもない、手を出したらシヴァロマが皇軍警察引き連れてくるからな」
「似てるってだけなら、もっと似てる人も他にいるんじゃ……」
「顔だけならな。でも、こんな目をしたやつは他にいない」
大きな手で頬を包まれて、覗き込まれた。確かに志摩王子は、底光りするような強い目をしている。撤退もするけど最終的には絶対勝ってみせるような意志を感じる目だ。
そういや俺も、喧嘩は相手が泣くまでぶん殴る、が身上だった。そこが似てるっちゃ似てるのか?
「俺は薩摩と志摩の王位争いで誘拐されたと思うんですけど……アジャラ皇子は志摩王子と敵対してるんですか」
「いや? ヤマト王なんか誰がなっても俺には関係ない。実家に力があるに越したことはないけど、そんなのどうにでもなるしな。三味線小僧のクロネは前から狙ってた。手に入ってラッキーだ」
あんたのじゃないと思う……いろんな意味で。
薩摩にとって俺は貴重なカードだろうし、アジャラに奪われたら困るだろう。
そこで、俺は一計を案じた。
「ここじゃ嫌です」
「ん?」
「俺、アジャラ皇子のお宮がいいです。皇星の」
「そっかあ!」
ぱーっと眩しく笑って俺を抱き上げる。なんか憎めない人だな、おい。
「俺の船ならいいだろ? 皇星まで待てん」
頬にキスされながら頷いた。もうこの際、この皇子を利用して薩摩から出るしかない。俺の能力のこと、把握してないみたいだしな。ここじゃ仮想次元に接続できないし、せめて……!
そういえば、丸裸だけど、チョーカー。
喉元に手をやったら、なにもない。
「あの首輪なら捨てたぞ。お前はもう俺のなんだから、他の男の物をつけるな」
そんな……
そりゃ強請ればまた貰えるかもしれないけど、始めて蛍に貰ったそれっぽい物だったのに。服とかも買ってもらったけど、やっぱりあのチョーカーは特別だったんだ。俺だけのものだったんだ。蛍と俺を繋ぐよすがだったのに。
でも、アジャラ皇子を詰って機嫌を損ねたくない。
俺がここにさえいなければ、蛍は薩摩に来なくていいんだ。虐殺されずに済むしな。
この皇子は子供っぽいかもしれんが、酷い人ではなさそうだ。少なくともこっちが従順なうちは。
運ばれながら泣きたくなった。
こんなの本当はしたくない。蛍もこうやって生き延びてきたのかなと思ったら堪らなくなった。
薩摩の年老いた現ヤマト王と薩摩王子が複雑な表情で俺とアジャラ皇子を見送った。たぶん、こいつらが蛍の父親と兄貴で……蛍を虐めてた奴ら。
せっかく手に入れた交渉材料を指くわえて逃すのを、せめて舌出して馬鹿にしてやった。
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