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皇星ニブル宮崩壊に次ぎ、皇星全体のセキュリティが破壊され、視界ジャックも行われた。
しかし、奇跡的に負傷者が数名出ただけで、これだけの大規模テロにも関わらず、死者は出なかった。
さらに皇星視界ジャック事件直後、
『―――全星系のロマに告ぐ。不当に虐げられるロマよ、立ち上がれ。我々ロマの解放軍は貴君らを歓迎する。現状に甘んじる時代は終わった。自身の権利を勝ち取るのだ』
このようなプロパガンダが全宇宙のスピーカーというスピーカーをジャックして放送された。
この放送を受けてロマの解放軍を自称する、戸籍追放された海賊の略奪が激増。
宇宙史上、異例の事態であり、皇軍警察への不審も高まっている。
***
魘されて三日。
起きたら皇星での脱出劇はテロ扱いになっていた。俺の仕業とはシヴァロマ皇子が隠蔽してくれたが。おかげで犯人は発見ならずで、皇軍警察が批難を浴びることになった。
「もとはといえばお前を救出できなかった我々の責任だ。ヤマト宮で起きることは宇宙政府内部及び皇帝陛下には報告済のこと。アジャラは陛下に謁見し、お叱りを受けたのだ」
「……お叱りの時点で俺は開放されないものなんですか」
「招待客と言い張れば、皇帝とて皇子の権利を剥奪できるものではない」
とにかく、俺の誘拐を誘拐と立件出来なかったことが皇軍警察最大の失態なんだそうな。
そして、ロマの解放軍とかいうよくわからんプロパガンダが、俺の能力を通して行われた。意識体分散させるとあそこまで拡散するのな。自分では、絶対無理! 自我崩壊するような危ないことだったって。
あのシールを貼りつけた医師は、行方不明。本来の医師は船倉で転がされてたって。船の認証システムは動いてて問題ないのに入り込んできた……ってことは、船内に「直接」潜入してきたってことなので、これもブリンカーの仕業だろうと。
あんなのがいたら、なんでもやり放題じゃないか……なんだ、あいつ。
俺の能力をどう使えばいいかを熟知していたのも、気味悪い。これから薩摩の能力研究機関を大捜査だってさ。薩摩は暫定的にアジャラ皇子の母君が当主になることに。アジャラ皇子の母君、蛍のお姉さんなんだって。てことはアジャラ皇子は蛍の甥……非公式だけど。
「それより、まずいことになった。あのプロパガンダはロマのためなどではない、むしろロマの差別を煽る。
解放軍の名を騙る海賊が横行し、移民を攫ってテロリストに仕立て、最悪の時代がくる」
「止められないのか、あんな放送ひとつで!」
「海賊は本来、マフィアやウィッカプールと癒着状態にある。物資を奪っても、それを換金する場所がないからな。その代わり、マフィアやウィッカプール、今の時代ならハイドウィッカーの制御を受けていた。
海賊は撲滅できん存在ゆえ、必要悪だったのだ。奴らは放っておいてもロンダリング手段を確保する。ならば制御出来る受け口を作ったほうが好都合だったのだ。
現在、ハイドウィッカーの指示に従わない海賊が、暴れている。ブリンカーの手引きによるものであろう」
ブリンカーは奪った物資を有効活用する何らかの手段を持っていて、マフィアやウィッカプールの制御を嫌がった海賊がブリンカーに呼応したと。
「俺と鷹鶴の築き上げてきた、ロマへの信頼が崩れていく……」
十年くらい前まで、ロマは犯罪者、海賊ってイメージが強かった。
それを覆したのが菊蛍だった。王族さながら、王族以上の気品と、達者なヤマト芸で宇宙を魅了した。俺、なんでこの人のこと知らなかったんだろう……と思ったが、顔出しするロマの情報は、未成年者が見れないようセーフティかかってたんだって。ロマのメディアは面白いから、未成年が憧れたりしないように。
ゲームなどのコンテンツは製作者をロマと明かさない条件で販売を許されてた。
クロネちゃんの時は規制が緩くなってたけど(ほんの数年くらい前)、スキャンダル続いてまた規制強くなったそうな。
でも、今はクロネちゃん醜聞事件どころの話じゃない。
ロマと取引する星がなくなり、入港拒否する惑星すら増えて燃料や物資を補給できず、仮想次元の販売コンテンツからロマの品が消えた。
理解のある星や皇族が積極的にロマの商品を受け入れてくれたが、それでもロマは窮地に立たされた。
「とりあえず、志摩や葛で受け入れを開始したが、とても間に合わない。おまけにテロリストが混じってやがる。宇宙を渡るのも命がけだ。どうする、菊蛍」
志摩王子がロマの運命を蛍に委ねる。それが当たり前みたいに。
じっと見る俺に、蛍は微笑み、髪を撫でた。
「……監督中の開拓惑星がガリアにある。そちらにロマで完結した国を作ろうと思うよ。今のままでは何処もロマと取引してくれんからな」
「宇宙政府が許すのか……許すんだろうな。お前だもんな!」
「俺だからではない。皇族はきちんと状況を見てくださっている。ロマの地位向上も、彼らの協力あってこそだった。それほど根深いのだ、ロマと人々の確執は」
「……そんなにロマが酷い状態なんて、知らなかった」
ロマなのに。俺が俯くと、蛍にぎゅっと抱きしめられた。
「若い者が知らない、それは俺の努力が実ったということ。このような形で知られたくもなかった」
俺はちょうど、ロマの悪い噂が立ち消えてきた頃に育った世代だった。蛍が俺を慈しんだのも、そういう事情があったんだろう。蛍にとって俺は、努力の結果そのものだったんだ。
「よいか、クロネ。これから俺は非常に忙しくなる。お前はしっかりと休養をとり、栄養を摂取し、待機してくれ。忙しい時は不眠不休になる。その時に備えろ。他は鷹鶴の指示を聞け」
電脳ワーカーは鷹鶴社長のものだけど、ロマのあれこれは鷹鶴社長が蛍の補佐みたいだ。
蛍がデータリンクルームに引きこもってすぐ、鷹鶴社長が社員を全員、管制室に集めた。
「えー、皆さんにこれからぶっちゃけ話をいたします。我が社はフロント企業で、皆さんがやっていた仕事は全部、偽装工作です」
真面目に仕事していた社員たちが困惑顔でざわめく。流石に幹部は動揺しない。鮫顔も何か知ってたのかな。
「だからといって、お前たちの仕事が無駄だったわけじゃないよ。時がくればこの社をお前たちに託して、俺たちは引退するつもりだった。その時までの隠れ蓑だったんだ。
俺たちはロマを裏から援助するために資金や物資を集めていた。だが、ロマの互助組織は違法だ。ゆえに電脳ワーカーの売上として誤魔化してたって訳だな。
これはお前たちが知るべきことじゃなかった。知らずに犯罪の片棒担がされてた、で済む問題だったからな。でも、もうお前たちも知りませんじゃ済まない。
ロマはロマだけの国を作る。そこにしか居場所がなくなるからだ。今のうちに腹を括れ。宇宙政府のインフラである仮想次元への接続は許可制になる。実家と連絡とるなら今だけだ」
悲鳴のようなどよめきが覆う管制室を抜け出して、俺は久々の自室に籠もった。
まず連絡したのはカサヌイだ。
「おっさん。仮想次元の自己構築手段があるって言ってたよな。教えてくれ」
「それはウィッカーじゃなくて技術者の領域だな。ハイドウィッカーに相談してみな」
許してよかったハイドウィッカー。無駄に有能なのが腹立たしい。
「お前の意識体と同期して展開する限定仮想次元を構築してやんよ! つまり、既存の仮想次元に頼らず意識体さえ飛ばせばウィッカー能力を発動できるって寸法よ。俺凄くね? 天才じゃね?」
「便利じゃん。なんで今までなかったんだ」
「ふつーは必要ねえの! 人工物にゃどこも仮想次元あんだからよ。けど、圏外に行く奴には有効だろ。なあー、お前をヤマト宮から出す時も手伝ったし、そろそろ菊蛍も俺を許してくれるかな」
許さざるをえない状況だろうな。ウィッカプールは宇宙政府の制約を受けない惟一の勢力だ。次の統制者が現れれば別だが、こいつ馬鹿なのに無駄に有能だし、若いんだよ。35だって。暫くはこいつの天下が続くだろう。
最後に、母親に連絡した。一年半以上、役人に拉致されて、泣き叫ぶ母と別れて連絡しようとも思わなかったけど、これが最後になるかもしれない。
あー、でも気が重いな。クロネちゃんのことだって知ってるだろうしさ。
「……黒音?」
信じられない、みいたいな声で俺を呼び、母は泣いた。三十分くらい泣かれて会話にならなかった。
「大丈夫だって言ったのよ、私生児だけど俺がなんとかするって、王族なら手を回せるって。そうしてる子は沢山いるって、なのに!」
蛍だって成人してからも薩摩にいたみたいだし。俺の父親、志摩の縁者らしいし。でも、父親が一度も会いに来ない時点でお察し。俺たち親子は忘れ去られた訳だ。
鼻をすすりながら、母はようやく少し笑った。
「クロネちゃんの演奏見たよ。凄いね」
「んー、あー」
昔あんたが「無駄」って言った趣味だけどな。
「もっとちゃんと勉強して、文句のつけられない人に育ってほしかった……そうじゃないと許されないと思った」
私生児孕まされて、連絡のない父親の素性を言わず、一人で子供育てるストレスは尋常なものではなかったろうと思う。若いんだよ母さん、まだ40前。どっかの王子さまに絆されてヤったのが悪いとは思うけど。避妊しなかったの? というかなぜ堕胎しなかった。
「えっと……いろいろスキャンダルもあったのですがー」
「何よ! あんた昔から嘘がへったくそ! 何が事件性はありませんでした、よ。どう考えてもフラフラしてるとこを誘拐されてコマされたんでしょ。あんたホント、そういうとこよ! 気がつくと一人で冒険に出ちゃうあんたを、母さんがどれだけ心配したかわかる!? ウィッカプールのカジノで一人になるなんて、ほんと、ほんとバカ!
菊蛍さんが今の恋人なんでしょ、あんな素敵な人にいっぱい心配かけて! ばかだね、この子は!!」
母親ってやっぱ母親なんだ。強い。全部筒抜け。
「今度は誘拐されて身体が行方不明になったとか言うじゃない。母さん、心配で心配で倒れて入院しちゃったわよ!」
また滅茶苦茶泣かれた。生まれたての赤ん坊みたいにオギャーオギャー泣いてる。元気じゃん。
「世情で、ロマの居場所がなくなるから、俺たちは他所へ移る。だから連絡とれなくなると思うけど……」
「いいよ、もう。何処にいたっていいから、元気でいて!」
まあ、まだ若いんだからちゃんと結婚して懐妊許可申請した子供作って普通の家庭作ってくれ。
心の底で気がかりだった母親のこと片付けて、気分がすっきりした。
ロマの大移動は社会問題になった。そりゃそうだ。今まで工場星でロマが生産してたものも、なくなる。
未来ってさ、全部機械化されて人が働く場所なくなると思うじゃん? でも実際には複雑で突発的な事故が起こりまくるわけで、そうなると機械で対応するのは無駄になる。
こういう状況に柔軟に対処するため、AIが自己成長してAIを更に生む研究がされたんだけど、超AI化して宇宙飛び出しちゃった。暫くは人間に付き合ってくれたけど、愛想尽かされた。
人間のために作られたAIに見捨てられるってどんだけだよ。
そういう歴史を辿った宇宙なんで、ロマという差別人種の安い労働者は貴重だった。
『クロート、サポート頼めるか。海賊だ』
いつもは呼ばれない海賊狩りの助っ人を頼まれる。
『戦闘員じゃなく?』
『お前の能力ならサポート向きだろ。まずそっち試してくれ、モンペも怖いしな』
俺、初陣もまだだしな。この非常時に足手まとい連れてくのは社長だって嫌か。
海賊船の横っ腹にドッキングして、船体が揺れる。対象を絞らないと、この船も落ちる……! 皇星の時みたいな失態はしない、あのときと違って熱もない。
敵のマイクロチップ検出して位置を確認。射撃ボットの装備、位置確認。その情報を戦闘員たちに送信する。
『いいじゃん! 助かるよ』
『けっ、このくらいウィッカーじゃなくても出来んだろ』
鮫顔の言う通りだな。他にも出来ること探そう。
射撃ボットのコントロール権奪取はできない。ハイドウィッカーなら出来るんだろうな。俺にはせいぜい動作不良起こさせることしか……
マシンピストル使ってる奴のもなんとかなる。ニードルガンとかのアナログ銃は無理。どうにかしてくれ。あとは、強装甲スーツの奴も足止め出来る。
『クロート、敵の補給線切りたい。武器倉庫に続く通路の防火シャッター下ろせるか』
そこなら、武器倉庫そのものにシャッターついてる。下ろしといた。シャッターはセキュリティプログラムで動くけど、シャッターそのものにセキュリティないのな。いいこと知った。
そういう細かいサポートをしてるうちに、戦闘終了。
『物資は頂くし、死体も星の子の餌にするけど、船は放置するとデブリになるから近くの星に届けないと。それ手土産に受け入れてもらって、補給したい。牽引してもいいが、そうするとうちが無防備になる。リモート操作できる?』
『セキュリティを切って貰えれば』
『オーケー、便利だね!』
『セキュリティ突破できない機械感応ってだっせぇな』
煩い鮫顔。思ったより出来ること少なくて凹んでるとこだ。
今回みたいなケースだと、絶対ハイドウィッカーのほうがいい仕事した。いや、殆どの場合、ハイドウィッカーのほうが強い。範囲広いだけじゃなあ。
疲れたんで神経休ませてたら、社長が部屋まで来た。
「お疲れ! 助かったぜ」
「大したことも出来ず……」
「いるのといないのじゃ話が違うよ! でさ、そろそろ蛍がキャパオーバー起こす頃だから様子見に行ってくんない? 俺が行くと怒るんだよー」
蛍の顔を見なくなって暫くするな。ずっとデータリンクしてんのか?
「蛍、入るけど」
『入るな』
不機嫌そうに突っぱねられた。ドアもセキュリティで動かない。
むかついたんでハイドウィッカーに連絡した。
「おい。セキュリティの壊し方教えろ」
「ええー、最近タダ働きばっかだったしぃ、ご褒美欲しいにゃーん?」
うっぜぇ。なんだこいつ。蛍に許された途端、調子に乗りやがって。
「……俺にしか見せない蛍とっておきの笑顔フォト。ものすごく可愛い」
「乗った! あとさー、落ち着いたらでいいからウィッカプールでライブやってくれよ。恨まれちゃって大変なのさー」
「そりゃ蛍に聞いてくれ」
「駄目って言うに決まってんじゃんさあ! 一番いい夜景の見えるジャグジーつきの最高級ロイヤルスイート取ってやんよ」
でもそこ、お前に盗撮されるんだろ。
「完全にセキュリティ壊すとカドが立つ場所って多いわけ。たとえば皇族のデータバンク。ちょっと盗み見るだけなら仕方ねーなで済まされるけど、これ壊すともう許されねえ。
盗まれるだけじゃなく部屋を壊されると余計むかつくだろ? 修繕費バカにならねえ場合も多いしな、盗まれるだけなら、被害に遭った方も割と諦めるんだよ。
海賊船や敵施設だって、後で自分が使う羽目になるパターンも多いし、セキュリティは壊さないに限る。
菊蛍のデータリンクルームだって、壊して無防備にするのは問題だろ」
「どうすればいい?」
「偽装すんのさ、自分はセキュリティの一部だと。よーくよーく感知しろ。機器に繋がるあの感覚、あれを研ぎ澄ませばいい。出来ない奴は出来ないが、オメーは繋がるのが巧い、絶対出来る。そうすりゃ騙せないのはマイクロチップのブラックボックスだけだ。あればっかりは超AIの組んだ別理論のシステムだから無理なんだよ」
なるほどな。いい訓練になりそうだ。
神経を集中して、データリンクルームの扉だけに意識を注ぐ。他のシステムにも侵入したら問題だ。視界ジャックテロの時みたいになる。対象物だけ選んで動かせなきゃ意味がない。
扉の機構、繋がってる配線、システムの根。管制室にまで及ぶ。管制室のシステムの中の扉を操作するシステム。一体化する。溶ける。壊すんじゃなくて促す。掴めそうで掴めない。汗が噴き出す。ただ機器と繋がるだけなのとは訳が違う。
「……なにをしている?」
気がついたら床に転がってうーうー唸ってた。扉に背をつけて座りこんでたから、開いたのにも倒れたのにも気づかず、一生懸命システムと一体化しようとしてたらしい。
渋面の蛍の顔みて、がばっと起きた。
「セキュリティ! 突破できた!!」
「入るなと言ったのに……」
「これで出来ること増える、な!」
「まったく」
疲れて不機嫌だった蛍の顔が緩む。
「お前には敵わんなあ。もう、休むことにする。気が抜けてしまった。鷹鶴を呼んでくれ。後を頼む」
行き先を見るに、洗浄ポッドだな。食事もとるかもしれない。のこのこ着いてったって仕方ないし、鷹鶴社長に連絡とる。
「交代してくれとのことで」
「すっげーなクロート! まさに天岩戸の物語。よくあの状態の蛍を引っこ抜いて怒らせずに休ませたな。酷い時は腹にグーパン食らうぜ」
蛍、遠慮がないせいか社長に若干ひどいからな。それにしてもバイオレンスな蛍……
なんでもかんでも蛍に買って貰うのって、ヒモっぽくて嫌だなあ。組織の存続に関わることだから、今回は仕方ないか。
ちょっとドキドキするな、俺専用データリンクルームつき宇宙船。小型がいいや、ヨットレベルの。
蛍が寝室に戻る頃を見計らって突撃すると、蛍は大きな冷却材を目ごと額に張って唸ってた。脳みそ使いすぎ。
「蛍、襲ってもいい?」
「珍しいことを言うな……」
こんだけ疲れてたら、下半身も辛いだろうなと思って。うわ、蛍のバスローブの裾開くの背徳的でエロスで辛い。筋肉のついた男の足なのに、どっかの姫様のドレス暴いてる気分になる。
「はむ」
咥えたらすぐ大きくなった。
「ん……ん、」
足がぴくぴく反応するのに気をよくして、一生懸命しゃぶる。最初は不味いと思ったもんだけど、今は蛍の味にうっとりしてる自分がいた。俺も変態だな。
「んんっ……」
小さい呻きとともに、口の中にとろっと吐き出される精液を飲み下す。イった割にまだ全然、収まってないけど……
「すぅ…すー」
寝ちゃった。
しかし育ったままの下半身。バスローブ裾だけはだけて白い足が顕になって、物凄く扇情的な光景で、男なら犯したくなる光景と思うんだが、跨って腰振りたい欲求で生唾飲んでる現状。
蛍の足の間でごそごそ服脱いで、ベッドサイドにある潤滑剤とゴムとる。いそいそ蛍のにゴムつけて、パッケージポンプを自分の彼処に先端を入れた。
「んっ」
パシュ、と逆流してくる感覚、慣れない。ポンプをそのままぬうっと奥まで入れて、潤滑剤を馴染ませる。アナルはとにかく乾きやすいんで、ぬめりけ大事。そういうの分かってない奴にヤられると大変。
しっかり濡らして腰を上げ、蛍のに触れながら角度つけ、呑み込んでく。
「んん、ああ」
ナニコレ気持ちいい。自分のタイミングで動けるからか。
それと、蛍の、ほんっと久しぶり! 最高。デカマラ嫌い! 大きさ、長さ、硬さ、太さ、反り。もう蛍じゃなきゃ無理。
「ん…んーっ…は、はぁ、はぅん」
蛍の腹に手をついて、ゆっくり腰を動かし悦い場所に当ててく。ナニコレ凄くイイ。騎乗位、とてもいい。腰が止まらない。
蛍の顔見たいな……と思って冷却材を外したら、
「んぁ」
起きた。ばっちり目が合う。
そして寝起きの顔でにっこり微笑まれた。
「悪戯っ子である」
「あっ、ちょっと!」
下から突き上げられてびりっときた。
「もっ、あぅ…! 寝てろよっ、今日は俺がするんだぁ…っ」
「久々の生身だというのに、一人で楽しむとは狡いと思わんか」
「やっ起きるな! やだやだ」
せっかく騎乗位初体験だったのに、なんでさせてくんないんだ?
すっかりぶすくれた俺だが、蛍のほうも頬を膨らませた。85歳がやっていい顔じゃない。なんだこの85歳児可愛いなクソ。
「お前は人形に入って俺に触れていたかもしれんが、俺はお前に触れるのも久々なのだぞ。
人形は汗をかかんから肌がさらさらでしっとりせんし、無味無臭、肌の心地も中の心地もお前のものとは全く違う。俺もお前に触れたい。駄目なのか」
そりゃ俺が悪かった。でも。
「アジャラ皇子もハイドもさ。蛍や志摩王子に代わりに俺を抱いたんだよな。俺が良いなんて言った奴、一人もいない。あんただって沢山愛人がいて、俺じゃなくたっていいんだろ」
離れてた間だって、たぶん他の誰かと寝てたろうしな。救いは、蛍だけは俺を誰かの代わりにしないってことか。
自信なくして、拗ねて、凹んで。
「いつッ!?」
蛍の表情がどんどん消えてくのに気づかなかった。肩を噛まれるまで。
「久々の生身の逢瀬で他の男の名を出されるのは腹が立つ」
蛍は―――
俺が思っている以上に怒っていた。怒り狂っていた。というより、ほぼ殺意。
ハイドについては何度も執拗に殺そうと企てたらしいし、アジャラ皇子についても似たようなもんだろう。ハイドの時は、過呼吸起こすほど心配かけたって印象のほうが強かったが、蛍はそれ以上に怒っていた。
俺は被害者だから、蛍は俺を責めない。そのことでは。
でもセックスしてる時に比べられたら話は別だ。
もともと蛍は、たとえ自分の愛人でも最中に存在を仄めかされるのを嫌った。
分かっててうっかり地雷を踏んだ俺がバカなんだろう。
「で、どの男がどのように犯したと」
「ごめっ……ほた、ごめんなさ、」
「確か、ハイドは拘束して筋弛緩剤。ヤマトの馬鹿皇子はドクターストップがかかるまで犯し続けたのだったか。どちらも試すか?」
「ひ、」
「筋弛緩剤はないが、戦闘用に常備したドラッグならあるぞ。痛みや疲労を消す為のな。拘束具は、帯でよいか。残念ながら俺は疲れていて夜通し相手に出来そうにはないが、俺が休んでいる間はお前の大好きなイボ団子があるぞ」
「蛍、もう言わないから!!」
たぶん蛍、疲れてて変になってるんだ。前もちょっと様子がおかしかったもん。今はあのときの比じゃないほど疲れてるから……社長に腹パンする状態らしいから。なんか目、焦点合ってないし。
「………」
俺が本気で怯えて泣き出すと、蛍も落ち着いてきたようだ。
「すまん。どうかしていた。これではお前に無体をした者と変わらんな」
「う……ひっ、ぅ」
「正直、ハイドも馬鹿皇子も、面倒な愛人も殺してしまいたい」
へぁ。
蛍の本意の関係じゃないんだろうなとは思ってたものの、まさか殺意が沸くほど憎悪してたなんて知らなかった。兄貴と父親を半殺しちゃった話はちらっと聞いたが。
思いがけず蛍の本音を聞いてしまい、涙も引っ込んだ。蛍は苦笑している。
「お前に触れていたい。可愛がって、甘やかしたい。よいか?」
蛍は狡い。
そんな泣きそうにきれいな顔で訊かれたら、頷くしかないだろ。
「ん、ん…ひぃ、ん」
このゆったり動く腰使いの、痛苦しいのに気持ちいい感じ、久しぶり。人形は快感しか拾わないから……激痛は嫌いだけど、コーヒーやビールと同じで「これがないと」って気になる。子供の頃は甘ったるいミルクチョコが好きだったけど、今はビターチョコじゃないと食べられない。そんな感覚。
「ほたる…蛍がいい……」
「ここにいる」
「はぁ…ほたるぅ……んっ」
蛍の背に腕を回して、あやされるように抱かれて、キスをされる。
比べるのは悪いって分かってるけど、暫く蛍と会わず、アジャラ皇子の独り善がりに付き合わされて心底思う。やっぱり蛍が好きだ。
この顔で優しく微笑んでキスして甘やかして、ものすごく悦いのをくれる。触れる指が丁寧で上品で、粟立つように気持ちいい。
でも、俺以外にもそう思ってる奴がいるんだよなって思うと、なんか集中しきれない。
「また余計なことを考える……」
「んっ、ああ! はぅう」
他のことを考え始めると思考ぶっとばすように悦いとこ強めに抉ってくるのも。
「あぅ、く、ぅう……ん、んんっ? あ…ああッ!」
ビクっと腹がしなる。なんかイくかも、と思った瞬間にイった。変なタイミングでイく時ない? 俺はある。
「ふっ……」
蛍も軽く睫毛を震わせてイき、ずるりとモノが引き抜かれる。倒れるように俺の横に落ち、蛍は目を閉じた。
「蛍?」
「………すぅ」
寝てら。
いつも意識飛ばすの俺だから、俺が始末するの珍しい。ゴム外してやって、衣服整えてやって、布団をかける。俺はだるい腰動かして洗浄ポッドへ向かった。
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