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「次に生まれるとしたら何になりたい?」
リアリストのクラライアがそんなことを言うので、ヴィーヴィーは吹き出した。
「けっこうです。為すべきことは為しました」
***
「兄上。敵艦隊が母艦を見るなり逃げるので戦闘になりません」
んー、ヒットアンドアウェイされてて鬱陶しい。俺の能力が微弱なんで対応も早い。さすがに戦闘機全部にマシーナリージャマーつける訳にいかないだろうから艦隊戦にはならないけど。
このままじゃジリ貧だ。
そんな折、志摩王子から連絡があった。
『よっ、久しぶり! クラミツ元気?』
『一時期くたびれてたけど、だいぶ回復した』
『無事だって聞いて安心した。オトなんて大泣きしたんだからな……そうだ、この一年であいつ十センチも背が伸びたんだぞ。クロはきっと驚く』
十センチ! まあそろそろ成長期だろうなとは思ってた。どうしよう野太くなってたら。あの小さくて細い骨格からすると無理か。
『それでな、困っているんだろう。クズ夫妻を貸す。だからお前がこっちに援軍に来てくれ……内密にな』
いいアイデア。案外、ヤマトのほうもこっちと似た状況なのか? クラライア皇女はあんまりヤマトと戦うことに積極的じゃないからなあ。
『クラミツ、あんまクロに面倒かけんなよ!』
「や、世話になってるのは俺のほう。いつもクラミツに苦労させてる」
『クロが暗殺されたこと自体がクラミツの大失態! まあ、これは一年前に散々叱ったけどな』
クラミツのせいじゃないだろ。ロマの国だからって気を抜いた俺が悪い。敵が内部にいることはわかりきっていたのに。
「戦闘機で一人で行ったほうが安全かな」
『クロの場合はそうかもしれん。ブリンクは?』
「多用できない。ブリンクしてる訳じゃなくて、ブリンクするために暴走状態に陥るのが危ないからコリドンが世話してくれてるだけ。自分の能力みたいな顔してたら超AIに迷惑』
『もっと差し迫ったシーンでの使用か……ナナセの護衛もつけよう。移動には細心の注意を払えよ』
盛大なフリだとは思った。
俺は当然、細心の注意を払って機器類で敵影を確認し、感知し、ツクモシップのAIも常に警戒し続けていた。俺が寝ている間も。
ところがガリアから出る前に、突如として暗闇が押し寄せ、船ごと呑み込まれた。そうと思ったら照明がつき、どっかの母艦のハンガーだ。
「おいで頂こうか、ウィッカ王」
爬虫類みたいな細い目した男が手を伸ばしてくる。ツクモシップの中から様子を窺っていると、船体を強く蹴り飛ばした。
「出て来いって言ってんだろうが! 弾くぞテメェ」
なんかヤバそうな奴だ。とりあえず従おう。ご丁寧にアナログガン構えたのに囲まれてる。
いかにもキレやすそうな顔した男は俺の前髪を掴んで顔を上げさせる。
「う……」
「よしよし、そうやって良い子にしてろよ。俺の忍耐を試すんじゃねえ。これであのオンナ男と交渉できるな。ヒッケー、よくやった。
いいか、能力を使うなよ。使用するとセンサーでバレる」
「……どうやって俺を囚えたか聞いても?」
「ア? 教えるわけねーだろ……と言いたいが優しい俺が答えてやろう。単純な話、オートンのボゲが遺したマイクロチップほじくり返してテメーの視覚聴覚ジャックしてたからさ。
あのクソボタルを出し抜く為のエサになってもらうぞ」
あ、いや。あの、たぶんですが。
あー、撃たれた。後ろにいた「ヒッケー」とかいうイケおじさんに撃たれた。あんた蛍に利用されたんだよ。どうせアイン・Bのマイクロチップを手に入れたことを蛍にも自慢したんだろ。で、性格読まれて俺を捕らえるところまで計算されたと。
「こちらへ」
銃を向けられたまま移動を促される。なんとも合理的な船の中を……配線とか丸出しになってんじゃねーか。普通、宇宙船なんかでは何もかも壁のや床に隠してしまうもんだが、この船は装置もむきだし。
案内された部屋で優雅にお茶飲んでる蛍。
「蛍様、お連れいたしました」
「うん。下がってよいぞ」
「しかし……」
「その子は俺に危害を加えんよ。クロネ、手荒な真似をしてすまんな。ヒッケー、ザグマのマイクロチップを抜いておけよ」
「はっ」
なに忠実な部下作ってんだよ怖いな。まだ一年だよね?
二人きりになった部屋の中、蛍が感極まったように歩み寄ってきて俺を抱きしめる。
「はあ、無事で……心臓が止まるかと思ったぞ。脳が損傷を受けたというが、大丈夫なのか」
「まあ。超AIの技術に感謝」
「ふふ」
蛍は俺の手をとり、星の子の指輪を外す。そして新しい星の子の指輪をつけた。
「次に会ったときはこれを外すと約束した」
「そうだけど。けっきょく星の子なんだ」
「何がよいかよく考えたが、意趣返しとしてもこれが適切であろうと」
蛍は自分の嵌めた星の子のリングを見て、満足そうに微笑む。
「クロネ。ああ、一年ぶりである。お前が植物状態と聞いて半年。正確には一年と二ヶ月にもなる。ほとんど自棄になっていたよ。俺は何のために戦っていたのか……」
俺からすると寝て起きたら大激動があった感覚なんだけどな。
「お前に対する過剰なまでの愛は、妄念なのか思い出が美化されているからなのか。だが、こうしてお前の顔を見るだけで胸が踊り、他者を慈しむ心が戻る。実を言えば、お前を失ってからの俺は、決して良い支配者ではなかった」
いつになく能弁に自分の心中を語る蛍。珍しいこともある。いつもの蛍はあんまり自分のこと話したがらない。
「お前を捕まえられたのは偶然の賜であるが、うれしいぞ」
蛍、すこし涙声だ。
俺も蛍の羽織の背中をぎゅっと握る。俺が植物状態だと思われてた間、蛍がどんなだったかなんて知りたくもない。きっと滅茶苦茶ひどい魔王みたいになってたはずだから。
「……ブリタニア落とせそう?」
「落とさねば、お前もロマの国も酷いことになろうな。安心しろ、必ずや無力化してみせる。その後、皇軍と戦い、改めてお前を手に入れよう」
「うちの傘下に入ろうとは思わないの。悪いようにはしないって言ってるのに」
「お前は長年放射能を浴びて世代交代してきた民族と共存したいと思うのか?」
む、むり。短期間なら薬品でどうにかなるけど、そこまで汚染されてちゃ生理的にイヤ。
こっちの宇宙で活動してた奴らはそういうことないんで、ガリア入植者は酷い差別には遭ってないようだ。鷹鶴からも、我儘言うな、居候だと思えって口をすっぱくして言われてるようだし。
「新しい惑星を開拓するにしても、認められねば……我々はロマであると。ロマの中の異分子ではないと。そのために戦っている」
ガラでもないのに、いつだって人のために戦ってるんだよな、蛍は。あんたのそういうとこ、ほんと好きだよ。
「できれば無血が望ましいのだが―――」
「そりゃこっちの台詞だ」
「みなそう思うのだろうな。戦争になる理由は色々あれど……」
けど、しょせん茶番なんだよな。蛍が記憶喪失で、地下組織とロマの融合に必要な儀式といっても、やっぱり茶番は茶番。示し合わせてなあなあで終わらせる必要はある。
「あっ」
背中に回ってた蛍の手がするりと腰を撫でて、尻の間から内ももの間に滑り込んできた。
「あんたの頭の中、これしかないのか。スケベジジイ!」
「殺生なことを言わんでおくれ。なあ、お前の頭の中は一年前で止まっているかもしれんが、俺には一年ぶりの逢瀬である」
「逢瀬って……俺、まだあんたのものじゃない」
あんたのだけど。あんたが思い出しさえすれば何もかも全てあんたのものになるんだけど。面倒くせえ。なんて面倒くせえ蛍だ。アイン・Bに文句言えなかったのが残念でならない。
「……悪いけど。こんなことしてる暇ないんだ、本当に早くヤマトへ行かないと」
「ふん? つまり皇軍を倒したいのだな」
「そうだけど」
「ならば尚更お前を離す気はないな。俺とおまえが手を組めば、ブリタニアを破って返し刃で皇軍を落とせると思わんか」
あ……そっか、この状況、蛍と手を組んだほうが有利だ。ブリタニアは俺がいることを知らない。
「今日の敵は明日の友と言うなら、今日の友が明日の敵になることもある。どうする、クロネ。利をとるか、意地をとるか……ちなみに、俺はフォロワーとして超一流である」
蛍とツーマンセル……! 夢見てはいたけど機会に恵まれず
「べ、べ……」
「ん?」
「べつに、あんたのためなんかじゃないからな! 俺にメリットがあるから! 勘違いすんなよな!!」
「交渉成立である」
蛍はにっこりして俺をベッドに押し倒……だからなんでそうなるんだよ!
「わかっているか、クロネ。お前はいま、捕虜である。無理強いは趣味ではないが、どうしても俺はお前の体を作り変えたい」
つつと顎から喉を指が走る。
この体はもちろん蛍が作ったものだけど……そういえば、最初の最初はジャガイモ看守のせいだったんだっけ。蛍の性格上、アレは嫌がりそうだな。あれがきっかけではあったけど、蛍は何もなくても結局は俺に手ぇ出した気がする。
更に、アエロにフィルターかけられてやっぱり俺を開発したこと覚えてない。そこから更にフィルターかけられちゃったもんだから、俺の体の反応がとことん気に食わないんだろう。
「……いいよ、好きにしても。ただ、痛いのは嫌い。それやったら強姦だ」
「了解した。俺でなくば満足できないようにしてやろう」
もう何度言ったかわかんないけど、元からあんたじゃなきゃ満足できないからな?
蛍は手早く脱がせにかかった。脱がせながら顎の下にキスして、胸元を愛撫して、ほんと無駄に匠。誤変換じゃないぞ。もうこいつは匠の領域だ。
「ん、は……っ」
「はあ、かわゆい。この胸が満たされる感情はなんであろうか。恋というのか愛というのか」
俺にもよくわかんないな。俺は蛍が好きだけど、好きって気持ちは原動力であって満たされることはない。蛍に愛されてると実感する時だけ、満たされる。
それは愛と呼べるのか、それとも承認欲求が満たされるからなのか、よくわかんない。
「んっ、ああぅ!」
穴の下あたりをきゅうと押されて腰が跳ねた。そこ、そこだめ。割といっぱいあるスイッチの一つだから!
蛍は俺のスイッチの全部を分かってるかのように、巧妙にひとつひとつオンにしてく。乳首、つま先、耳、唇、丁寧に丁寧に指と舌と唇で。
「くぅう……」
裸にむかれて膝裏を持たれ、何かでぬめった指が穴の口で円を描く。くに、くにと押したり撫でたりしながら、やわくなった肉につるんと指を差し込んだ。
「わかるか? 欲しがって絡みついている……」
「いっ、あ…言わなくて、いいっ」
「此処な」
「ふぁああん!」
前立腺をくりくりマッサージされてあっという間に空イキ。波に押し上げられて飛ぶようなこの感覚。
「ふぁ、ひぅ、ふえ」
強く鋭い感覚に耐えられなくてべそべそ泣く。いつものように蛍が「ねこ、ねこ、いいこ」とキスをしながら慰めてくれた。
が。
「ひぅ! ひ……!? あァ!」
ぬるると押し入った長い指が深いトコにある襞をコリコリして目を見開く。
「あう! あうっ! ううう!」
「うんうん、よく躾けられている。面白くもあり、つまらなくもあるな」
安心しろよ、あんたが全部やったんだよ。その台詞も二度目だし。
「あああ!」
息つく暇もなく、太いのが押し拡げて入ってきた。
「悪いな。俺も少し余裕がない……」
「あっ、ああ」
「なんと稚くかわゆい顔をして悦がるのか」
自分じゃよくわからんが俺はヤってる時「イイ顔」をしてるらしい。大抵情けなくべそべそ泣いてるだけなんだが。嗜虐心でも煽るのか?
「ほたっ、ほたる……ああ! あふ! ふぁあっ」
だめ悦すぎる。蛍急ぎすぎ。なんでこんな余裕なく攻めたててく……もしかして。
イイトコ見せようとしてくれてんのか? 居もしない(てか本人)ロマの王に嫉妬して。
か、かわいいとこあんじゃん。
「何を笑っている?」
「やぁあ!」
ちょっと笑ってたら一番悦いとこズコっと突かれた。考え事してるとすぐこれ。
「はううう、ううううう……ッ、ひぅッ!」
ガクンと震えて潮がびゅっと蛍の腹を汚した。もう潮吹きマシンだわ俺。蛍にとっては初めてのアレでコレだから恥ずかしくて顔覆った。この前も尿道弄られて出ましたけど!
「ドライと潮だけで射精してなかろう。もう一度な」
にこにこしながら腰がっちりホールドされた。
や、ちょっ…イッたばっかだから休ませ………
その後の嬌声はほとんど悲鳴だった。
そんなのの後だから寝起きは最悪。
「ブリタニア軍と交戦中。クロネ、手伝ってくれ」
訓練したから体は割と勝手に起きてくれるんだが、頭のほうはなかなかそうもいかない。日常生活や作業はできても、ウィッカー能力は繊細なんだ。
というか、思うようにいかない。寝起きってだけじゃねえな。やっぱり脳が損傷を受けてるから……?
「ごめん蛍。集中するのに時間かかりそうだ。やっぱり頭すこし変みたい」
「仕方あるまいな。もともとお前の力をあてにした戦ではない」
「十分間持ちこたえてくれ。そうしたら船づたいに意識体飛ばして戦闘機を潰し回る」
ま、それも本当だけどお手並み拝見。
「前方艦隊z軸下がれ。左右翼z軸上がれ。y軸下方へ。左翼フォス宜う候。砲撃準備。ファイア」
鮮やか!
包囲戦ってのは戦術の基礎だけど、更に三次元的な戦い方をしてる。全体を把握して小隊ごとに指示出してるよ。
全体をじりじり三次元で包みながら、敵を小隊ごとに包囲して各個撃破し道を作っていく。気泡戦法とでも言うの?
「敵機械感応部隊サーチ。ジャマー展開。前方マニュアル戦闘機出撃」
マニュアル戦闘機だと……
つまりAIもオペレーションシステムも搭載してない、ユビキタス化されてない完全に装置だけで動いてる船だ。しかも多い。中隊規模はあるのか?
蛍の指揮にウィッカー対策、そしてあのマニュアル戦闘機の数。しかも手練ばっか。そりゃマニュアルに乗ろうってパイロットは腕利きに決まってるか。
俺、これと戦って勝てるかな。能力が艦隊戦に強すぎてまともな戦闘してない。だって俺単体で勝てちゃうんだもん、指揮経験もろくにない。機器や能力の勉強が殆どで用兵もあんま勉強してない。覚えることもやることも多すぎて。
これはやばいのでは。
「ん、どうした。惚れ直したか?」
惚れ直したけど、今は厄介でしかないわ。
「包囲完了。掃射とクロネによる鎮圧後、旗艦に突入する。撃ち方始め」
俺も始めていいってこと?
ここまでお膳立てされてると申し訳なくなるほど簡単に敵艦の機能を停止していける。相手は包囲されたことに浮足立って命令系統が混乱しまくってるようだ。慎重にジャマーをかけてスキピオ戦法でいけば対処できなくもないのに。
「戦いはいかに相手を混乱させるかが鍵である。びびらせた者勝ちと言っていた戦友もおったが、要するには混乱だ。怯むことで混乱が生まれる。味方が敵の混乱に釣られることもあるので注意は必要である」
おまけにレクチャーまでしてくれる。これから戦うって相手に。余裕だな、くそ。
「よし、出るぞ。クロネ、モビルギアに搭乗せよ。好きに戦え、俺がフォローする」
ツーマンセルのフォロワー、それはつ随伴であり、援護する兵。モビルギアを遮蔽にしながら火力をもって制圧するモビルギアを狙う敵を排除する。強いんだろうな、蛍。葛王子ほどじゃないにせよ。
葛王子の場合、強すぎてモビルギアの随伴しなくていい、モビルギアいらない節がある。ワンマンアーミーだからな。ツーマンセルする必要もないわな。よく婿さまとやってはいるそうだが。
乗り慣れない汎用戦闘モビルギアに乗り込み、経頭蓋装置から機械感応で深く繋が……りにくい。うああ、感知弱くなってんのか、それとも経頭蓋装置のほうが俺の脳波を拾いにくくなってんのか。思ったより変化が多そうだ。
旗艦が旗艦のケツを掘り、ディックホールから精鋭部隊で突撃開始。ひえ……周囲のモビルギアが壁走りするわ滑らかだわレベル高すぎて引く。
俺、敵影とセキュリティ発見次第撃つだけ。あとは避けなくても蛍が全部なんとかしてくれる。よしよしセックスならぬヨシヨシ戦闘。くっ……実はモビルギア戦は童貞です。ツクモビルで一回も出撃してないんだなこれが。
「旗艦のシステム破壊。アンカー打て。残党を処理せよ。ギアルチザン、帰投する」
王は捕らえないんだ。
「蛍、ウィッカーの確認は?」
「この状況をどうにかできるウィッカーがおるならとうにやっとる。戦利品は戦域から離れてから改めて検分する」
戦利品ときたか。下手したら取り込むんだろうな。蛍のことだから。
それにしても変な気分。蛍はとにかく、あれだけ宇宙を騒がせた地下組織と共闘してるんだよな、今。
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