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新月なのだろうか。
深くて暗い静寂な闇。
時折頬を撫でる生温かい風。
車のトランクを開け、布に包まれた荷物を肩に担ぐ。
……やっぱり。
感覚からして、人間だ。
しかも……女性。
「おい、お前らっ」
闇を切り裂く様に光を放つ、懐中電灯。
映し出されたのは、幹部候補の二人。
大きなシャベルで地面を掘っていた。
「できたか?」
「はい」
よし、と先輩が肩から下ろす。
「柚木」
先輩が僕を呼べば、候補生がビクッと体を震わせた。
「お前も下ろせ」
「はい」
先輩がしゃがみ込み、布をぺらりと捲る。
「……こいつさ、予想以上に強くて」
そこから現れたのは、見知らぬ男の顔。例の男だと直感した。
「居残りの三人はボッコボコにやられるし、コイツらはビビッちまって加勢出来ねぇし。
その間に女は逃げるし。
……散々すぎて、ムカついてよ。
で。ついやっちまった。──包丁で」
ゾクッ……
蒸し暑い筈なのに、背筋が凍る。
「………」
布に包まれた男を見下ろす。
ずっと……布に包まれたのは、あの女性二人だと思っていた。
何かのハプニングで、死なせてしまったんだと。
だけど、さっき……
もし聞きまちがいじゃなければ、二人は逃げたって……
……じゃあ、僕が運んだのは……
ドクンッ
震える手で、布を剥ぐ。
上手く、指が動いてくれない。
……まさか
「………ゆず、き……?」
そこにあったのは
眠った様な顔の、柚希──
なんで。
何でだよ。
……何で柚希が殺されなくちゃ、ならないんだよ……!
包丁。
そうか。
止めようとした柚希を、先輩が……
「俺は殺してねぇよ」
見上げた僕に、先輩が冷静な声で否定した。
女が帰ると騒ぐ前。
つまり僕が合宿所を出て直ぐ──
キングが、降臨した。
『良く見ると、ブスだな』
キングは女性二人を足蹴にし、美味そうなのはこっちだと言わんばかりに、残った唐揚げをひとつ摘まんで口にした。
「……キングの登場で、ピンときたんだろうな。迂闊だった」
その唐揚げが、予想以上に美味かったのだろうか。
台所を向いたキングの目に映ったのは、柚希だった。
無言で柚希の手を引き、廊下へと消える。
「……まぁ、やる事といったら、アレしかねぇだろ。
その間に俺らは、ひと悶着あって……
で、俺が刺しちまった後、木下達に凶器握らせて、瀕死状態のコイツを刺させたんだよ。
やらなきゃレイプ映像ネットに流すって言ったら、みんな素直でさ」
頭を突き刺す様な、細くて高い不穏な音が脳の奥で聞こえる。
……耳鳴り、だろうか。
「で、掘る元気がありそうなコイツらをここに連れて来て。
戻って来た所で、丁度キングが部屋から出てきて。
『クスリ打ったから、大人しいうちにヤッていいぜ』ってよ」
柚希を払い下げた……って事か。
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