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高校を卒業して、五年目の夏。
大学も無事卒業し、会社員として働いていた俺に、再び出会いは訪れた。
*夏の夜も昼の内
始まりは、変わらない親友からの一通のメールだった。
『やほ! 元気してる?』
そんなくだらない一文から続けられるメールの内容。
『社会人として日々汗水流している咲ちゃんに耳寄り情報!』
その後に二十行近くの空白があり、
『某新設会社で、社長秘書を募集するらしい!』
『条件は23歳独身男性で、大卒者のみ。中途採用も可能で給料も今の倍以上!』
俺の記憶が正しければ、親友は半プー太郎で高校時代の担任が経営している学校に拾ってもらっていたはずだ。
教員免許がないから、寮の管理人として雇って貰ってたはずだけど。
そんなことを考えていると電話がかかってきて、
『メールの件だけど、凄く魅力だったろ!?』
「俺よりお前が受けた方がいいだろ」
出てみると、嬉々とした声で話す親友からだった。
呆れて返事を返すと、彼は更に楽しそうに口を開いたのだ。
『俺じゃ落ちるから! 咲ちゃん行ってみなよ。今以上のワクワクが待ってると思うし、一会社員で終わるなんて咲ちゃんらしくないよ』
「俺らしいってなんだよ。それに急に会社は辞められない」
社会人ともあれば辞めるときは、一月前には言うもので、今日明日で辞められるようなものではない。
それはまさに特例に限るのであって、普通の退社ではそううまくいかない。
『咲ちゃん、今を逃したら、次はないんだよ? 後悔先に立たず』
やたらと進めて来る親友に、不信感を募らせながら話を聞いていく。
結局深いところまでは教えることなく通話を断ち切った彼に、多少の苛立ちを募らせながらも、やはり気になることはある。
別に転職したいわけでなく、あそこまで進めた理由が知りたいのだ。
「会社名はー……」
携帯電話でインターネットを開き、親友が話していた会社名を入力し、検索をかけた。
「………! これかな」
それっぽい会社のリンクをクリックし、ページを開くとそこは、捜し求めていた会社そのもので。
「IT企業?」
俺が全く興味を示していなかったジャンルを取り扱っていた。
それは親友も知っているはずなのに、何故?
閲覧を進めていく内にたどり着いた一つのページ。
そこには、会社の説明や社員からのコメント、そして、社長の名前があって…………名前?
「片岡、涼…一?」
何度見てもそこにあるのは、忘れるはずも無い高校時代に叶わずの恋をした友の名前が有り。
「嘘……あいつ、確信犯かよ」
名前の衝撃と、親友の行動力への悪態が交互に沸き上がる。
そもそも連絡取り合ってた、とか?
「だとするとすげー腹立つ」
俺が知らないところで、連絡を取り合っていたのであれば、それは置いていかれていたのと同じで。
「絶対に受けてやるもんか」
人を経由してなんか絶対に会ってやらない。
俺は、そう心に決めてブラウザを閉じたのだ。
ちなみに、秘書募集の欄はあったが、親友が事細かに話していた受験条件は一切書いていなかった。
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