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72 《晴》
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《晴》
「後は栄養失調だね。
貧血はどうかな?
ちょっとごめんねー?」
先生がズグの下瞼を捲ってみる。
「うん、貧血もある。」
「フラフラなのはそのせいですか?」
「それもあるね。
痛みで眠れなかった、怪我してからろくに物を食べてない、加えて出血までした。
可哀想に。」
ズグは下瞼捲られたのが嫌だったのか、頭を振って俺の後ろに隠れてしまう。
それをニコニコしてみていたが、
「さて、治療も終わったし会計お願いしまーす。
僕が気に入った子は特別割引しちゃう!」
「あ!はい!」
料金を払う。
闇医者なんて利用した事ないから、これが安いのか高いのかわからないけど、ズグは健康保険も持ってないし格安なんだろう、多分。
「毎度あり!
薬、渡しとくから塗ってねー?
それと痛み止めと僕の電話番号。
何かあったら電話して?」
うん、親切だ。
「ありがとうございました。
ズグー、良かったな、診てもらえて。」
ズグはキョトンとしてる。
可愛い。
そんな光景を見てて、帰り掛けにちょっと迷ったように先生が言った。
「……これは忠告なんだけど」
「はい?」
「…その子、元居た場所に戻しちゃいけないよ?」
「え?」
「うーん……
患者のアレコレに口挟むの、この家業してたら御法度なんだけどねー。」
ポリポリ頭を掻く。
「元居た場所でやられたんだろう?その傷。
という事は、また姦られる。
しかもドSは、まだ自制が効いてる内はいいがもっと、もっとになる。
そうなれば歯止めが効かない。」
ゾッとした。
正直本当に返していいか、わからなかった。
あの店主と痩せた男。
男の酷薄そうな目が焼き付いて離れない。
あんな環境にまたズグを置く??
悩んでる俺をみて、先生が明るく言った。
「まぁ今すぐに自制が効かなくなる、って言う事は無さそうだけど。
考えてみて?
じゃあねー!」
手を振って帰って行く。
玄関でため息吐いた。
闇医者の事じゃない。
うん、先生は、なんとも軽いし愛想もいい。
闇医者ってんで、暗い無愛想な奴を想像してたのに。
そうじゃなくて、先生が突き付けた問題。
ずっと思ってた。
そりゃ俺だってズグを返したくはない!
あんな酷い事する奴と怪我してても放ったらかしの店主。
でもどうする?
ここで引き取る?
店主がそれを許すか?
いや、店主は許さない。
何故ならズグが居る事によって、痩せた男が来る。
それにバックに付いている怖い人達。
うーー!!
でも返すのは嫌だ!!
「あー??」
ズグが俺を覗き込む。
「あー、ごめんごめん!
そうだなぁ、どうしようかな?」
ズグが元気なら行きたい所いっぱいあった。
でも無理させたくないしな。
とりあえず室内で過ごすか?
その時、室内が暗くなる。
「あー……。」
眉に皺寄せて、ズグが俺にピトと張り付く。
「あー、雨だなぁ。
振って来た。
電気も少し明るくしような?」
ここは南側だから、昼間は電気が要らないくらい明るい。
でも雨降りの時は別だ。
「あ?」
「雨だよ。あ、こら、ズグ!」
ヨロヨロとズグが窓に向かう。
ベランダに続く大きな窓のレースのカーテンをもどがしげに引いた。
ここは5階だから見晴らしがいい。
「あーー……!!」
雨で霞んだ幻想的な風景。
じっと見てる。
「珍しい?」
憑かれたように見ていたが、急に震えて俺の所に戻って縋り付く。
雨、好きなんじゃ無いのか?
どっちだ??
「怖く無いよ?大丈夫。」
何を言っても、訴え掛けるように俺を見る。
こんな時思う。
ズグが話せたら良いのに。
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