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73 《仔猫の過去》1
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《………》
雨。
昔居た高い部屋から見る雨と同じ風景。
______いつも泣いてた人。
優しくて、怖くて、いつも泣いてた人が居た部屋。
仔猫が居た部屋。
異人の女と子供。
そこには鍵が掛かってた。
女は優しい。
そしていつも泣いてた。
ただ仔猫が片言で話そうとすると、怖い人になった。
手で口を塞ぐ、叩く、折檻する。
泣きながら。
だんだん仔猫は話さなくなる。
話すと痛い。
いつしか仔猫は話そうとする事がなくなる。
あーとかうーとかしか言わなくなる。
話さなくなった仔猫を見て、女が泣く。
『ごめんね……。
ごめんなさい、けど話さない方がいいの。
そうすれば私が死んでも助かる可能性がある。』
そう異国の言葉で言って、仔猫を抱きしめてまた泣いた。
仔猫は何の事がわからない。
でも、泣かないで?
側にいるから泣かないで?
毎夜、男が来る。
男は威丈高に怒鳴り、女を抱いた。
女は諦めたように抱かれた。
それをすみっこの方で、仔猫はじっと見てた。
女が苦しげに喘ぐ。
以前女を助けたいと思って割って入ったが、男にぶっ飛ばされた。
なおも暴力を振るおうとする男に、女が仔猫を庇った。
結局、女も仔猫も酷い目に遭った。
仔猫の傷の手当てをしながら、女は泣きながら言った。
『大丈夫。何でもないの。
いい子だからじっとして!動かないで!』
それ以来動かない。
動かないでじっと見てる。
「気味が悪いなっ!!
こっち見んなっっ!!」
男が忌々しげに手近にあったテッシュの箱を投げた。
箱は子供の頬を掠めて飛んだ。
『こっちを見ないで。大丈夫。いい子だから!』
女が異国の言葉で言う。
仔猫は大人しく壁を向いて蹲る。
男が怒鳴る。
「忌々しいガキだなっ!!」
「その子、何にもわかってないの!
ほら、あーとかうーとかしか言わないでしょう?
スプーンの使い方もわからないで、手掴みで食べる。
何もわかってない!
この状況もわかってない。
知能が足りないの!
だから勘弁してあげて!
お願い!!」
男がチッと舌打ちする。
そんな生活が十数年続いた。
仔猫が少年になり、次第に女は病んでいく。
女は少年に基本的な事を教えない。
だから今も食事は手掴みで、女と二人きりだから下着姿見同然でも恥ずかしいという意識もない。
そんな仔猫を見て女は泣いた。
「あー?」
『いいの。
それで良いのよ。
もし私に何かあっても、知能が足りない、って思ってもらったなら助かるかもしれない。
ほんとは、賢くて聡いのに……。
ごめんね……ごめんなさい….…。』
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