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81 《仔猫の過去》6
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仔猫が見てると、パカん、と音が鳴って見た事あるモノが出て来た!!
知ってる。
おいしいヤツだ!
そうでしょう?
ここすごい!
女の人がいた所と同じ!
あったかい水が出る。
寝てても怒られない。
そして、これも同じ!
おいしいヤツ!
すごい!
仔猫は興奮して優しい人にあー!と言う。
《仔猫の過去》
仔猫は女と暮らしてた。
女は男に囲われていた。
最初女と子供を引き離そうと男は躍起になっていた。
でも女はそれを許さなかった。
この子と引き離されたら死ぬと。
とうとう男が折れた。
だが、男は子供に名前を付けないように命令した。
男は猫を飼っていた。
「……この猫のように、おまえのペットだという事ならまぁ辛抱する。」
そう吐き捨てるように言った。
男と猫と女と仔猫の奇妙な関係が続く。
女と仔猫は監禁され、男と猫は自由に出入り出来る。
男は気まぐれに女を抱く。
それが一ヶ月続く事も、一ヶ月音沙汰がない事もある。
男が用意してくれた食物は僅かで、ほんのたまに男に頼まれた下っ端が食材が届く。
目玉焼きとか時によっては簡単なシチューやパンは女が調理した。
けど、仔猫がいる時は、女は決して台所に立ち入らせようとはしなかった。
これも仔猫が生き残る為。
女は基本的な生活情報を何も教えない。
字や数字はもちろん、言葉も。
水がお湯になる事も、卵が目玉焼きになる事も何にも教えない。
莫迦だと思ってもらえたらいい。
そうすれば生き延びられる。
生き延びるチャンスが増える。
でも仔猫は聡かった。
知らないうちに言葉を覚え始めた。
異国の言葉も、女が片言しか喋れない男が使ってる言葉もそれなりに理解した。
普段は身の周りの物で遊ぶか、本物の猫が来ると喜んで一緒になってはしゃいでた。
でも、女が泣いてる時は必ず側にいてくれた。
だんだん大きくなる仔猫。
女はどんどん弱っていく。
女は仔猫を見つめる。
仔猫も嬉しそうに女を見る。
ミルクティーグレージュの髪。
灰色の瞳。
あの人にそっくり。
女が愛した、もう亡くなったあの人に。
女はまた泣く。
可哀想な子。
可哀想で不憫な子。
でも知られてはいけない。
どうぞ……
どうぞ仔猫が生き残る事ができますように。
どうぞ幸せになれますように。
見守って下さい。
今はもういない人に女の祈りは続いた。
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