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契り(追憶 2 years ago)01
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《perspective:亜矢》
――二年前
僕は蹌踉としながら、夜の街を歩いていた。
「何?喧嘩?」
「酷い格好……」
すれ違う人達が、僕をギョッとした目で見ていた。無理も無い、この姿を見れば誰だって不憫に思うだろう。
この寒い冬の夜にシャツ一枚、しかもぐしゃぐしゃに汚れた服でいるなんて。
僕は人々の視線を気にすることもなく、ただ俯いて歩いた。
僕には関係ない。世間体なんて……。
いっそのこと終わりにしたい。
生きて、穢れた男たちに抱かれ続けるくらいなら……。
その時大きな橋が目に飛び込んだ。身を乗り出して下を覗くと、そこは月明かりを受けて真っ黒に輝く河川だった。
ふらふらと、河川敷まで降りる。
人影はない。この暗がりなら、見られる事も止められる事も、ないだろう……。
冷たい風が僕の髪を靡かせた。
『まだまだ足りないって思ってんだろ?』
『誰にでも悦がりやがって。お前、ほんと淫乱だな』
先刻の男達の声が頭の中で渦巻いた。それと同時に自分の厭らしい様も……。
イヤダ、キタナイ……イラナイ……。
もう迷いは無かった。
足元から迫り上がってくる冷たい感覚を感じながら、ゆっくり歩みを進める。
1メートルほど行った所でいきなり水深が深くなった。水圧に体をとられてぐらりとよろめき、一瞬にして空を仰ぐ。
眩しいくらいの月が、流れるようにさっと視界に入った。
次の瞬間、痛いほどの冷たさが体中を覆う。
ゴボゴボと水中で息を吐く。苦しい……。必死にもがく自分が情けない。こんな時でさえも、生きようとしているなんて。
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