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契り 06
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《perspective:亜矢》
僅か1時間ほど前に出会ったばかりだというのに、結月さんと別れた途端一気に心細くなった。そんな僕を安心させるように、タオルと着替えを渡しながら神霜さんが声をかけた。
「私は、此処の全般の管理と一ノ瀬家の皆様のお世話をしております、神霜と申します。結月様が小学生の頃からこちらに従事しておりますので、もう20年近くになりますでしょうか。分からないことがあれば何でも聞いてくださいね」
上品で感じの良い笑顔。おそらく40代後半くらいだろう。笑った目元にやや年齢を感じるけれど、清潔感があって若々しい。中年の男性は、自分に向けられる視線があまり良いものでないと気づいたときから苦手だった。それでも神霜さんは不思議と怖いとは思わなかった。全身ずぶ濡れの結月さんを心底心配している様子を見ただけでも、人の良さを感じられたから。
その5日後。お手伝いの初日に、神霜さんが最寄りの駅まで車で迎えに来てくれた。
「わざわざすみません」
「道に迷われるといけないからと、結月様の頼みですから。先日は夜で分かりづらかったでしょう」
駅から離れ、程なくすると閑静な住宅街に入った。区間が整理され、そこに建ち並ぶ邸宅はどれも立派だ。聞けば大使館が近いことから、外国人も多く居住しているらしい。国際色豊かな風景を興味深く眺めていると「こちらです」と神霜さんが車を停めた。
促され車を降りる。
以前は真っ暗の中、しかも結月さんに連れられるまま来たので分からなかった。
高い塀にぐるりと囲まれていて、綺麗に整えられた植栽の奥に大きな屋敷が見える。
門が開かれ、敷地の中に足を踏み入れると、白を基調にした豪壮なファサードが目に入った。洋モダンで、少しクラシカルな要素もある。外からでも感じる荘厳な雰囲気に、緊張が増した。
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