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契り 08
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「――あ、結月様、お戻りのようですよ」
遠くで重厚な扉の開く音が聞こえたかと思うと、神霜さんがそう言ってサッと立ち上がった。
ドキドキと鼓動が高鳴る。いざ会うとなると恥ずかしい。初対面であれだけボロボロと泣いてしまったのだから。
結月さんの声が段々と近づいてくる。電話しながら歩いているようだ。大きく扉が開かれた大広間の入口から彼の姿がようやく見えた。
チャコールグレーのスーツにサックスブルーのシャツ、ネイビーのネクタイ。髪はセンターパートで分けたアップバングスタイルで、整った目鼻立ちを晒している。上品で知的な雰囲気の佇まいに、思わずドキリとした。
前にも思ったけれど、海外モデル並に背が高い。小顔なので余計脚が長く見える。道理でスーツが似合うわけだ、とまじまじと見てしまう。
「――はい。これから先方と調整します。ご報告は後ほど、テレカンで」
結月さんは終話するなり、またどこかに電話を掛けた。相手は外国人だろうか。ネイティブスピーカー並の流暢な英語で話している。少し眉根を寄せた真剣な眼差し。その顔を見つめていると、ふと、会話中の結月さんと目が合った。直ぐに会釈をすると、その途端に視線を外され、廊下に出てどこかへ消えた。
――あれ?
「ずいぶんと忙しいようですね」と、結月さんのコートをワードローブに置いて戻ってきた神霜さんが言った。
「そう、ですね……」
予想外の彼の態度に軽くショックを受ける。この前と少し雰囲気が違うような……いや、一番初めに会話した時は確かあんな感じだった気がする。冷たい、影を纏った表情。
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