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契り 16
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《perspective:結月》
『触らないでっ……』
勢いよく叩かれた手が痛い。心が、痛い。
こんなにも俺は、穢れた人間になっていたのか。
あの時の亜矢の目が脳裏に焼きついている。
嫌忌にひきつる顔、背信の涙でゆれる瞳。全てが、俺を拒絶した。幻滅させた……。
亜矢を置き去りにしてしまったことを今更ながら後悔する。
『好きでもない人を平気で抱けるなんて』。その言葉は刃物になって心に突き刺さった。その行為はいつも罪悪感で包まれているのに、結局抗えない。そんな愚かな自分に腹が立って、亜矢に当たるような真似をしてしまった。
はっきりと確信を持てるくらいに、好きだという感情は強くなっている。
亜矢だけを愛することが出来たのなら……。
“出来やしないわ、そんなこと……”
頭の中で、祖母の声がそれを打ち消した。
“だって、愛されて生まれてきた子ではないもの。……人殺しの子だもの……”
……解っている。絶対に駄目だ。
亜矢への気持ちは、噛み殺してしまわなければ。
あのことで、きっと俺を嫌っただろう。それでいい。
この感情が押さえきれなくなる前に、もう手が届かないくらいに離れてしまえばいい……――
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