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契り 22
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《perspective:結月》
亜矢に伝えたことはすべて本心だった。
俺に向ける純真無垢な瞳や、キスのときに毎回恥じらう様を見ていると、おそらく女性とのそういった経験は多くない、いや、ひょっとすると一度も無いのではないか、と思う。
そんな状態で、相手が男、となると、警戒するのも当然だ。
亜矢が俺を受け入れてくれるまで、いくらでも待とうと思っていた。
だが、先刻の亜矢の様子を見て、これは単純なことではないかもしれない、と直感した。
ごめんなさい、と、そう繰り返す亜矢の声は、あまりにも弱く、小さかった。何を謝っているのか、何故、こんなにも自分を責めているのか。解らない何かに、怯えているようにしか見えなかった。
そういえば、思い当たる節がいくつもある。
亜矢の笑顔が、時々作り笑いの様に見えるのは気のせいだろうか。
最近俺から距離を置いてると、そう思うのは勘違いか?
触れるたびに、訴えるような眼差しを向けていると、そう思うのはただの考えすぎだろうか?
昨夜は結局、そのことのせいで、あまりよく眠れなかった。
朝食時、ダイニングテーブルの向かいに座る亜矢の様子を、俺はじっと観察した。
視線に気づいた亜矢は、「どうしたんですか?」と訊いたあとで、やや眉をひそめた。
「あっ、このかぼちゃのポタージュ、お口に合いませんでしたか?」
「いや、美味しいよ。いつもありがとう」
「ふふ、良かった」
頬を緩ませこちらを見る瞳も、穏やかな声も、いつもと変わらない。そのことに少しだけ安堵する。
「亜矢、今日学校早めに終わるんだろ? どこか行こうか」
「え!ほんと?」
「ああ。最近仕事ばかりで、どこにも連れて行けなかったしな。行きたいところ、考えておいて」
ぱっと花が咲いたように「嬉しい」と笑う亜矢を見てつられて笑みが溢れる。
――この笑顔を、亜矢を、ずっと大切にしたい。
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