アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
偽り 03
-
宮白は机の上に背中を預け、男からの口づけを受けていた。
男は、俺に背を向けているせいか、それとも宮白を目の前にして極度の興奮状態に陥っているからなのか、
人が部屋に入ってきたことに気付いていない。
「どけ。宮白に用がある」
覆いかぶさっている男を強引に引き剥がし、宮白の腕を引いて、会議室を出た。近くの空き教室に入るまでの間、宮白は何も言わず、大人しくついてきた。
「一体、俺に何の用ですか?」
扉を閉めるなり、煩わしそうに宮白が言った。振り向いた瞬間、宮白と視線が合った。
澄んだ薄茶の瞳に見つめられる。
それにハッとして、今更自分のとった行動に気が付いた。
「あ、いや……」
何で、あんなことをした?
混乱する頭をフル回転させて、次の言葉を考えていたその時、首に細い腕が回されたかと思うと、レモンのような甘い匂いがふわりと薫った。すぐ目の前に、長い睫毛を伏せた宮白の顔があった。
「っ……何……!」
勢いよく顔を背けて体を離す。
「何って……俺を抱く為に連れて来たんでしょ?」
宮白は真顔で俺を見つめてそう言った。
――こいつ。
「お前……っ!いい加減にしろよっ!!」
俺は思わず、宮白の肩を掴んで怒鳴っていた。
「お前は、あれか……?俺がソレをする為に連れて来たのだとしたら、大人しく従うのか……?」
「ええ。……そんな事よりも、痛いんですけれど。放してくれませんか」
宮白は俺を軽く睨んで淡々と言った。
先刻からの苛立ちは、きっとこいつのせいだ……。
「お前、自分の体を何だと思っているんだ!毎日色んな男に好きなようにされて、嫌じゃないのかよ!」
「……嫌ですよ。当たり前じゃないですか」
「だったら何故拒まない?……どうしてあいつ等を簡単に受け入れるんだよ」
宮白の、流されるまま諦めたような態度が、俺は気に食わないんだ。以前の自分を、見ているようで……。
「――貴方は、不思議な人ですね。俺にそんな事言う人に会ったの、初めてですよ」
その穏やかな声に、俺はするりと肩から手を離した。目の前の端正な顔には、何故か哀しげな微笑が浮かんでいる。
「何かの為に、我慢しなければいけないことって、あるんです」
初めて見る、宮白の人間味のある表情に俺は戸惑った。
一体何が、こんな顔をさせているのだろう……。
宮白の他人に向けられた空虚な眼差しは、何かを守るための偽りなのだと、俺はその時気付いてしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 106