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(…となると、今夜はァ~??久々にベッドの上で盛り上がっちゃうかな~??)
一頻り笑い終えた後で…宵宮は静かに両手で頬を思いっきり叩き、そのままデスクに沈没する。
(…って、そうじゃねェェェ!!あの課長のせいで、僕は合計8Pもの書類の直しを一からやらないと!!超特急でやんないと、千暁を待たせちゃうだろ!!)
宵宮は大慌てで恋人にメールを打ち返す。ごめん家に行くの遅れる、あまりに遅いようだったら寝ていい、という旨を速攻で画面を叩いて送る。
(でも、この8Pなんて大物資料、僕一人で立ち向かったところで絶対に日付が変わる頃にしか帰れない!!…誰かいい助っ人はいないか。僕より優秀で、変に勘繰って来ない奴とか作業中にも集中出来るように黙っていてくれる奴…。)
宵宮が素早く顔を左右に巡らせるが、そこは定時過ぎのオフィス。なかなか手頃な相手が見つからない。
(っく…。誰か、誰かいないか。もうこの際、性格は不問にしてやるから、ハイスペックな奴!!)
苦虫を噛み潰した顔で血眼になって助っ人を探す宵宮の視界に、とある一人の男が掠めた。
刈り上げた短い黒髪。百七十前半の高身長は優雅に黒いスーツを身に纏う。
(…あ、朝倉光。)
宵宮美月の天敵にして、営業の一匹狼。それとなく社内の女子に評判を伺うと、『顔はいいけど、ねぇ…。』とあんまりな評価を受けてばかりいる。
つけられた朝倉のあだ名は、“雪男”。契約先の大半は金の搾り取れるところから。温かな血が通っているとは到底思えない、コスト重視の働き方。ついでに、入社三年目で大物上司に食ってかかった極めて危険な側面が『怪物』として評価され、今のあだ名に落ち着いている。
…ちなみに、宵宮のあだ名は“ウサギ”だ。入社三か月目、堂々と新人女性社員にセクハラしていた部長をドロップキック一撃で床に沈めたのが由来だ。皆、そのエピソードを聞くと驚いたような顔をするのが、宵宮には解せない。下の者を上の立場の人間がイジメるなんてもってのほかだ。それに、そんな人間が偉い世界なんて間違いなくおかしいのだから、正義の攻撃をもって制さねばならないに決まっている。
…とまあ、こんな調子で朝倉にはいい評判というものがない。加えて、である。宵宮はある夜、朝倉にとんでもない暴言を吐かれた。大口の契約を逃し、電話口で泣きながら千暁に慰められていた、矢先。オフィスに入ってきたかと思うと、朝倉は弱っている同僚の頬を片手で鷲掴みにした挙句、一言。
『お前、めちゃくちゃ不細工な面だなァ!!』
嗚呼、今でも思い出すと手が勝手に拳になり意志とは無関係に力が入り、ガタガタと震えだす。
(…本当腹立つ!!普通、泣いている人にあんな台詞吐き捨てるか!?それに、何かあの一件以来…。)
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