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「…嫌うって、誰が??」
宵宮が顔を上げると、いつの間にかすぐそばに佇んでいた同僚がここまで走ってきたのか肩を大きく揺らしながら、返す。
「誓って言うけど、美月チャンにだけはその感情絶対持たないから。」
清々しいほど豪語して、朝倉はウサギの片頬をさらりと撫でる。
「…ごめん、美月チャン。水曜、オレ出張入っていてさ。すっかり忘れていた。遠方だから、水曜の夜は美月チャンの家に行けないや。今、課長にその直談判しに行ったんだけど、歯が立たなくってさ。挙句、今日のランチタイムも潰しちゃったんだよ。…本当、ごめん。」
長身を折りたたむようにして、両手を合わせ、謝る姿を見て、宵宮の黒曜石の如き双眸が、ゆらりと揺れた。
「美月チャンの作ってくれたお弁当は、今からきちんと食べ…っ。」
瞬間。獲物は朝倉の片腕を思いっきり引っ張って、雪崩れ込んできたその長身に縋るように抱き着いていた。
「みつ、きちゃ…??」
吃驚した表情で見上げてくる朝倉に対し、獲物はぽつぽつと本音を口にする。
「…明後日のことなんか、知らない。」
それより、と宵宮は男の身体をぎゅうぎゅうと抱きしめる。
「お前が今ここにいるだけで、僕は十分幸せだもん。」
唇を尖らせ、我ながら子供っぽく拗ねる獲物の顔に、朝倉が急接近してくる。どんどんどんどん近づいて…ついに、唇が合わさる。
「…。」
宵宮は獣からのキスを抵抗せずに受け入れた。彼の頭を抱えるようにして、より深く濃いキスにのめり込んでいく。
互いが会社の屋上にいるという事実を忘れる、その寸前。遠くから近隣の学校だろう。チャイムが聞こえ、二人はさっと距離をとる。
相手の顔を見るのが…面映ゆい。そんな温かいような、くすぐったいような雰囲気が二人の間に流れた。…矢先。
(ん??…なんか忘れているような。待てよ、チャイム??…やっば、昼休憩が終わる!!)
宵宮は慌てて、時計を見る。辛うじて、まだ安全圏だが、今すぐ屋上から出て行かないと、昼休憩が終わる頃、オフィスで仕事を再開するのに間に合わない。
「…悪ィ、朝倉!!また後で!!」
慌てて持参した物(朝倉分の御弁当以外)を掻き集め、宵宮は屋上を後にする。転げ落ちるように階段を駆け下り、幾分かよたよたしながらもオフィスを目指す。
屋上に一人取り残された朝倉は、そっと自らの下唇辿る。何度も唇の往復運動を楽しみながら、彼は呟く。
「“僕は十分幸せ”、かぁ…。本ッ当…、美月チャンってば最高だよ…。」
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