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鋭い指摘に、獲物は歯噛みする。
「…さっ、そろそろ行くよ。」
獣はニヤニヤしながら、片腕を引いて宵宮を立ち上がらせる。獲物の細い腰に腕を回し、至近距離になった矢先、相手の耳元で朝倉はそっと囁く。
「…大丈夫。オレ、夜方面の期待にはきちんと応えてあげられる男だから。」
「~…っ!!」
はくはくと口の開閉を繰り返す、茹蛸のように耳まで真っ赤になった宵宮だった。
会社最寄りの駅のホーム。いつもはすぐに来た電車に飛び乗るのに、朝倉は何を考えてか、一便遅らせた。…代わりに、ホームのフェンス沿いに二人並んでこうして次の便を待っている。便と便の間だからか。人影は疎らで、落ち着いている。
「…ってか、次の電車待つ意味ある??さっきの電車で、とっとと帰ればよかったのに。」
“すぐ帰らないと一緒にいられる貴重な時間が短くなる”と言いかけて、宵宮はすんでのところで言葉を飲み込む。知ってか知らずか、隣の獣は何やら楽し気に微笑む。
「ん~??だって、次の電車のがラッシュ時間に突入するからか、比較的混んでいて、オレの理想に近いんだよ。」
獣の答えを訊いて、獲物はますます渋い顔をする。
「何で僕らわざわざ満員電車に乗ろうとしてんの??」
「あと、もう一つ。次の電車はさっきの電車に乗り遅れた人達しか乗らないから、駅のホームで待つ人は少ない。つまり…。」
宵宮はぎょっとした。朝倉の大きくて分厚い手が、彼の腕をむぎゅっと握りしめていた。急いで解こうとするが、上下左右に激しく振ってもなかなか離れてくれない。
「ちょ…っ!!会社の人が見るかもしんないのに…っ」
「ちょっとくらい、ヘーキヘーキ。」
朝倉の悪戯っぽい笑みを向けられ、数秒考えた獲物は大人しく、抵抗するのをやめた。…代わりに、結んだ手を自ら率先して恋人繋ぎに変える。
驚いた顔で、こっちを見つめてくる獣に獲物はぶっきらぼうに繋いだ手を揺らして命じる。
「…顔。前向けよ。じゃないと、手ェ結んでいるって気づかれる。」
「…そうだな。」
すぐそばで、ふっと微笑む朝倉の表情が、柔らかすぎて、ドギマギしてしまう。手から伝わる熱や肌の感触、鼓膜を擽る吐息全てが、宵宮のペースを乱しにかかる。
「…美月チャン。」
最初聞いた時はバカにしてんのかと思ったあだ名が、今では耳に心地いい。
「…何。」
わざとぶっきらぼうに返す。多くを語ると、相手に寄せる激情が漏れてしまいそうで怖い。
「何、じゃないでしょ。何で俯いてんの??顔上げて。…どんな顔しているか、見ておきたい。」
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