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「も…、もしもし。」
あっという間に呼吸が乱れ、鼓動が弾む。まるで…彼の存在が宵宮の息の根を吹き返したみたいに。
『美月チャ~ン!!聞いてよ、買ってきた弁当がマジないんだよ~!!』
朝倉の悲鳴に、獲物はふふっと口元を緩めた。
『味しつこいし、色味パッとしないし、トドメにあんま美味しくないんだよね。あ~、いいなぁ~。今頃、そっちも弁当食ってんでしょ??オレのと交換して欲しいよ~。』
ははっ、と笑ってから宵宮は明るい調子で返す。
「へぇ~??…僕の料理が恋しい??」
『もちろん!!…オレが美月チャンの弁当残したこと、ある??』
「ないなぁ~。」
でしょ~??、と朝倉が笑い声混じりに答える。ああ、コレだよ、コレ!!と宵宮は清々した顔になる。
「すっかり僕の料理のトリコだね??」
得意げに言う宵宮に、相手は何度も肯定してみせた。
『そうだよ~??今じゃ、美月チャンの料理以外は受け付けない身体になっちゃったじゃん。…どう責任取ってくれるの??』
宵宮は数秒、“う~ん”と唸ってから、ポンと手を叩く。
「僕の料理レシピ、お前の携帯に送ってあ・げ・る♪」
『ちょっと美月チャ~ン??…悪戯しないでもらえる??』
少しして、二人は互いの笑い声を耳にする。底抜けに明るい、笑い声たち。
『…それにしても、やっぱ美月チャンいないと仕事もやる気でないし。さっさと片して帰るわ。即効で帰れば、定時内に間に合うかもしれないし。』
「あれ??、直帰して良いって話じゃなかったっけ??」
宵宮は携帯を握りなおしつつ、相手に問いかけた。すると、相手はすんなりと返す。
『直帰の許可はとってあるけど、会社に寄れば運がいいなら美月チャンに会えるじゃん。』
「…っ」
一瞬心揺さぶられたのを悟られまいと、宵宮はわざとイジワルを言う。
「僕の帰りに間に合っても、一緒には帰らないからな。」
くくっ、と相手の押し殺した笑い声が聞こえてきて、宵宮は拍子抜けする。
『別にそこまで期待してないよ。…ただ、たった一瞬でもいい。美月チャンを目にしておきたいだけだから。』
「…~っ」
もう限界だった。顔を赤く染めつつ、宵宮は言う。
「…はいはい、バカ言ってないで。残りの仕事、頑張ってね。じゃあ、切るよ??」
『うん。…あのさ。』
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