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諦めたように呟いて、ずっと腰を下ろしていたガードレールから立ち上がる。携帯を革鞄に戻した…その時だった。
「美月チャン!!」
見れば…数メートル右に肩を大きく上下させて、息を整えようとしている獣の姿があった。
「ごめん…っ。道が渋滞していて、めちゃくちゃ時間経った。待っていてくれたんだね??」
「あ、…ああ。」
驚きで、やや反応が遅れてしまった。気を取り直して、宵宮は手にしていたコーヒーの空き缶を同僚に見せてやる。
「いや。…ちょっと休憩してから帰るかな、って思って。コーヒー飲んでいたんだよ。」
缶を軽く左右に揺すって、小さく笑ってみせる。
「…じゃなきゃ、何で僕がお前を待つんだよ。」
刹那。隣から空き缶を掻っ攫われた。掠め取ったのはもちろん…朝倉だ。天を仰いだ彼は、口の部分まで缶を持っていくと、真っ逆さまにして飲もうとした。が、缶からは数滴しか垂れない。
「ふぅ~ん??…中身全然ないけど。これ持って何時間待っていたの??」
「何時間も待ってないし…。」
「“待っていた”ことは否定しないんだ??」
ね??、と確かめるように朝倉に肩を気安く抱かれ、ウサギは咄嗟に彼の胸板を軽く押しのけようとした。が、獣の方が一枚上手で、反発される瞬間、相手の腕を握りしめ二人が離れるタイミングで強く引っ張った。気づけば宵宮は、恋しかった男の腕の中にいた。
「…かわいい、美月チャン。」
「あ、あさくら…っ」
「本当にごめんね。待ちくたびれたよね??」
寂しがり屋のウサギは、相手に強く抱擁される。朝倉の熱にじんわりと溶かされていくかの如く、同僚はぽつりぽつりと本音を吐露しだす。
「…ぶっちゃけ、ずっとイライラしていた。お前、来るって言ったのにいつまで待っても来ないし。心変わりしたのかな、僕なんてどうでもよくなったのかなって。」
だけど、と宵宮は相手のがっしりとした肩の上に顎を置き、ふっと微笑む。
「…お前の姿見た瞬間、待ちくたびれていたことなんて秒ですっ飛んでいった。だって、僕はその…今日一日ずっと…。」
言いかけて、躊躇うウサギに朝倉は辛抱強く、どうしたの??と質問してくる。
「わ…、笑わない??」
恥ずかしそうに言う宵宮に、獣は大きく頷いてみせた。
「その…お前がいないの、僕ずっと寂しくって…会いたかった。」
「…くくっ!!」
その押し殺した笑いを、宵宮は決して聞き逃さなかった。
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