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答えのない問いにグルグルと頭を悩ませているウサギを見かねてか。朝倉は、相手の背を優しく摩りながら、声をかけてくる。
「帰ろう、美月チャン。」
「…うん。」
宵宮は、ただただ力なく頷く。
(朝倉は僕と…付き合いたい??)
あてのない問いに、戸惑いながら…。
「…そういや、美月チャン。弁当はどうしたの??やっぱ、自分の分だけ作った??」
「ああ、いや。うっかり二人分作っちゃって。もう一つは柴田にあげたんだ。」
「柴田め…。」
歯ぎしりをする獣に、宵宮は『明日の弁当は彼の好物たっぷりにしてあげよう』と思った。
…金曜日。屋上の定位置で、宵宮は一人、ぼんやりと虚空を眺めていた。
(僕と朝倉がそーゆー関係になって、二週間、かぁ…。)
頬を赤く染めつつ、宵宮は浅く俯く。
(あれからずっと朝倉に“レッスン”はつけてもらっているけど、セフレのラインは忠実に守ってくれている…。)
宵宮の左右には、二つの風呂敷がちょこんと鎮座している。一つは宵宮のもの。もう一つは…朝倉の分だ。
(ランチタイムに二人で喋るのは、思ったより楽しくて飽きない。“レッスン”だって、朝倉は絶対、僕に無理矢理何かさせようとはしないし…。身体の相性だって、悪くないみたいだし…。)
宵宮は膝の腕で重ねた手をもぞもぞさせる。宵宮はそっと目を伏せる。
(でも、こんなに朝も昼も一緒にいて嫌いにならないし、飽きもこない。)
宵宮は前髪を掻き上げつつ、はぁ…と溜息を漏らす。
(意外だけど、僕と宵宮の相性ってそんな悪くないんだ。…っていうか、悪くないどころか。)
宵宮は胸元を片手でぎゅっと鷲掴みにした。力み過ぎた拳がわなわなと大きく震えだす。
(僕の最近の記憶を振り返れば振り返るほど…。)
宵宮の記憶の中で、秘密の関係を結んだ相手が優しく微笑む。
『…語彙が貧困なのも、凄く可愛いな。』
『おやすみ、美月チャン。』
『オレも、オレに欲情している美月チャンを誰かに見せる気なんて、さらさらないから。』
耳まで真っ赤になった宵宮は、ぐっと目を瞑った。
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