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しっしっ、と片手をヒラヒラ振る宵宮に、連れは目を丸くする。
「え、違うの??」
「違うわ!!似たようなサイズの皿だって…。」
ぽん、と手を打ち、納得したのか朝倉は首肯を繰り返す。
「ペアルックの皿か!!わかった、探してくる。」
「人の話聞け、バカ!!」
ツッコミをいれながらも、後を必死で追いかけていく宵宮だった…。
道中わちゃわちゃしながら買ったのは、何の変哲もない白い皿二枚だった。言い争ったからか慣れない買い物をした所為か。二人とも疲れ、どちらともなく休憩を提案した。デパートのフードコートに着くなり、朝倉が『飲み物を買ってくる』と言って、相手の希望を訊いた後で駆け出して行った。白いプラスチック製の椅子に深めに腰かけて、宵宮はふぅと小さく息をつく。
(流石、朝倉。デキる男。…僕はあんな咄嗟に気配りできないわ。)
羨ましさ半分、頼りがいがある半分と思っていると、宵宮が座った席のすぐそばの通路を勢いよく走っていた、五歳前後くらいの男の子が転んだ。
宵宮が腰を浮かせた時にはすでに遅い。男の子は顔をぐしゃりと歪ませたかと思うと、口をいっぱいに開けて泣き出した。すかさず男の子の元にやって来たのは、母親らしき女性だ。
「いっくんったら、走っちゃダメだって言ったのに…。」
口ではそう窘めながらも、背を撫でる母親の手つきは柔らかい。宵宮はその様子を遠巻きに眺めながら、考える。
(…そういや、朝倉ってどんな子供だったんだろう。)
ふっと、思いつきから生まれた疑問だったが、一度考えてしまうとなかなか脳内から消せなくなってしまう。
(今と同じように達観気味だったのかな??…いや、でも小学校行く前から達観している子供ってどうだよ。)
悶々と考えていると、二人分の飲み物を持った朝倉がやって来て、連れに注文の品を渡す。
「…ほら、美月チャン。御所望のカフェオレ。」
「あ、ああ…。ありがとう。」
椅子から立ち上がり、飲み物を受け取って、カップに口をつけて飲んだ後で、宵宮は気づく。
(…そういえば、僕、朝倉についてほとんど知らないな。)
朝倉を眺めていると…視線に気づいた同期は、相手を見つめ返してくる。
「…美月チャン、いつ見てもかわいいね。」
軽口を叩く男の誕生日や血液型、恋愛遍歴も一切宵宮は知らないのだ。知っているのは、弁当作りの際に訊いた、好き嫌いがないことや唐揚げが好物なくらい。
「疲れたろ、座って休もうぜ。」
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