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「開口一番それ!?」
半眼になる宵宮に、そらそうでしょ、と旧友は淡々と返す。
「真面目に考えてもみろよ。学会でそんな論文が発表されたら、少しは騒ぎ立てられるもんでしょう。…信じる方がどうかしている。」
「あ、あの時は千暁にフラレたばっかで…藁にも縋る思いだったんだって!!」
「…でェ??縋った中身はどうだったわけ??」
うぐぐ、と宵宮は言葉に詰まってしまう。
ただまぁ、と大川は続ける。
「学生時代から男運最悪のお前が掴んだにしちゃ、“自称:藁”の中でもいい方なんじゃないか??他の男が一緒に居るだけで、ヤキモチ妬くなんてかわいいもんじゃないか。…今時、ドラマでも聞かないぞ。“昼も夜も…片時も離れず、そばにいたい”だなんてな。」
枝豆に手を伸ばす旧友に、宵宮は噛みつく。
「でも…僕への執着が並々ならぬというか。」
「まっ、話し合えよ。大事なのは、相手の気持ちへの理解だと思うぞ??秤にかけてやればいい。自分の理想を捨ててでも本物の宵宮と一緒に居たいバカか、自分の理想の宵宮を第一にとる愚か者かってな。」
宵宮は皿からねぎまの串をとりながら、ぽつりと呟く。
「…どっちも褒めてない。」
そらそうだろ、と旧友は枝豆の空を食べ終わった小皿の、同様に積み上げられた残骸の頂点に飾った。
「恋なんて誰も、褒められるためにしやしないんだよ。」
午後十時過ぎ。家に帰った宵宮は、風呂を済ませ、寝る準備を整えた後でベッドの端にちょこんと腰かけてから、携帯を手にする。
布団の表面を撫でていると、その風景と感触が誰かさんの温もりを思い起こさせた。
『寝なよ、美月チャン。今日も一生懸命仕事していたの、オレ、ちゃんと見ていたから。』
「~っ」
たったそれだけの声が、耳元で囁かれているのかと錯覚するほど生々しく頭に響き渡った。
宵宮は携帯の画面を見てから、一度大きく首を縦に振った。
「…うん!!」
何故か震える指先でダイヤルをコールする。
3コールほどで、朝倉は電話に出た。
「あ、もしもし、朝倉??…宵宮、だけど。」
『…美月チャン。』
朝倉のか細い声に、心が軋むように痛む。
「ご、ごめんな、こんな夜遅くに。」
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