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「オレと付き合わなくてもかまわない。けど、でもだったら、せめて…っ!!セフレの契約を解除しないで欲しい。」
言葉を吐き出す朝倉の唇が、無様なくらい戦慄いていた。瞳は急速に潤み、ただでさえ悪い顔色が更に色を失くしていく。
「美月チャンの恋人じゃなくて良い。美月チャンがそんなに嫌がるなら、何ならセフレだってやめる。…けどさ、それならか…ッ、会社は続けて欲しい。同期っていう繋がりまで、切られたらオレ、どうすればいいかわかんない。」
朝倉の呼吸が異常に浅い。目を大きく見開き、獲物へと縋るように許しを乞う目で見上げる男は、哀れそのものだった。
「美月チャン、どうか…どうかオレを捨てないで…っ。」
朝倉の頬につー…と一筋の涙が伝い落ちる。朝日を受けて、きらきらと光り輝く涙は、どんな宝石よりも純粋な美しさを宿していた。
「美月チャンに捨てられたらオレ、この先、どうやって生きていいかわかんないんだ…っ」
子供のように泣きじゃくる男の頭に、すっと宵宮の手が置かれた。そろ~り、そろ~りと宵宮は恐々とではあるが手をスライドさせ、同期の頭をなでなでする。
「い、今すぐ自己評価見直せよ、お前。…朝倉は、僕なんていなくたって問題ないだろ。性格だって、しっかりしている。会社からの、評価だって高いし、上司からの信頼も厚い。僕一人がお前の人生からいなくなったくらいで、何も変わらないよ。」
「生きていけないよ。」
ぴしゃりと朝倉は嗚咽の隙間から訴える。
「誰だって、好きな人に嫌われたら、これから先どう生きていいのかわかんなくなるだろ。オレだって、ここがッ、胸の奥がぎゅーって苦しくなるんだよ。」
引き続き朝倉の髪を撫でながら、好意を向けられた男はぽつりと問いかける。
「…そんなに僕が好き??」
こくこくと、朝倉は大きく頷いてみせる。
「…僕じゃなきゃ、他の人だったらどうしてもダメ??」
再び、朝倉は首肯を繰り返してみせた。
「わかった。」
宵宮はその場に屈みこんで、しゃくりあげる同期と目を合わせて、噛んで含めるように言って聞かせる。
「悪いけど、大前提として僕は今の仕事を辞めない。…朝倉もわかっていると思うけど、僕は僕なりにここまで頑張ってきたんだよ。天原が言う通り、他の人よりはるかに効率悪いのかもしんないけど。それでも、ここで辞めるわけにはいかない。」
「…うん。」
小さく鼻をすんと鳴らして、朝倉が答える。
「…で。ええっと…。」
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