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普通に喋れんだな
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暁美くんに告られて二週間。暁美くんのことについて少しだけ分かったことがある。
それは……
「部長、ミシンの下糸がうまく出せなくて。コツとかありますか?」
「下糸は、まずこっちに糸を出して、それを回してご覧。それで針を下ろすと……出てくる!」
「凄い…ありがとうございます。」
「また何かあったら呼んでねぇ!」
「はい」
暁美くんって
「普通に喋れんだな」
「えっ?」
「いやだって、俺が暁美くんに名前聞いたとき、凄いキョロキョロしたりして、なんて言うか、言っちゃえば口下手みたいな感じだったからさ。」
「そ、それはそのだって…先輩が話しかけてきたから……」
「……ふ、ふーん。」
それはつまり俺のこと好きだから緊張したとかそういうことなのか?
なんて…
ま、まあ他にも分かったことがある。
「でもそうですね…治せるように頑張りっいた!」
「ちょ、暁美くん大丈夫?部長、絆創膏ありますか?」
「あれ!凛音くんまた指に刺しちゃった?大丈夫?」
「はい…この位は全然。でも気をつけます。」
暁美くんは結構不器用ということも分かった。
字が綺麗だからって決めつけてたけど、これからは強い偏見を持たないよう気をつけよう。
暁美くんは既に左手に三つも絆創膏をつけている。
「先輩は……凄いですね。」
「ん?あぁ〜」
俺が今作っているのは、帽子やワイシャツ、ネクタイやメガネなどの柄の刺繍付きのハンカチ。父の日にプレゼントする予定のものだ。
「父の日にな。親父にあげるんだよ。」
「じ、じゃあ、母の日にも何か作ったんですか?」
「母さんにはポーチ作ったよ。化粧品がいっぱい入るやつが欲しかったって。」
「先輩は、もう親孝行が出来ていて凄いですね…うまく言えないけど……」
「はは、ありがとな」
……ちょっと嬉しいこと言うじゃん?
でも、親孝行がこんなもんで良いのか。
手芸は俺の趣味に過ぎないし、母の日や父の日に何か送るのも、別に特別なことではない。
あげるひともあげないひともいるだろう。
その中で俺はたまたま″あげるひと″だっただけだ。そう考えると別に凄くはない。
「俺、不器用だから手作り出来ないし、バイトしてないからお金もあまりなくて、いつもカーネーションとかそのくらいしか送れてなくて……」
「親は自分の子から気持ちのこもったもん貰えたら嬉しいだろ」
「でもやっぱり、俺手作りあげてみたいです。手芸部に入ったのも一部そんな理由ですし。」
「へぇ、他にも理由あるの?」
そういえば、なんで手芸部来たのかはまだ知らなかった。
「そ、それは…内緒、です。」
「あぁ、そう……?」
別に何回も聞くほど気になるわけじゃないけど…なんかもやってくる。まあいいか。
「てか、手作りあげたいって言ってたけど、それってお菓子とかもカウントされんの?」
「え、それは…」
「もし良かったら、うちにクッキーミックスあるから。簡単だし作ってみる?」
「せ、先輩の家ですか!?というか先輩お菓子作りもできるんですね……」
「あんま難しいものは作れないけどね」
「それでも凄いですよ…!」
「あ、ありがとう……」
少し顔が熱くなってきてしまった。でもそれは褒められて照れくさくだけで、別に意識はしていない。断じて。
「えーっと、じゃあ、試しに今週の休み作ってみるか?」
「ど、土曜日なら……!」
「おっけいー。じゃあ土曜の十三時くらいな」
「分かりました…!」
……良く考えたら、俺暁美くんのこと家に上げても大丈夫なのだろうか?
仮にも告白をされた身。襲われるなんて想像つかないけど、さすがに無神経だったか。
両親は土曜出勤もあるから、十九時までは帰ってこないし……
やばい。
「先輩…?顔赤いですけど大丈夫ですか?」
これは仕方がないんだ。
告られた相手だ。意識しないなんてことはない。さっきと言ってること逆になるけど仕方ない。
でも
それだけだ、絶対に。
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