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プロローグ
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初夏
気がつけば朝からセミの鳴き声が鳴り響くようになっていた。
毎朝、時計代わりにつけるニュース番組ではこの季節を迎える度に「今年一番」って言い続けている。
「…」
ブチっとテレビを消し、誰もいない部屋を出て玄関の鍵を閉める。
この意味もない生活に慣れたからか、それもと諦めたからか、夏が来るたびに暑さも孤独も感じないようになっていた。
「黄色い線の内側へお下がり下さい…まもなく…」
いつも同じ電車に乗り、遅刻ギリギリで学校に着く。
「今日の朝練キツすぎたな~!」
「この後の授業サボりてぇよ」
すれ違う生徒たちの声は常に雑音にしか聞こえないし、誰にも何にも興味が湧かない。
「さぁ授業始めるぞ~って、おい柊!お前今日もしょっぱなから寝てるんじゃねえ!」
教師の誰かに背中を叩かれるがこれもいつも通り。
授業中は基本寝て、昼も寝て、学校が終われば唯一、金のためにバイトへ向かう。
時刻は二十時。
「理人〜今日はもう上がっていいぞ〜」
家族は父親だけだが、単身赴任で基本どっか行ってるから実質一人暮らしみたいなもの。そんな事情を知っている店長はいつもまかないを作ってくれる。
「飯、食ってけよ~?ちゃんと食わねえとお前たおれるぞ」
ドンっと置かれた大盛りのカツカレーに食欲はないが残すのは気が引ける為、かきこむように食べて店長に礼だけ言って帰宅する。
「…」
玄関を開けて誰もいない部屋に入り、シャワーを浴びてあとは寝るだけ。
これが俺の味けない、いつもの日常。
何も感じないし、何も失わないでいられる。
あの日、生きる意味を失くした俺がたどり着いた日常だ。
このまま一生一人だと思っていた。
その覚悟もしていた。
なのに…
明日、俺はあいつと十年ぶりに再会することになるなんて、この時はまだ知らないでいたんだ。
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